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広域災害の意味 [評論]



今年は地震の当たり年なのか、よく地震が起きています。
ですから、危険が迫っていると言われる東南海地震、首都直下地震、十勝地震に関心が向いています。中でも、東南海地震の話題は多く報道されます。最近は、東南海地震ではなく、南海トラフ地震と呼ばれることが多いようです。
被害予測では、死者数が32万人とされています。つい「ふむ、ふむ」と頷きそうになりますが、どのくらい深刻な数字なのか、自然災害による犠牲者ランキングを見てみましょう。
バングラデシュの1970年に発生したサイクロンによる犠牲者が、推定ですが30万人と言われていて、これまで、最大の犠牲者を出した自然災害とされています。私達の目の前にあるのは、その数を超える史上最大の災害なのです。
どうして、皆さんは大騒ぎしないのですか。確かに、その衝撃度は遭遇して初めて実感できるものなのでしょうが、このままでいいとは思えません。
東日本大震災の死者数が、約2万人ですから、あの東日本大震災が16個起きる計算になります。私達は、阪神淡路大震災や東日本大震災の惨状に驚愕しましたが、もう、あの記憶は風化してしまったかもしれませんが、あの惨状が16回分一度に起きるのです。多分、実際の被害は、まだ、想像できていないのだと思います。いや、スケール効果があって、16回分では済まないのかもしれません。
日本の6割から7割の地域に、被害が出ます。
被害の大きさと同時に、被災地の広さが、南海トラフ地震の特徴なのかもしれません。この広域という特徴は、甘く見ないほうがいいと思います。
それだけではなく、「連動」という言葉も多く使われています。
危機管理という観点から、最悪の事態を想定してみると、南海トラフ地震と首都直下地震と十勝地震が連動するというシナリオもあります。その時の死者数は、50万人を超えます。被害を免れる自治体は数県だと思います。私達は、世界最大の災害を、目前にしているのに、この平和ボケは何なのでしょう。私の心配は、取り越し苦労に過ぎないのでしょうか。

実務という視点からは、巨大地震、巨大地震連動では、被害が広域化することで、救助・支援・復興を担う人員不足が大きな問題になると思います。
実際の救助・支援・復興に深く関与する自治体の職員の方は、想像せざるを得ませんので、「おい、これ、ヤバイだろ」と思っている人が大勢いると思います。この広域性を問題にする人はいますが、今は、まだ、大問題とはされていません。公的機関は、この「広域」という要素が「不安を煽る」心配がありますので、意図的に問題視しないようにしているのかもしれません。ただ、現実に直面した時には、否応なく大問題になると思います。
助けられる人を助けられずに見殺しにする場面が出てくると思います。
自分が住んでいる都道府県が他の自治体の応援なく、自力で住民の安全を確保しなければなりませんが、そんな体験はしたことがありません。これまでは、他の自治体から多くの応援を得ていたことと比べると、その難易度はかなり高いものになります。
仮に、〇〇県に住んでいるとします。他の県からの支援はありません。
県と市町村の職員は何人いますか。
県下の警察官・消防官は何人ですか。
病院の数は。医師や看護師の数は、充分ですか。
物資調達や物資運搬の業者の数は充分ですか。
水や食料の生産業者は充分ですか。
ボランティアの数は大丈夫ですか。
道路や橋を復旧する工事会社は、存在しますか。
電力会社、ガス会社、水道局の人員は、充分ですか。
もちろん、救助・支援・復興を担う人達の中にも、犠牲者は出ます。
絶対数が足りません。これは、人員不足により、救助・支援・復旧に時間がかかるということであり、今のままだと、救助・支援が届かずに災害関連死をされる方が大幅に増える可能性があるということです。餓死する方も出ることになります。
もう、注意喚起や啓蒙をしている時間帯ではないように思います。
どんな場合でも、無い袖は振れません。
巨大地震の場合は、公助だけでは国民を救えないことは、明らかです。
国は、共助と自助の部分を法制化し、努力義務ではなく、義務にする必要があります。国民生活を守ることが国の最重要課題だとすれば、今は、国民生活を守るために、国家崩壊を防ぐために、国家権力を使う時だと思います。
「巨大災害に備え、国民は、自力で1カ月生き延びる準備をしなければならない。これは、義務です。そのために、消費税を5%下げることにします」
こんな政策を実施する政党は存在しないでしょうが、背に腹は代えられないと思います。
もちろん、これを法制化するためには、大胆な改変が必要となります。
国は、その覚悟を示すために、先ず、自分の身を切る必要があります。
公務員給与を一律30%削減、国会議員歳費を90%削減、参議院を廃止、その上で、最大の歳出項目である社会保障費を始め、あらゆる歳出を10%削減する必要があります。
国の責務は、国民生活を守ることです。
現状のままであれば、結果的に国民生活が破綻したとしても、誰も責任を取りません。
「起きてしまったことを、今更、四の五の言っても始まらないから、水に流して、この先、頑張りましょう」という言い訳で済んでしまいます。
結果的に守れなかったことは、「仕方ない」で済むことなのでしょうか。
私達は、最善を尽くしたのでしょうか。
事前にわかっていたことをやらなかったのは、人災なのではありませんか。
私は、今、やれることをやることが国家運営者の責務だと思います。
自然災害は防げません。
その通りかもしれません。仕方のないことかもしれません。
しかし、災害関連死は、組織として防ぐ努力をするべきだと思います。国は、被害予測を出しておけば、それで責務を果たしたことになるのでしょうか。国民は「ふむ。ふむ」と頷いていていいのでしょうか。私達は、「なあ、なあ」「まあ、まあ」で巨大地震をやり過ごそうとしています。このやり方は、余りにも、傲慢だと思います。

