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大規模軍事演習 [評論]



8月2日、アメリカのナンシー・ペロシ下院議長が台湾を訪問しました。
ペロシ氏は、4月に訪問予定でしたが、コロナに感染し、4月は中止されました。
その後、米中間でペロシ問題は、火種になっていて、7月には、中国の恫喝外交が軍事対応を含む内容にまでエスカレートしました。
公的なものではありませんが、ペロシ機を撃墜せよ、という発言すら出て来ました。
中国が得意とする、脅しと威嚇行為を駆使した宣伝戦です。この脅しと威嚇行為を駆使した宣伝戦は、大変危険なものです。それは、宣伝の積りが宣伝で終わるという保障がないからです。相手を騙すだけではなく、自分をも騙す結果になることがあります。
現在の台湾問題は、「台湾は中国の一部である」という中国共産党の主張を、助平根性で認めたアメリカにあると思います。当時、世界の超大国であったアメリカは、経済的な利益を得るために、中国を傘下に収めようとしたのです。どんな国でも、どんな時でも、「欲」が最優先ですから、仕方ありません。
しかし、統治体制の違う中国は、独自の考えで、国力の増強に邁進しました。アメリカに取り込まれるなんてことは、当初から考えていなかったと思います。それは、彼等が持つ中国四千年の歴史観によるものだと思います。
そして、経済的にも軍事的にも、アメリカに対抗できるだけの国になりました。その手法には批判もありますが、合法でも非合法でも、彼等が頑張って手にしたものです。
中国が居丈高になるのは仕方ありません。
国家運営に理想的なモデルはないのかもしれません。
国家は永続しなければなりません。それが、国家運営の至上命題です。
しかし、1年、10年、100年、千年、1万年という期間を考えると、共通した答はありません。「栄枯盛衰は世の常」と言われるのは、そのためだと思います。
ドイツの有為転変が、国家運営の難しさを示しています。
冷戦終結後、幾多の試練を乗り越えて、ドイツは、ロシアと中国に接近することで利益を得て、ヨーロッパのリーダーにまでなりました。10年単位の国家運営では大成功です。しかし、今、エネルギー問題でドイツは苦境に立っています。中国への依存も増加しています。この先、ドイツがどんな環境に置かれるのかは見通せません。もしかすると、100年単位で総括すると失敗したことになるかもしれません。
ドイツだけではありません。多くの国が、これまでの国家運営方式では成り立たない時代を迎えているのだと思います。
世界秩序を決めるのは「欲」です。
「欲」の大きさと強さが、世界秩序を決め、弱者はそれに従わねばなりません。
ただし、「両雄並び立たず」と言われるように、世界を支配するのは、特定の民族の「欲」になります。それが、中華民族なのか、アングロサクソンなのかはわかりません。少なくとも、日本民族ではないことは確かです。
中華民族の「欲」も、アングロサクソンの「欲」も、半端ではありません。それに比べると、日本民族の「欲」は、夢見る少女の「願い」くらいのものだと思います。
「欲」と「欲」の対決が、ペロシ台湾訪問を契機にして、軍事対応にまでエスカレートしたのが、中国人民軍による、台湾周辺での大規模軍事演習という名の恫喝です。
台湾の全方位を制圧する形での軍事演習は、もう、普通の軍事演習ではありません。
4日間の演習ですが、事実上の台湾封鎖であり、あからさまな、軍事恫喝です。
習近平は、まだ本気でアメリカと戦争をするつもりはないと思いますが、中国人民軍は、アメリカと戦いたいと思っていると言われています。習近平が、どこまで人民軍を掌握できているのか不明ですが、習近平としても、軍を軽く扱うわけにはいきません。軍が反抗すれば、習近平の権力は即座に消滅します。実力組織の力は、特に、中国の歴史の中では、巨大です。それは、人民軍主導でアメリカとの戦争が始まる危険があるということです。
今回の軍事演習で、人民軍が演習区域として発表した6ヶ所の領域には、台湾の領空・領海を含む領域が3カ所あります。明らかに、領空・領海侵犯をする意図があります。仮に、アメリカの領空・領海の中で、人民軍が軍事演習をすれば、即座に開戦になります。
