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人間の情念 [評論]



以前に、中国はゼロコロナ政策をやめられないだろう、と書きました。
ところが、中国は、突然、ゼロコロナ政策を放棄しました。政策転換ではなく、政策放棄というやり方が、いかにも中国らしく、世界を驚かせました。
完全に、私の予測が間違っていました。大外れ、真逆です。
しかし。
中国人民は、諸手を挙げて、喜んでいるというニュースが流れています。
ロックダウンされるくらいなら、コロナに罹患したほうがいいと言っているそうです。
確率の低い死の恐怖よりも、自由(言論の自由は諦めていますが)を歓迎しています。中国人にとっても、ロックダウン(自由の束縛)が、それほど耐え難かったのだと思います。
ただ、まさに爆発という言葉そのもののような感染爆発が起きました。まだ、中国人民の皆さんは、その渦中にいるのですから、見えていないのかもしれませんが、犠牲者(死者と後遺症患者)の数は半端ではないと思います。
ゼロコロナ政策という間違った政策を実行したのは共産党であり、掌返しをして感染爆発を起こしたのも共産党です。共産党による統治に疑問は出ないのでしょうか。
経済がV字回復すれば、全ては水に流せるかもしれませんが、もしも、経済の停滞が長引けば、或いは、経済が頓挫すれば、人民の不満は政権に向けられます。
何故、政策放棄をしたのかは、闇の中ですが、経済活動の低迷が地方財政を圧迫し、地方政府に財政破綻の可能性があったことによるという説があります。特に、不動産市場の低迷は、地方政府にとって致命傷です。中国では、公式の数字は意味を持たないと言われていますが、不動産関連の経済の縮小は、かなり深刻なものなのだと思います。何とか、倒産は最小限に食い止めていますが、新規の不動産建設は、数字は不明ですが、随分と落ち込んでいるのだと思います。新しいマンションを建築するためには、土地が必要です。その土地を建設会社に提供して収入を得ていたのが地方政府です。土地は、売却ではなく、使用権の付与ですから、100年経てば、また、使用権を売ることが出来るという美味しい商売に慣れていた地方政府にとっては、天地がひっくり返えるような環境が生まれてしまったのです。対応策は考えてきませんでしたので、思考停止状態になり、財政の逼迫が起きました。特定の地方政府だけが財政逼迫したのではなく、ほとんどの地方政府が行き詰りました。中央政府も、全ての地方政府を救済することはできません。ここは、無理矢理でも、経済を動かすしかなかった。そのためには、ゼロコロナ政策は中止するしかなかった、という説です。
「大の虫を活かすために、小の虫を殺す」という伝統が生きていたのでしょう。
大の虫は地方政府で、小の虫が人民です。コロナでの死亡予測は100万人という説もあれば、数百万人だという説もあります。100万人の人民が「小の虫」だとは思えませんが、14億人の中国では「小の虫」なのかもしれません。
春節で、多くの中国人が出身地に帰省しました。その出身地は農村です。農村には、年寄りと子供しかいません。そこに、コロナウイルスがやって来るのです。大変、危険です。しかも、農村部に病院はありません。全土で薬不足が続いていますので、農村部には薬もありません。北京や上海より、死亡率は高くなるものと思います。ただし、中国では、病院で死亡したコロナ患者しかコロナ死亡者と認められません。病院のない農村部では、コロナ死亡者は出ないのです。しかし、肉親は、そのことを知っています。
春節前に出た通達は、さすが中国、というものだったそうです。
「故郷に帰った時の様子を文章で発表したり、見聞きしたことを発信することや、社会を陰鬱にするような喧伝は、この通達をもって厳格に監督管理する」
日本では、私を含めて、言いたい放題ですが、この通達は、中国人民の不満を貯める効果しかないように思います。不満という火薬を充填し続けることに危険はないのでしょうか。