地震動による倒壊や火災で犠牲になる人、津波の犠牲になる人、一人でも少なくなることを祈りますが、難しいことだと思います。
直接被害は、不可抗力の部分が多いので、広報と啓蒙くらいしかないと思います。実害を防ぐ方法がありませんので、諦めるしかありません。
問題は、地震発生後の社会を、どう維持していくのか、だと思います。生き残った人がこの国を再建しなければなりません。一人でも多い方がいいと思います。
ここで、東日本大震災の時を思い出してみましょう。
全国から、自衛隊だけではなく、自治体職員、警察、消防、電力会社、ボランティアが被災地に駆けつけました。被災した住民による、助け合いもありました。アメリカ軍まで協力してくれました。
それを、全部、自分の自治体のマンパワーだけでやらねばならないのです。
想定されている被害の一部を見てみましょう。ほんの一部です。
発災後4~7日に必要とされる食料は1億800万食だとされています。
ただし、発災後4~7日と記されているということは、発災後3日間は、住民が備蓄食料を持っているという前提です。しかし、ほぼ、備蓄食料はないと思いますから、実際には、2億食必要です。しかし、日本の人口の半分が被災者になると言われています。もしも、仮に、その半数の3000万人に食料を届けなければならないとすると、1日9000万食の食料が必要になり、1週間では6億3000万食が必要ですから、2億食という数字は控えめな数字です。それでも、ここでは、2億食で試算してみましょう。
これを 各自治体が、自分で調達・配布出来るとは思えません。
自衛隊の救援が必要です。
自衛隊は、30の自治体に、2億食の食料を、1日か2日で、道路が寸断されている地域に、輸送しなければなりませんが、自衛隊にその能力はあるのでしょうか。
よくわかりませんが、可能だとしてみましょう。
ただし、1回運べば済むわけではありません。2億食は1週間分です。
更に。
運ぶだけで済む備蓄食料が2億食あったとしても、1回で終わります。
調理不要の備蓄食料が尽きれば、調理しなければなりません。
コンビニ弁当のようなものは作れませんから、「おにぎり」で耐えてもらわねばなりません、
そのためには、精米工場を稼働させる必要があります。
精米できたとしても、その米を、2億食分、炊飯しなければなりません。
炊飯できたとしても、人の手で、2億食分、「おにぎり」にしなければなりません。
梅干しも削り節も集めなければなりません。
季節にもよりますが、炊飯したご飯が腐らないように急がねばなりません。
出来た「おにぎり」を全国に運ぶためには、2億食分の容器が必要です。
これ、誰が、どこで、実現するのでしょう。
それも、毎週、2億食必要です。
多分、実現は困難だと思います。
住民が通常の食料調達が可能になるのは、数カ月後だと思います。
餓死する人が出ても不思議ではありません。
必要になるものは食料だけではありません。水は、食料以上に欠かせないものです。医薬品も必要ですし、30万人分の遺体を保管するドライアイスも必要です。
物資を運ぶ車両だけではなく、ガソリンも必要です。ガソリンスタンドに補給がなければ、ガソリンは短時間で枯渇します。電力の復旧には長時間かかると思いますので電気自動車は使えません。敗戦後、木炭車が走っていたことを思い出しました。
人員も物資も、あらゆる物が不足します。
水と食料は、何としても必要です。国民の皆さんには、3日分ではなく、1か月分の用意をしてもらわなければ、国民生活は破綻します。
この際、国民に自助を強要するしか方法はないのではないかと思います。
マイナンバーカードだって、法律を作って強要したのですから、出来ないことではありません。

