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意識革命 [評論]



このブログでは、国力衰退を大きなテーマとして取り上げています。
とても分かり易い衰退データが出ましたので、その事について書きます。
「日本、名目GDPで、ドイツに抜かれ、世界4位になる」というニュースです。
日本の最高ランキングは、世界2位でした。
2010年に、中国に抜かれ、2023年にドイツに抜かれました。
中国は、2010年に日本を抜き、2位になりましたが、それから13年で日本の4倍以上の経済大国になりました。そして、2023年に、マイナス成長(-0.3%)のドイツに抜かれました。
ただ、この世界4位は途中経過に過ぎません。
2050年には7位に、2070年には12位になるという予測もあります。
この予測は、大変楽観的な予測で、この程度の凋落で終わるという保障はありません。今の状況に変化がなければという前提が付いています。
為替相場次第では、世界100位も、世界180位も夢ではありません。
名目GDP世界ランキングは、世界の国々の国内の数字を使うのではなく、比較するために同じ数字に変換します。そうです、ドル換算という数値変換工程がなければ世界比較ができません。
2023年に、4位に落ちた最大の要因は、円安です。
過去の数字を見てみます。
年      名目GDP     ドル円
1998年    4兆0983億ドル   130円
2006年    4兆6016億ドル   116円
2012年    6兆2723億ドル    79円
2023年    4兆2106億ドル   140円
ドルベースで日本の名目GDPを見た時、25年前の1998年の名目GDPと2023年の名目GDPの差は、1123億ドルしかありません。その差、2.6%です。また、1ドル79円の時代には、日本の名目GDPは6億ドルもあったのです。問題は、4位になったことではなく、経済成長していないことです。もしも、年率3%で経済成長していたら、2023年の名目GDPは、1998年の約2倍の8兆7745億ドルになっていました。その差4兆6762億ドル。累積では、約50兆ドル。円換算すると、7000兆円の遺失です。これが、国力衰退の数字です。
ドルベースで見ると、日本の衰退は、はっきりと見えます。
今は、鎖国施策を取っていた江戸時代とは違います。世界各国との経済的な結びつきを抜きに経済は語れません。ドルベースの経済力が、その国の経済力になります。
円安が進めば、世界ランキングなんて、簡単に変わります。
通貨は、国と国の金利差によって変動すると言われていますが、それは、間違いではありませんが、金利だけで為替相場が動くわけではありません。少し長い目で見れば、あらゆる要素が、為替相場の変動要因になります。総合的な、国としての経済力を反映するのが為替相場なのだと思います。
と言うことは、国力が衰退している国の通貨は、世界的に弱くなるのが自然です。
特に、日本は、世界一の借金を抱えています。その債務は、日本円で占められていますので暴落の危機は回避されていますが、世界から見れば、フェアではありません。通貨を発行している中央銀行が、日本国債の最大の購入者です。これが世界的に許されれば、どこの国もデフォルトする心配なく、借金で運営できます。日本は、明らかに「ズル」をしています。「日本は、けしからん」という意見が大勢を占めれば、評価は落ちます。世界的な評価が落ちるということは、日本円が安くなるということです。
それだけではありません。
日本の国民負担率は限界まで来ています。
増税が出来ないために、社会保険料が1本調子の右肩上がりになっています。
それは、増税よりも保険料の変更のほうが、抵抗が少ないからだと言われています。
でも、国民負担は、税と社会保険料で計算されます。
少子化対策のための保険料増額も、国民負担率の上昇に寄与します。
ただ、現役世代からの税と保険料の徴収は限界にきていると言われています。
そこで着目されているのが、資産です。最近、政治や経済の議論の中に、頻繁に「資産」という言葉が出て来ます。収入の多い人や資産を持っている人には応分の負担をしてもらわねばならない、という趣旨の発言が増えているのです。国も、個人資産の把握をしたいと思っています。
究極の方策は資産税ですが、資産税の新設の前に、相続税が更に変更されることになると思います。取れる所から取るのが税ですから、現役世代から取れないとなれば、相続税で取るのは自然だと思います。立憲民主党も、相続税を財源にしたいと思っているようですから、自民党でも立憲民主党でも、国民資産は食い尽くされることになります。
でも、国が国民の資産を奪うということは、国力を奪うということです。
日銀が国債の半分を買っていますが、残りの半分は国民資産が買っているのです。
国民資産は、金融機関を通じて、国債購入の源資となっています。その国民資産が減少するということは、国債購買力が減少するということです。
もしも、国民資産を全額没収してしまった場合、誰が国債を買うのでしょう。日銀が全額買うのでしょうか。財政ファイナンスをする中央銀行が発行する通貨(円)を世界は認めてくれるのでしょうか。無理です。
海外の資産に頼るしかありませんが、日本の国債を買ってくれる海外投資家はいるのでしょうか。ある程度は買ってくれますが、それは、あくまでも、投機が目的ですから、逃げ足は速くなります。ハゲタカファンドの動向で国家運営が左右される国は、国とは呼べません。
この国は、借金を前提にして運営されています。借金が出来なくなれば、国家運営ができません。それは、社会保障費が払えないことを意味します。年金制度も医療制度も崩壊します。障害者支援制度も生活困窮者を救っている生活保護制度も崩壊します。子供手当も給食補助も学資保険制度も崩壊します。数千万人の国民が路頭に迷うことになります。
国民負担を上げ続け、国民資産を食いつぶす行為は、崩壊への先送りでしかありません。
蛸には8本もの足があるのだから、6本喰っても大丈夫だというのは、2本足の人間の勝手な妄想に過ぎません。自分で自分の足を喰えば、自分が痛むだけです。今、私達の国は、その馬鹿馬鹿しい比喩を、実際にやろうとしているのです。

