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何のための市場調査 [評論]



このブログでは、度々、アンケートや各種調査のニュースを取り上げています。
私は悲観論者です。その悲観論者が度々取り上げているということは、それだけ、悲観的なアンケートと結果が多いということだと思います。
「10年後、あなたの年収は、どのくらい増えていると思いますか」
「次の海外旅行は、どこへ行きたいですか」
「次に買いたいものは、何ですか」
というアンケートであれば、私は取り上げなかったと思います。
いわゆる市場調査という統計手法は、傾向を把握するものであり、実態と完璧に一致するものではありません。それでも、傾向であっても、現実と真逆の結果が出てくる訳ではありません。現実に近い結果が得られるから、アンケートや調査が行われるのです。

例えば、「老後の金銭面は、安心できそうですか? 不安ですか?」というアンケートがあります。最近、この手の調査が増えてきたという印象があります。30年前には、こんな市場調査は行われませんでした。ここにも、国力衰退の現実があります。
多分、質問する人も、質問される人も、この国が「ヤバイ」ことを知っているものと思います。その上で、皆で、他人事のように質問して、他人事のように回答している。見て見ぬふりをすることが大人の対応だと思っているのです。「ドツボ」に嵌るのは自分なのに、実に、奥ゆかしい人達ばかりです。いや、馬鹿丸出しに見えてしまいます。
結果は、安心が14%、不安が62%、わからないが24%だったそうです。
不安だと回答している62%の皆さんは、どうして、不安のままで大人しくしているのでしょう。
「どうしろ、と言うのだ」「どうしようもないだろう」と言われるかもしれません。
そうなんでしょうか。
何もしなくて、いいのでしょうか。
62%の人達が我慢すれば、済むことなんでしょうか。
特に若者の不安が多かったそうです。20代30代の若者が、70代80代の老後のことを想像するのは不可能だと思います。私が20代30代の頃に、70代80代の自分が想像できていたかと言えば、全く出来ていなかったと思います。多分、今の若者でも、それは同じだと思います。ただ、社会に漂う空気は、決して楽観できるものではありませんので、「安心」とは答えられなかったものと思います。誰も騒ぎませんが、誰もが「ヤバイ」ことを知っています。どうして、「俺には関係ねぇ」で済ましてしまうのか、ほんとに、不思議です。
ただ、「安心」と答えた人が14%しかいないという現実は悲惨です。仮に、統計上の誤差があったとしても、1割が9割になることはありません。
私には「貧困へまっしぐら」の国に見えますが、違うのでしょうか。
それとも、「まあ、まあ、何とかなるさ」と思っているのでしょうか。
国民の皆さんも、本音では、そう思っていないと思います。
「お先真っ暗」だと思っている人が62%、「先は見えていない」と思っている人が24%、「前途洋々、薔薇色」だと思っている人が14%だとすると、この国は、「お先真っ暗」な国だと言ってもいいと思います。
国民の皆さんは、この世相をどう捉えているのでしょう。
私には、国が壊れているように見えます。
「まさか」「大袈裟だ」と言う方もいると思います。
そんな方でさえ、心の中で「何となく不安だ」という意識があるはずです。多くの国民が不安を感じているから、アンケートにも結果として反映しているのだと思います。皆さんの漠然とした不安は、正しい判断をしているのです。間違いなく、近い将来、「あちゃー」という日を迎えます。

別の調査結果を見てみましょう。
NHK放送文化研究所の「国民生活時間調査2020」によるメディア調査の結果です。
毎日、必ず、テレビを見る人は79%だそうです。
この数字を多いと見るか少ないと見るかは意見が分かれると思いますが、5年前の調査では85%だったそうです。2005年までは、ずっと90%台でした。
年代別では。
      2020年 2015年
10代前半   56%    78%
10代後半   47     71
20代     51     69
30代     63     75
40代     68     81
50代     83     90
60代     94     ---
70代     95     ---

この数字を見ると、時代が変わっていることが如実に示されていると思います。
昭和の空気に支配されているのは、私達老人だけなのかもしれません。
もちろん、老人の私から見れば、今の時代が正しいとは思いません。電車に100人の乗客がいるとして、95人はスマホを見ています。本を読んでいる人が1人、寝ている人が4人という景色が当たり前になりました。これも、やはり、変だと思います。
でも、これが現実です。
新聞購読者も減少していますが、新聞とテレビというメディアに縛り付けられているのは、50代以上の老人と老人予備軍のようです。
新聞社やテレビ局のお得意様の老人は、近々、確実に死にます。これは、新聞を読む人、テレビを観る人が、今よりも更に減るということです。
これでは、将来の展望は暗いものしかありません。
これは、明らかにテレビ局の収入が減少するということを表しています。
花形産業だったテレビ業界にも、希望退職の潮流は流れ込んでいます。
テレビ視聴者の減少は、トレンドなのですから、この先、加速することはあっても元に戻ることはありません。
民放5局の2020年度決算は。
フジテレビ、広告収入は14%減、売上高は15%減
テレビ朝日、広告収入は12%減、売上高も12%減
TBS、   広告収入は11%減、売上高が10%減
テレビ東京、広告収入が11%減、売上高は7%減
日本テレビ、広告収入が08%減、売上高は7%減
だそうです。
民放は広告収入で成り立っています。
お先真っ暗です。
新聞離れやテレビ離れだけが問題ではありません。
もっと大きなトレンドは、国力の衰退トレンドです。
国力衰退は、必ず、経済の縮小につながります。
国力衰退による経済縮小は、新聞社やテレビ局だけが影響を受けるわけではありません。あらゆる民間企業が影響を受けるのです。
私達は、時代の変化を承知しておく必要があるということだと思います。

