SSブログ

風雲急を告げる [評論]



昨年、北朝鮮は大量のミサイル発射実験を行いました。
年末には、新しいロケット砲の実験も行いました。
口径600ミリの大型多連装ロケットだそうです。
これまで、北朝鮮が保有していた多連装ロケットは、口径300ミリですから、大きさが倍になっています。それは、爆薬の量も倍になるということです。北朝鮮の発表によれば、韓国全域を射程圏に収め、戦術核の搭載も可能だということです。つまり、核弾頭を搭載するために、口径を倍にしたのです。
一連の北朝鮮の軍事力強化には、これまでにない、本気度が窺えます。
ウクライナ戦争や台湾有事に注目が集まっていますが、朝鮮半島有事は大丈夫なのでしょうか。

韓国は、北朝鮮融和政策の極左政権から、アメリカとの同盟重視の保守政権に変わりました。韓国のブレは、いつも、困ったものです。
いつまで保守政権が続くのかわかりませんが、とりあえず、今のところは、大規模な米韓合同軍事演習も行われています。どのような演習が行われているのか知りませんが、朝鮮半島でも、ウクライナ戦争と同じような戦争が起きるとは限りません。もし、戦争が始まるとしたら、北朝鮮軍は、ミサイルと核で戦うと思います。それも、短期決戦です。1週間で、韓国を焦土にしなければなりません。北朝鮮軍に勝機があるとすれば、そこにしかないと思うからです。

アメリカが日本を核攻撃して以来、核兵器は一度も使われていません。
ですから、アメリカの核の傘が、実際に使用されたことはありません。
傘が役に立つかどうかは、誰も知らないのです。
アメリカは、ほんとに、核兵器を使うのでしょうか。
自国領に核爆弾が着弾すれば、躊躇なく、使うと思いますが、他国の領土に着弾した核爆弾に対して、アメリカが核兵器を使うかどうかは、誰にもわかりません。そのことは、韓国も心配しています。アメリカの許可は出ていませんが、韓国世論は、自国の核武装に賛成しています。アメリカの許可が必要だというのも、変な話ですが。

双方の宣伝戦が熱を帯びてきているように思います。
とても、危険だと思います。
そんな中で、12月に、「韓国軍、大丈夫なのか」という事件が起きました。
北朝鮮の5機の無人機が韓国領に侵入し、大統領執務室の近くまで飛来しました。
迎撃すべく韓国空軍が対応しましたが、無人機を撃墜することはできませんでした。
それだけではなく、迎撃に飛び立った戦闘機が一機、離陸に失敗して墜落しました。
しかも、無人機に生物化学兵器が搭載されていたら、ソウルの半数が死傷することになっていたという試算も出ています。まだ、北朝鮮が保有する無人機は1000機程度だそうですが、韓国の対応を見た北朝鮮は、無人機の増産に励むことになります。
大統領は激怒し、国民は呆れてます。

朝鮮戦争が停戦になってから、約70年が経過します。
この70年間の韓国と北朝鮮の経済発展の差は、北朝鮮に軍事的劣勢を強いてきました。
ただ、70年という時間は、双方に慣れを生んでいるのかもしれません。
一人だけ、新鮮な感覚で、必死になっている人物がいます。金正恩です。
スイスに留学していた金正恩は、2011年に北朝鮮のリーダーになった時、その客観的な軍事情勢を知っていたと思います。金正恩は、その劣勢を、均衡に引き上げ、優位を獲得することが使命だと考えたのかもしれません。考えに考えた末に得た結論が、ミサイルと核だったのだと思います。この10年間、金正恩は、その目標に挑戦し続け、成果を挙げています。まだ、米韓合同軍の軍事力には敵いませんが、短期的、限定的な軍事力では、互角の戦いができるところまで来たと思います。それは、核開発があってのことだとすると、金正恩は、自分の考えに自信を持ったと思います。
金正恩は、核弾頭の増産と更なるミサイル開発と量産を指示したと伝えられています。
アメリカ軍を考慮に入れなければ、両国の軍事力は、歪な形ではありますが、対等になったのかもしれません。