世界の金融の専門家が為替相場を動かしているのです。
不安定で、衰退し続け、先送りを続ける国の通貨が、認められるとは思えません。
1ドルが、1000円になっても、1万円になっても、取引さえ不可能な通貨になっても仕方ないと思います。
その前に、1ドル200円や300円で、国民生活は破綻します。
日本は数多くの物を輸入しています。
その代表例が、燃料と食糧です。
どちらも、生活には欠かせないものです。
今、100円で買っていた石油や天然ガスが、1ドル300円の時代になれば、200円出さないと買えません。当然、電気料金は倍になります。電力は、家庭用電力だけではなく、産業のインフラですから、あらゆる商品が値上げになります。これまで1カ月10万円で生活していた人は、20万円なければ生活できません。3食を2食や1食に抑えなければ生活は成り立ちません。電話料金なんて払えません。外食なんて、とんでもない贅沢になります。それは、物が売れなくなるということです。物が売れなくなれば、倒産する企業が続出します。それは、失業者が増えるということです。収入のない失業者は、食料を確保することすら困難になります。1ドル300円は、大変危険です。
数年前に、1ドル150円の時代が来ると予測した人はいません。
今、1ドルが300円になると予測する人がいないのと同じです。
ましてや、1ドルが500円や1000円になると予測する人は、1人もいないと思います。
ほんとに、大丈夫なのですか。
円安になるということは、物価が上昇するということです。
3%の物価上昇で、国民はアップアップです。数十パーセントや数百パーセントの物価上昇は、飢餓を意味します。
金利差で変動している間は、まだ、それほど大きな円安は起きません。しかし、日本の国力衰退を、世界が認識する日がやってくれば、異次元の円安になる可能性があります。

あれも駄目、これも駄目、どうしようもない、では済みません。
この先にあるのは、国民の皆さんの生活破綻です。
「しゃーない」では済みません。
原因を見つけ、対策を作り、実行するしかないと思います。
政府の経済政策が間違っていると指摘する方もいます。経済界が、内部留保ばかりで未来への投資を怠っているという指摘もあります。世界的な外部環境がコロナや戦争で不安定だと言う方もいます。生産性が低い。デジタル化で後れをとった。政治が腐敗している。少子高齢化が進んでいる。多分、数え上げたら、原因はいくらでも出てくると思います。
だからと言って、国力が衰退し、国が破綻してもいい、ということにはなりません。
真剣に、本気で、どうすれば国民生活を守れるのか、を考えなければならないと思います。
このことは、多くの、いや、ほとんどの国民が感じていることだと思います。将来に「不安」はない、と言う国民は、ほぼ、いないと思います。
でも、誰一人、立ち上がる方がいません。
それは、誰も、その方策を持っていないからです。
そういう状態にある「なあ、なあ、まあ、まあ」社会では、ほぼ全員の暗黙の了解で「先送り」をします。いや、「先送り」をしてきた結果が、今の国力衰退なのです。そして、今でも、これからも、自分達の選択肢は「先送り」しかないと思っています。
ほんとに、救いがありません。
皆で赤信号を渡れば、危険は回避できるのでしょうか。
そんなことにはなりません。
自分の生活は自分で、自分達の生活は自分達で、自分の国の国民生活は自分達国民が守るしかありません。「先送り」では何も解決しません。
先程、「原因を見つけ、対策を作り、実行するしかない」と書きましたが、原因が多すぎます。個々の原因に対処していたのでは、国力衰退は止まりません。だったら、数多くある原因に、共通しているものはないのでしょうか。あります。それが、人間の意識です。社会も経済も政治も、人間の意識で動いています。「先送り」も「俺には関係ねぇ」も「自分さえよければ」も、皆さんの意識が決めているのです。
個々の原因に対処療法で対峙しても、原因が多すぎるために、全体は変わりません。
全ての国民の皆さんの意識に働きかけるしか方法はないと思います。
貧しくなりたいと望む人はいません。飢餓社会を喜ぶ人もいません。国民の皆さん全員が、幸せな人生を求めていると思います。
ただ、厄介なことに、皆さんの幸せな人生は、勝手に転がり込んでくるようなものではありません。自分の手で勝ち取るしかないのです。では、自分の生活だけを考えればいいのかと言うと、そうではありません。自分が破綻しても国全体が破綻することはありませんが、国が破綻すれば、個人の生活は例外なく破綻します。それは、皆さんが自分の生活だけではなく、国そのものを豊かにしなければ、自分の生活は守れない、ということです。山奥で一人隠遁生活をしている仙人であれば、自分のことだけを考えれば済みますが、集団生活をする私達は、自分だけではなく、集団を守らなければ生活が成り立ちません。集団には、いろいろな方が、いろいろな立場にいます。総理大臣もいれば、町工場で働く人もいます。それぞれの立場の人が、それぞれの立場に課された責務を果たす必要があります。
今は、その責務が曖昧なために、誰も守ろうとしません。いや、そんなものがあることを知りませんので、責務が頭をよぎることもありません。
例えば、総理大臣の責務は、国を豊かにし、国民生活を守るための方策を実行することです。「総理大臣を続けたい」とか「政権を維持したい」とか「カネが欲しい」とかは、総理大臣の責務ではありません。
今は、誰の責務も曖昧ですから、誰が何をしたって構いません。
これで、どうやって、国力衰退を止めるのですか。
言葉の定義をし、責務を明確にし、目的を持つことで、国民の皆さんの意識を変えなければ、このまま、ずるずると、国力は衰退し、行き着く先は国家破綻です。破綻国家には、国民の皆さんの豊かな生活はありません。あるのは、飢餓です。


2024-03-04



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