それだけではなく、沖縄を含む東シナ海全域が、演習領域だと発言している人民軍関係者もいます。既に、日本は巻き込まれています。
中国人民軍のミサイルは、台湾の上空を越えたものもあり、日本のEEZ内に着弾したミサイルもあります。明らかに、日本は攻撃の標的です。
今回の人民軍の演習は、脅しの範囲を越えています。彼等は、本気です。多分、習近平にも止められなかったものと思います。
もちろん、ペロシの訪台が米中戦争の開戦にはなりませんが、開戦に一歩近づいたことは否定できません。
アメリカ軍もペロシを守るために、それなりの態勢は取りましたが、その態勢を見た人民軍は、アメリカに勝てると思ったのではないでしょうか。
ここで、人民軍が後退することは考え難いと思います。
中国の場合、政府と軍と人民は独自の存在だと思うほうが正しいと思います。
軍人は、どの国の軍人も、プライドを大事にします。
今回の軍事演習は、人民軍のターニングポイントになるような気がします。
ここで、尻尾を巻くわけにはいかない所まで事態を進めてしまった人民軍に「撤退」の言葉はないと思います。過去3回の台湾海峡危機では、アメリカ軍に押されて、3度も「撤退」しました。プライドの高い彼等は、地団太を踏んだと思います。25年もの歳月をかけて実力をつけた人民軍の軍人にとって、「撤退」は「屈辱」でしかありません。そんなこと、軍人としてのプライドが許しません。たとえ、習近平が皇帝と呼ばれるようになっても、軍人のプライドをなくすことは出来ないと思います。
中国人民軍が強気になっている原因は、プライドだけではありません。
バイデン政権の、弱腰、日和見外交があるからです。
バイデンは、「軍は、ペロシ訪台を歓迎していない」と言って、ペロシを止めようとしました。民主党は政権党ですが、大統領府と議会は一枚岩ではありません。「できるだけ、穏便に」というバイデン政権の色が、ペロシ訪台の対応でも出てしまいました。
アメリカは、国民が分断されているだけではなく、政権と議会も分断されています。
もう、古き良き時代のアメリカではありません。
中国人民軍が、強気になるのも頷けます。
平時であれば、この弱腰、日和見外交は、柔軟な外交として意味があると思いますが、非常時では通用しません。まだ開戦されていませんので、戦時ではありませんが、非常時であるという認識をバイデン政権は持っていないのかもしれません。「まあ、まあ」という日本の対応と似ているように見えてしまいます。
香港への対応でも、アフガニスタン撤退の対応でも、ウクライナ戦争の対応でも、アメリカの弱腰は世界が見ています。プーチンの核の恫喝に、アメリカは手も足も出せませんでした。限定的な武器援助でお茶を濁しただけです。
ロシアがウクライナに軍事侵攻したのは、アフガニスタンのアメリカを見た結果であり、中国の台湾周辺軍事演習は、ウクライナ侵攻を見た結果です。北朝鮮も、好きなだけミサイル発射実験をしました。イランも、核開発で強気になっています。これらは、アメリカの弱体化が招いた自然現象です。サル山でも、年老いたボス猿に挑む若猿は出て来ます。
アメリカも、アメリカが弱体化していることは承知しています。ですから、同盟国に「何とかしろ」と言っています。しかし、同盟国は、まだまだ、アメリカを頼りにしています。他人の褌で相撲を取る癖が抜けません。それは、欧州各国も、日本も、韓国も、それ以外の同盟国も同じです。アメリカが、アメリカ本土だけを守り、それ以外の地域の紛争に対しては「俺には関係ねぇ」と本気で言ったら、同盟国はどうするのでしょう。例えば、日本は、自国を守ることが出来ますか。現実から逃げるだけの日本は、自分で自分の国を守る力を持っていません。「平和憲法を守れ」と言う人ばかりです。時代が大きく変わろうとしているのに、全く、その認識を持てていません。ここでも、「なあ、なあ」「まあ、まあ」が価値基準になっているのです。
中国やロシアや北朝鮮を「ならず者国家」だと非難してみても、屁のツッパリにもなりません。「ならず者国家」は、現に、存在しているのです。
日本政府が、得意の「遺憾砲」を何発撃っても、何も変わりません。
国民が「戦争反対、平和、平和」というデモをしたって、何も変わりません。
全ての国民に、国と国民生活を守る責務があることを、国民は誰一人知りません。