韓国大統領は、軍に対して、「一戦を辞さない構えで、敵のあらゆる挑発に対し確実に報復しなければならない」「1000倍にして返せ」と言っています。
軍の無最高司令官の、この発言は、気概を示すという意味ではいいのでしょうが、軍がその気になったら、「ヤバイ」と思います。
宣伝戦ですから、過激な言葉が出てきます。
韓国側の発言が過激になったために、そう感じるのかもしれません。
一方、北朝鮮は、尻尾を振ってくれていた前政権に対しても、容赦のない罵詈雑言を浴びせていたために、北朝鮮の態度に変化はないように見えますが、どこか切羽詰まった雰囲気を感じます。
それは、両国共、経済の不安を抱えているからなのではないかと思います。
韓国は、生産人口の減少、歪な経済構造、硬直した労使関係、中国の圧力、どれをとっても負の臭いがします。韓国社会に閉塞感が出ていても不思議ではありません。韓国経済の絶頂期は終わっているのかもしれません。
北朝鮮は、一国の命運をかける覚悟で戦争に臨まなければなりませんので、米韓合同軍が軍事的優位を保っていれば、戦争にはなりません。ただ、韓国軍が北朝鮮領に侵攻することはできません。それは、核報復があるからです。一方、北朝鮮軍は、勝利の可能性が高ければ、韓国領に侵攻が可能です。以前より、在韓米軍の存在意義は、高くなっています。
そんな複雑な環境の中で、挑発と報復を繰り返していたら、不測の事態が起きる可能性があります。
その時に、金正恩がどんな行動に出るのか。その事を理解している人はいないと思います。あらゆるシナリオを想定しておかねばなりません。
金正恩は「核兵器は、戦争抑制が第1の任務だが、抑制に失敗した場合、第2の使命も決行する。第2の使命は防衛でない別のものだ」と言っています。
確率は低いシナリオかもしれませんが、核の先制使用もあり得るということです。
北朝鮮が、ミサイルとロケット砲で、韓国全土に飽和攻撃を仕掛け、その中に20発の核弾頭を入れておいたとすると、一定数の核爆弾は韓国国内で爆発することになります。ミサイル防衛システムは、全てのミサイルを撃墜できるものではありません。特に、飽和攻撃には対処できません。仮に、7割のミサイルを撃墜したとしても、残りの3割は着弾します。それは、ウクライナ戦争でも証明されています。20発の核弾頭の内、6発の核弾頭は核爆発を起こすことになるのです。
当然、韓国に駐留している米軍にも被害が出ます。
もしも、アメリカ軍が、核に対して核で報復するのであれば、核弾頭が北朝鮮に向かいます。それを防ぐ手段は北朝鮮にありません。
北朝鮮は、そのことは承知していますから、連続して第2波の攻撃を行うかもしれません。
韓国軍は、第1波の攻撃で損傷を出していますので、5割しか撃墜できなかったとすると、10発の核弾頭が着弾することになります。
もしも、アメリカ軍が、核兵器で相応の報復をしたとすると、朝鮮半島で、合わせて32発の核爆弾が爆発することになります。
戦術核の爆発は小さいと言われますが、それは、巨大な核兵器に比べて小さいだけであり、通常兵器とは意味が違います。
朝鮮半島は、北も南も、ズタズタ、ボロボロ、になります。

日本には、影響がないのでしょうか。
そうはならないと思います。
朝鮮半島の上空は放射性物質の宝庫となり、季節風が、その放射性物質を運んできます。
日本でも、広い範囲で、放射性物質による被害が発生します。特に、農作物と水源の汚染が国民生活を苦しいものに変えます。
もしも、このようなシナリオがあり得るとすると、不思議なことが1つあります。
アメリカ軍の韓国駐留は継続されるのか、という疑問です。
北朝鮮の核開発が成功したことで、朝鮮半島はとても危険な地域になりました。
数万人のアメリカ兵と数万人のアメリカ兵の家族が犠牲になる可能性があるのです。アメリカが、世界の警察官役を辞めると言い始めたのはオバマ大統領の時代です。あの時点で、海外派兵の大義は失われています。そんな時代に、大量のアメリカ軍兵士の死は、アメリカ国内で受け入れられるのでしょうか。
そう考えると、アメリカ軍の韓国撤退もあり得るのではないかと思います。
もしかすると。
韓国を見捨て、台湾を見捨て、日本を見捨てる。
それが、時代の流れなのかもしれません。
あり得ないことではないように思います。
もちろん、素人の勝手な感想に過ぎませんが、そんなことになっても、私は「ふむ、ふむ」と頷くことになりそうです。
私は、朝鮮半島が、静かに、「風雲急を告げ」ているように見えます。

いや、朝鮮半島だけではないのかもしれません。
ウクライナ戦争で、世界の空気は変わったように見えます。
空気は伝染するのかもしれません。
イスラエルでネタニエフ氏が、再び首相になりました。イランの核開発も進んでいます。イスラエルが電撃的に、イランを、核施設を、攻撃する可能性は高まっています。
それ以外にも、地域紛争はあります。
世界が、戦争モードに入っているのかもしれません。
もしも、世界のどこかで、第二、第三のウクライナ戦争が始まれば、世界の空気は、一気に第三次世界大戦へと向かうのかもしれません。
国連は機能していません。
アメリカも世界に背を向けています。
世界秩序は失われていると考えたほうがいいと思います。
人間は、理性的な判断だけをするわけではありません。
「何でもあり」の世界が、すぐ、そこに、来ているのかもしれません。
第二次世界大戦の後、世界は「1対1」になり、ソ連が崩壊して「1対n」になり、アメリカが世界に背を向けて「n対n」という混沌の世界になりました。
ウクライナ戦争は、混沌の世界の到来を知らせる号砲だったのかもしれません。


2023-02-03



nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:blog

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。