SSブログ

群れる蟻 [評論]



岸田総理が、昨年の5月に、アメリカのバイデン大統領が来日した時に「防衛費を、GDP比2%にします」と約束しました。
なぜ、あんな大見得を切ったのか、未だに、私には理解できません。
だって、岸田さんは、「増税はしません」と宣言していたのですから、増税もせずに、この国が、これ以上の歳出増なんて出来る状態ではないことはわかっていたはずです。
確かに、未だに諸国民の信義を信じている一部の人を除き、多くの国民の皆さんは、ウクライナ戦争の報道を見て、「何となく」ではあっても、防衛力の強化が必要なことは認めています。
ただ、防衛力の強化は、言葉だけでは出来ません。
カネが必要なのです。
いや、カネ以上に重要なことがあります。それは、「なぜ、防衛力が必要なのか。誰を守るのか。ほんとに、守れるのか」という問いに対する答がないことです。いや、問い、そのものがありません。
カネも防衛力の必要性も、全て、曖昧の中に埋もれているのです。ですから、私達は、無駄なことに時間を割いているのです。「防衛とは」という定義が必要です。
戦争になれば、莫大な戦費が必要です。平時の予算の3倍は必要だと言われています。
では、仮に、年間300兆円の戦費が、10年必要だとすると、3000兆円のカネが必要になるということです。消費税1%の税収が2兆円だとすると、消費税を150%にしなければなりません。こんなこと、実現不能です。
だから、どこの国も戦争になれば、国債を、戦時国債を、発行するのです。
もちろん、戦時国債は、敗戦国になれば紙屑になりますが、他に手段はありません。
では、日本で、戦時国債が発行できるのでしょうか。
誰が、その国債を買ってくれるのですか。
銀行ですか、保険会社ですか、証券会社ですか、ファンドですか。
どこにも、そんな余力はありません。
これまで、金融機関が国債に投資している原資は国民から預かっている資産です。当たり前のことですが、国民資産以上の資金は、国内にはありません。皆さんの預貯金は、既に、過去の国債購入に使われてしまっています。
もしも、国民資産が2000兆円あって、それが手つかずで残っていたとしたら、7年程度は戦争をすることが可能です。でも、無い袖は振れません。
では、海外の金融機関が買ってくれるのですか。
敗戦国になる可能性がある国の国債を買ってくれる海外金融機関はありません。
それだけではありません。
今回、防衛力強化の議論で出てきたのが継戦能力という言葉です。弾丸が3日分しかない。弾薬保管庫がない。補給路が、補給能力がない。つまり、戦争になれば、日本は3日で無力になるという問題です。
更に、自衛隊員は20万人と言われていますが、戦争になれば死者も出ますし、負傷者も出ます。あっと言う間に数万人が戦線を離脱するのです。それは、ウクライナ戦争を見れば、一目瞭然です。しかし、人員補充ができません。
つまり、日本には、戦争遂行能力が無いのです。
それは、防衛費を、GDP比2%にしても意味がないということです。
そもそも、日本政府に、国民を守る意志はありません。これまでも、今でも、ご主人様であるアメリカが、日本を守ってくれると思っています。
岸田さんがやっているのは、言葉遊びです。政治家の言葉遊びのために、増税されるのです。国民を守るためと言って増税しても、実際には、戦費がない、弾薬がない、兵士がいない。これでは、国民を守ることなんてできません。これは、明らかに、詐欺です。

では、どうすれば、国を守ることが出来るのでしょう。
暫定的に、6つの項目を挙げてみます。
1. 税を納めてくれる国民を豊かにする。
2. 国の目的を作る。
3. 国の責務と国民の責務を明確にする。
4. 国民の国防意識を高める。
5. 財政赤字をゼロにする。
6. 徴兵制度を作る。
これ以外にも必要なことはあると思いますが、気付いた時点で追加します。
6項目、やる気になれば、出来ることばかりです。
ただ、今は、どの項目も手付かずのままです。
このままだと、なし崩しで、空気だけで、何となく、「なあ、なあ」「まあ、まあ」で、戦争に突入することになります。第二次世界大戦の時と同じです。
日本の得意技ですが、どんな結果になるのかは、歴史が示しています。
更に、悪い条件があります。
それは、国が、日々、衰退していることです。
国民が、日々、貧しくなっていることです。
どう見ても、この国は、戦争なんて出来る国ではありません。
それは、今や最大の敵国になった中国の反応を見ても明らかです。もしも、日本の2%が中国にとって死活的に問題なのであれば、歴史問題、反日デモ、経済的ないやがらせ等々、あらゆる手段を使って対応しなければなりません。しかし、猛反対は起きていません。既に、中国にとって、日本は脅威ではないのです。なぜなら、彼等は、緻密な計算をしているのですから、日本が戦争のできる国ではないことを知っているのです。今は、日本から、古き良き技術を奪うことができれば、いいのです。軍事的には、今の日本は、東南アジアの国々と同じ比重しかありません。2%は、井の中の蛙にしか価値が無いのです。