中国をここまで大きなモンスターにしてしまったのは、助平根性しかないアメリカであり、日本であり、欧州各国です。もう、中国を、モンスターを、制御することは出来ません。小国になったロシアの軍事侵攻でさえ、制御できていません。
先進国と言われる国々に、核戦争を覚悟して、第三次世界大戦を戦う覚悟はあるのでしょうか。そんなことが出来ないことは、ウクライナ戦争で証明されました。
アメリカの時代は終わりました。
もう、時代の潮流は、中国によって作られる時代になったのです。
今回の大規模軍事演習は、中国のやりたい放題です。
世界は、自由主義陣営は何をしたのでしょう。
遠くから「遺憾砲」を撃つだけです。
台湾の皆さんは、艱難辛苦に耐え、最後の一人まで、中国と戦うのでしょうか。
そんなことは、しないと思います。
力による限定的な台湾封鎖も実行されました。経済制裁も始まりました。様々な裏工作は続けられています。台湾の皆さんは、口には出さないかもしれませんが、内心では「ヤバイ」ことを理解したと思います。今回は、4日間の台湾封鎖でしたが、次は、10日になり、1カ月になります。中国の得意なサラミ戦術が始まったと理解したと思います。
台湾のエネルギー備蓄は20日分だと言われています。
海と空を封鎖されたら、国民生活は、簡単に破綻するのです。
過去3回の台湾危機は、アメリカが阻止しました。しかし、アメリカは、今回の軍事演習を止めませんでした。それは、止めるだけの力がなかったからです。では、次の軍事演習は止めるのですか。いいえ、今回と同じで、何もしないと思います。
自由や民主主義は大事です。でも、命のほうが、もっと大事です。
中国の度重なる軍事恫喝は、台湾人の恐怖心を呼び醒まします。理屈よりも、恐怖心という本能のほうが、はるかに強大です。
近い将来、台湾で政権交代が起きるのは必然だと思います。
アメリカも日本も、台湾を守ることはできません。
今回の大規模軍事演習を止められなかったということは、台湾併合実現への第一歩が動き始めたということです。この動きは、止まりません。いや、アメリカにも日本にも、いやいや、中国でさえ、止められません。
自由民主主義陣営は、自分の利益のために、香港を見捨て、アフガニスタンを見捨て、ウクライナを見捨て、今、台湾を見捨てようとしています。
次は、日本を見捨て、東欧諸国を見捨て、中東が見捨てられます。どの国も、自国を守ることしか考えなくなります。
世界覇権は、もう、中国のものです。
何年か前に、「中国領日本自治区」という言葉を使いました。読まれた方は、いつものヨタ話だと思っていたと想像します。でも、輪郭が見えてきたと思いませんか。この先は、もっと、明確に見えてくると思います。
今回の大規模軍事演習は、大きな転換点になりました。
日本の場合、中国に征服される日が早いのか、国力衰退による自滅が早いのかは、まだわかりません。ただ、どちらにしても、国民生活は破綻します。
多分、この先、数百年は、忍従の日々が続くものと思います。
ま、私達は、2000年間、「じっと、我慢する」生活を続けてきたのですから、我慢には慣れています。それしか救いがないのは、悲しいことですが、潮流には勝てません。

では、中国に死角はないのでしょうか。
いいえ、どんな国にも死角はあります。
いつの時代でも、内乱は中国の日常であり、死角です。
習近平と人民軍と人民は一枚岩になれません。日本民族とは違い、中華民族は、人民だからという理由で「欲」を捨てたりしません。ですから、中国では、必要以上の弾圧が不可欠です。そして、弾圧は、新たな反抗を生み出します。人間の「欲」を制御することは誰にも出来ないのです。強権を持つ中国共産党でも無理です。中国での内乱は必然だと思います。
それだけではありません。何故か、不幸は不幸を呼びます。最近の旱魃が、その不幸の1つになる可能性もあります。内乱の原因は、いつの時代でも食糧です。中国の17の王朝の内、5つの王朝は旱魃で倒れたと言われています。
ただ。
問題は、時間です。
中国が世界征服を成し遂げる可能性はあります。
しかし、中国の支配が永続するわけではありません。
中国帝国の寿命が、数十年なのか、数百年なのかはわかりません。
ただ、少なくとも、その間は、世界は中国の奴隷に甘んじることになります。


2022-09-01



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