もう1つ数字を見てみます。
世界大学ランキングという調査があります。
               上位50位内    勝手ですが
       最高順位     大学数      ランキング
イギリス      1        6         A
アメリカ      2        24         A
スイス      14        2         B
カナダ      18        3         B
中国       20        2         C
シンガポール   25        2         C
オーストラリア  31        1         D
ドイツ      32        3         C
日本       36        1         D
スウェーデン   36        1         D

教育は国力の基盤だと言われています。
日本は、東京大学が1校だけ、36位にあります。経済大国、技術大国と呼ぶには少し違和感があります。教育分野でも、小手先の手直しではなく、根本からの立て直しが必要なのではないかと思います。

いつの世でも、社会は変化するものです。未来永劫、変化しない社会なんてものは存在しません。そんなことは、誰でも知っています。ただ、その変化が、どのような変化なのかは認識されにくいものです。
久しぶりに会った親戚のおばちゃんが「あら、〇〇ちゃん、大きくなったわね」と言う場面は多くの方が体験していると思います。自分の子供は、毎日見ていますので、その変化を強く意識することがありません。子供が反抗期を迎えた時に、「あれっ」と思うくらいです。日常的に見ているものの変化は見え難いという特徴があります。
でも、変化はしているのです。
ただ、変化にもいろいろあります。
子供がすくすくと成長してくれるのはいいことですが、国がずるずると衰えていくのは歓迎できません。
柱に子供の背丈を記録していくと、成長が視認できます。
同じように、国の衰退も数値化すると見えてきます。
アンケートや調査で、結果が数値化されるのは、そのためです。
では、数値があれば、それでお終いなのかというと、そうではありません。
数値を、その現実を、認識し、それが悪しき数値であれば、原因究明をし、対策を立てなければ、数値には何の意味もありません。数値を見て「ふむ、ふむ」と頷いていたのでは、数値にする意味がないのです。
今は、色々な調査が行われていますが、「調査ごっこ」をして遊んでいるように見えます。
必要なのは、現状認識と原因究明と対策立案なのですが、私達の国では、この当たり前のことが行われていません。
「下々」は、「お上」の仕事だと思っています。
「お上」は、「下々」が黙っているのだから、何もしなくてもいいと思っています。
だから、ずるずると衰退しているのです。
これは、国と国民の責務が曖昧なために起きている現象です。責務が明確になっていれば、現状認識と原因究明と対策立案は行われていた可能性が高いと思います。
しかし、現在は、目的も責務も明確にはなっていません。
あらゆることが、「なあ、なあ」「まあ、まあ」で通り過ぎていくだけです。
現状認識と原因究明と対策立案という当たり前のことが行われるためには、言葉の定義と目的と責務が必要だということです。
このこと自体、当たり前のことだと思いますが、そのことを指摘する方がいません。
とても、不思議だと思っています。
私の目には、この国が壊れているようにしか見えません。
もう、「国力衰退」は基礎疾患と言っても過言ではありません。
それなのに、この国の基礎疾患については誰も議論していません。
枝葉のことを重箱の隅で議論することは好きですが、根っ子の部分は素通りします。モリ・カケ・サクラなんて些細なことです。コロナやオリンピックだって些細なことだと思います。私達が本気で議論しなければならないのは「国力衰退」だと思います。多くの数値が「国力衰退」を教えてくれています。それなのに、「国力衰退」と向き合おうとはしません。
貧困に苦しむ人達が、日々、年々、増加しています。
ところが、貧困層の方も、そうではない方も、見て見ぬふりです。
全く、理に適っていません。
「これ、なんかの、呪いなのか」とさえ思ってしまいます。
どう贔屓目に見ても、この国の「国力衰退」は明らかです。
でも、誰も、何も、しようとはしません。
やっていることは、枝葉の対応ばかりです。
葉っぱの一部が腐っている。
だから、腐っている部分を隠そう。
腐っている部分を切除しよう。
栄養分を注射しよう。
でも、痛んでいるのは葉っぱだけではありません。
葉っぱが痛んでいるのは木が痛んでいるからです。木が痛んでいるのは森が痛んでいるからです。森が痛んでいるのは土が痛んでいるからです。
つまり、土台となる土が痛んでいるのです。
どうして、土を見ようとしないのでしょう。
異常だと思います。「呪いだ」と言われても納得してしまいそうです。


2022-04-06



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