それなのに。
上記の国防の前提を無視したまま、2%が独り歩きをしています。
しかも。
国防費という名の予算獲得競争が起きています。
岸田さんは、「防衛費を2%にするとは言ったが、兵器と兵員を増やすという約束はしていない。防衛関連費だって立派な防衛費だ」と思っているのかもしれません。
この先、国防費という名目で、いろいろな事業が生まれます。
年間5兆円という、真っ新な砂糖の山が突然湧き出したのです。
蟻が、あちらこちらから集まってきています。
しかも、その砂糖の山の財源は、増税と国債です。
こんな美味しい砂糖は、久しぶりです。
利権屋と呼ばれる蟻の手腕の見せ所です。
つまり、岸田政権も、与党も、国民を守るつもりはないということです。
もちろん、野党も、国民を守るつもりはありません。
それは、上記の6つの条件に手を付ける政権も政党も存在しないからです。
将来の国民の負担である国債と今の国民の負担である増税は、蟻の餌になるだけです。
それでも、国民の皆さんは「ぶー、ぶー」と言いながらも税金を納めます。
ほんとに、「いい人」です。いや、「いい人」もここまでやると「馬鹿」でしかないと思います。国民を守ろうとしない国に、なぜ、国民が貢ぐのですか。ホストに貢ぐオバサンと同じです。これは馬鹿のすることです。だって、日本は戦費が無くて、戦えないのです。戦っても、自衛隊員は無駄死にするだけです。
先月も書きましたが、国防費は、国民が負担するのが筋です。しかし、それは、前提条件が、上記の6つの条件が、満たされなければなりません。今のままで税を負担すれば、それは、皆さんのカネをドブに捨てるようなものです。
多分、国民の皆さんは、そんなことには気付かずに、不満はあっても、大人の対応をして、最終的には「ふむ、ふむ」と頷くのでしょう。
何と言っても、「お上」のお達しですから、「下々」を自認する皆さんは従うしかありません。それが、日本流の民主主義風王政並立封建制度の正しいあり方ですから。
先月、防衛力強化という課題は、総論賛成、各論反対に動くと書きましたが、増税に対する反発は、その空気は、既に、生まれています。左翼の皆さんが、指を咥えて見ているとは思えませんので、予測通りの展開だと思いますが、岸田総理は、また、口先で、増税を正当化しようとして、火に油を注ぎました。明石市の市長がツイートで、「岸田さん、もう、決断しなくてもいいですから・・・」と書いていたそうですが、岸田さんは決断をやめるべきなのかもしれません。「決断しない総理」が岸田さんに相応しい称号なのかもしれません。
先程も書きましたが、国防費は、本来は国民生活を守るための費用ですから、国民が負担するのが筋です。ところが、総理は、先程挙げた6つの要件を曖昧にしたまま、「今を生きる国民の責任として、増税の重みを背負ってください」と語りました。岸田さんの言っていることは間違っていません。しかし、国は何もしないけど、前提条件は無視するけど、予算は有難く使うけど、国民の皆さんを守ることは出来ないけど、国民は増税に耐える責務がある、と言っていることになります。これでは、国民の同意は得られません。流石にまずいと思ったのか、原稿に書かれていた「国民の責任」という言葉を、実際には「我々の責任」と言ったと修正しました。でも、これは言葉の問題ではありません。行動の問題だと思います。
国民の皆さんは、漠然としたものではありますが、6つの要件をおぼろげに知っているのです。それも、皆さんの不安感の原因の1つです。確かに、「いい人」ばかりの国民ですが、流石に、これは、「ふむ、ふむ」とは言えません。「ふむ、ふむ」とは言いませんが、税金は払います。それが「下々」の責務ですから。
「国とは、国民とは、民主主義とは」という言葉の定義が確立していれば、こんなことにはならなかったと思います。
もちろん、言葉の定義が確立していたとしても、強かな蟻は、定義をかいくぐって砂糖を食べに来ますが、それでも、今よりは大きく改善されると思います。
先ずは、言葉の定義から始めることです。
それが、国防の基礎です。
言葉の定義が確立すれば、国力衰退も止められるかもしれません。


2023-01-02



nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:blog

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。