さて、コロナの感染爆発が終わった後に、中国人が冷静になった時に、何が待っているのでしょう。2023年度の中国経済の成長率は3%を切ると予測する人もいますし、0%と予測する人もいます。日本から見れば、それでも成長しているように見えますが、過去の10%とか8%の成長率から見れば、明らかに経済収縮です。若者の失業率は17%だと言われていますが、実際の失業率は30%だという人もいます。不動産バブルは壊れかけています。中国経済の半分は不動産関連だと言われていますので、破壊力は大きいと思います。
中国経済は、正念場に立っているようです。
海外企業の中国離れは、今年から本格的に増え始めると言われています。これは、雇用が失われ、金融流失が始まるということです。
アメリカの半導体輸出規制も、今年から本格化します。
中国の経済予測は、明るいものではありません。
中国共産党は、経済発展と人民弾圧の2本柱で運営されてきました。
人民弾圧という1本足運営では、かなり、厳しくなると思います。
中でも、一番怖いのが、社会不安です。政府及び党の機構は、この社会不安に対処するものに変更されるようです。一部では、スターリン化と呼ぶ人もいます。それは、粛清される人民が数千万人になるということです。共産党対人民の戦いも始まっているようです。

情報が遮断されている中国や北朝鮮のような社会主義国では、現政権の情報しかなく、外部の情報を得る機会がありません。
政権は、最大限の努力をして、外部情報を遮断します。これは、社会主義国の定番です。
しかし、北朝鮮とは違い、中国では、政権の検閲を逃れたネットツールが存在していることも確かなようですから、情報の完璧な遮断は不可能なのだと思います。更に、豊かになった中国人は海外旅行に行きます。実物の情報に接する機会も増えます。北朝鮮と違い、中国での情報統制は至難の業です。しかも、人口が多いことも、統制を難しくします。
人々は、何かに困った時に情報を探そうとするものです。
多くの中国人が、親や祖父母や親戚の高齢者がコロナで死亡したことに、どこか割り切れない感情を持っているようです。病院が長蛇の列で、医療機関に辿り着けた人よりも、自宅療養を余儀なくされた人のほうが桁違いに多いと思います。病院での死者数は、氷山の一角だと言われています。
コロナによる死亡者は、圧倒的に高齢者が多い。これは、世界共通です。中国でも、同じです。自分がコロナウイルスを持ち帰り、親を感染させ、死なせたのではないかという気持ちもあります。特に、火葬場に行列したことには、反発が多いようです。
肉親の情は世界共通です。真面な弔いが出来ないことへの反発は心に残ります。
ゼロコロナ政策は中国以外にはないことを、習政権は自慢していましたが、その政策が理に適っていないことを、中国人民は知りません。あれほどの感染爆発が起きたことが異常であることも知りません。
しかし、肉親の非日常的な死は、簡単には忘れられません。
人は、自分の情念を扱いかねて、情念の負の部分を開放するために情報を探します。
時間はかかりますが、共産党政権の異様さに気付く人も増えてきます。
ある中国人の感想。
「コロナ以前は、多くの人が中国共産党に対して、正直なところ『どうでもいい』といった態度でした。なぜなら政府が一人ひとりの生活に干渉することはなかったからです。しかし、コロナ禍の3年は完全に異なります。中国共産党は一人ひとりの頭上にいて個人の運命を決定することができる、ということを誰もが思い知ったと言えるでしょう」
今回の感染爆発騒動は、まだ小さな波紋に過ぎないのかもしれませんが、大きな波になる可能性を秘めているように感じます。人間の情念は強力です。

これまで、中国人民が不条理を受け入れてきたのは経済成長があったからです。
共産党独裁国家に対する不満が大きくなっても不思議ではありません。
本格的な社会不安がやってきたら、「白紙デモ」では終わらないと思います。
共産党独裁国家の終焉の始まりだと言う方もいます。
もしも、そうだとしたら、中国はどんな国になるのでしょう。
コロリと民主国家になれるのでしょうか。
そうはならないと思います。
では、どうなるのでしょう。
わかりません。わかりませんが、カオス状態になることは避けられないと思います。
抽象的な言い方ですが、ぐちゃぐちゃ、になると思います。
最終的には、力による支配が始まると思います。
最悪の想定では、内戦状態になる可能性もあります。
巨大な組織である人民軍は、一枚岩ではありません。
人民軍もバラバラになると思います。
アメリカは、表でも裏でも、介入してきます。
仲良しに見えたロシアでも、力が残っていれば乗り込んできます。
それ以外にも、介入してくる国はあると思います。
やはり、ぐちゃぐちゃ、になるのではないでしょうか。
ソ連崩壊後のロシアの混乱も大きなものでしたが、あの程度の混乱では終わらないのでしょう。多分、世界を巻き込んだ混乱が生まれると思います。


2023-03-03



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