南海トラフ地震の経済的被害総額は、1410兆円に上ると想定されています。
国家予算が、年間100兆円ですから、その規模は驚愕の数字です。
1410兆円だけでも、充分に再起不能レベルの損害ですが、もしも、南海トラフ地震と首都直下地震と十勝地震が連動したとしたら、その経済的損失は更に増えます。特に、首都機能が麻痺した時の経済損失は、予測不可能だと思います。
もう、災害とは呼べません。
国家崩壊です。
国民生活は、ぐちゃぐちゃです。
だとすると、これは、国家存続の危機だということですが、この国の国家運営を請け負っている人達に、そんな空気はありません。
国会では、衆議院議員の任期延長の議論が盛んです。
国家運営を担う人達は、自分の身分を守ることしか考えていません。国民生活を守る仕事を委託されている人達に「国民」という視点はなく、あるのは「自分」の利益だけです。「自分さえよければ」が恥ずべきことだという意識もないようです。
政府は、どっちみちパニックになるのだから、先送りが上策だと考えているものと思います。
地震が起きてから、いつものように、「まあ、まあ、まあ、とりあえず、皆で助け合って、復興に向けて頑張りましょう」と言うのでしょう。
南海トラフ地震では、そのやり方は、通じないと思います。
それは、あまりにも被害が大きすぎるからです。
どうして、想像しないのか、不思議でなりません。
衰退病という慢性疾患を抱えている人が、骨折するようなものです。
いや、慢性疾患だけではなく、骨折までして、その上、収入を失うのです。
まさに、踏んだり、蹴ったり、どついたり、です。
収入が保障されているのは、公務員と一部の大企業の社員だけだと思います。
収入がなくなることのダメージは大きく、特に、精神的なダメージが大きいと思います。それでも、気持ちを奮い立たせるには、時間が必要ですが、時間の経過は、その症状を悪化させると思います。貧すれば鈍するのが世の常です。
早めにパニックを体験して、覚悟を醸成しておく必要があるのではないでしょうか。
今度の災害は、これまでのものとは別物だと思います。
これまでと同じ対応では、傷口を大きくするだけだと思います。
災害そのものも巨大ですが、それ以上に、災害後の対応が困難を極めます。
「日本、終わった」という状況を迎える公算がとても大きいのですから、ここは、「なあ、なあ」「まあ、まあ」をやめるべきだと思います。


2023-07-01



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