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国家運営の要 1 [評論]



今日も調査データを見てもらいます。
2020年度、金融広報中央委員会による、家計の金融行動に関する世論調査(単身世帯)というデータです。
     貯蓄
    ゼロ円  100万円  (小計)  500万円 (中計)    中央値
20代  43.2%  28.3%   (71.5%)  23.2%   (94.7%)   8万円
30代  31.1%  19.9%   (51.0%)  22.6%   (73.6%)   70万円
40代  35.5%  15.2%   (50.7%)  22.0%   (72.7%)   40万円
50代  41.0%  10.4%   (51.4%)  19.7%   (71.1%)   30万円
60代  29.4%  09.1%  (38.5%)  21.3%   (59.8%)   300万円

500万円以上の貯蓄を持っている人もいますが、人数が少ないので省略しました。
単身世帯のデータだから、と思っているかもしれませんが、単身世帯は年々増加し、今は約4割が単身世帯です。単身世帯が日本の標準世帯です。
いつの間にか、年間の孤独死3万人、孤立状態1000万人、と言われる時代になりました。
もちろん、一般世帯の人達にも無貯蓄の人はいますし、500万円以下の貯蓄しかない人も大勢います。老夫婦の場合、どちらかが死ねば、単身世帯になります。
これが、私達の現実です。
驚きは、どの年代も、貯蓄ゼロ円の人が一番多いことです。
次に、年代別の貯蓄額のデータの(小計)を見てください。30代40代50代の数字がとても似ています。たまたま、なのでしょうが、0.7%の誤差しかありません。(中計)の数字でも、2.5%の差しかありません。30代40代50代の人と言えば、「働き盛り」と言われる人達です。これは、明らかに、収入が少ないことを示していると思います。これが、日本の現実です。では、将来は、どうなるのでしょう。将来という視点から見れば、この数字は大変危険な数字だと思います。
20代の貯蓄額が少ないのは、収入が少ないということだけではなく、まだ、貯蓄という意識は少ない年代だと思いますので、頷けます。
60代の貯蓄額が他の年代よりも多くなっているのは、時代背景が違っていたことと老後直前ですから、頑張って貯蓄したのかもしれません。それでも、貯蓄ゼロ円の人が約3割います。老後直前の60代なのに6割の人が、貯蓄500万円未満です。
30代40代50代の皆さんは、その5割が、100万円未満の貯蓄しかなく、7割の方が500万円未満の貯蓄しか持っていません。
次に、中央値を見てみましょう。
60代の方の中央値は300万円です。この300万円の貯蓄は役に立つのでしょうか。
将来試算をしてみましょう。
病気をしない、冠婚葬祭もない、物価も上昇しない、贅沢もしない、そんな毎日が、20年間も続くのでしょうか。仮に、今日と同じ日が20年間継続されたとして、60歳の方が80歳まで生きるとすると、月に1万2500円しか使えません。もちろん、ポックリと死ぬ必要がありますし、葬儀は出さないという前提です。
とても、300万円では、老後を乗り切れないと思いますが、どうするつもりなのでしょう。金融庁の老後資金2000万円騒動の時にも書きましたが、老後資金2000万円でも、老後を乗り切るには無理があると書きました。私は、1億円必要だと書きましたが、巷では、5000万円という数字が多いのではないかと思います。
もう1つ、危険な数字があります。それが、30代40代50代の中央値です。
貯蓄額の少ない人が多いだけではなく、中央値が異常に低いと思います。50代の方の中央値は30万円です。30代40代50代の中央値を単純平均すれば45万円です。30万円も45万円もゼロではありませんが、限りなくゼロに近い数字です。
では、30代40代50代の皆さんは、この先、今の60代の人よりも多く貯蓄できるという根拠があるのでしょうか。
私には、今50代の人が60歳になった時に同じ数字が出せるとは思えないのです。
そもそも、今の60代の皆さんが、この数字では、とても老後を乗り切れないのです。それなのに、50代の人は、今の60代の人を上回れないとすると、悲惨です。
2000万円で老後を乗り切ることが無理だとしても、先ず、60代の皆さんの中央値を2000万円にしなければなりません。
では、50代の方の中央値が、60代になるまでに、中央値2000万円になる可能性はあるのでしょうか。
中央値30万円を、2000万円に、ですか。
不可能だと思います。

ここで、30年という時間軸で、上の数字を見てみます。
60歳の方の30年前は30代です。当たり前ですが。
50歳の方の30年前は20代です。これも、当たり前。
この国が衰退し始めたのが30年前です。
多分、30年前は、まだ、年功序列・定年退職の風習が残っていた時代だと思います。賃金の上昇が徐々に小さくなり、収入の増えない時代に突入し始めた頃です。60代の皆さんの時代は、古き良き昔の風習が、まだ、少し残っていたのだと思います。
30代40代50代は、「国力衰退」の影響を正面から受けた人達だと思います。途中に就職氷河期という時代もありました。非正規社員が増えたのも、この年代です。
もしも、この分析が正しいとすると、30代40代50代の貯蓄額は、このまま横這いで続く可能性があります。その理由は、国力衰退が続くからです。
と言うことは、7割の人が、貯蓄500万円以下で、老後に突入します。
老後を乗り切れない人が、大量に出てくるということです。
老人の生活基盤は年金です。貯蓄もなく、年金受給資格もない人は、いないのでしょうか。ここでは、そういう方はいないと仮定します。20年後30年後40年後、年金制度は破綻することなく、現状が引き継がれるものと仮定します。
年金受給額は、平均で月14万円だと言われています。国民年金の方は月6万円です。年金受給額の中央値は、7万円です。
私達は、平均値を見て、「ふむ、ふむ」と頷いてしまいますが、平均値は、あくまでも平均値であり、全員が14万円を受給できるわけではありません。半分以上の方は、14万円以下の年金しか受給できません。当然、年金ゼロの人もいます。
その上、健康保険や介護保険が天引きされますので、実際に手にする金額は、もっと少なくなります。家賃の高い都会での生活は無理です。特に、老人が、東京で暮らすのは無理です。しかし、引っ越しには、新しい住まいの費用と引っ越し業者に支払う費用と、長年溜まり続けていた不用品の処分等に、少なくとも数十万円の一時的な費用が必要です。
年金受給額の一番集中しているのが、月に6万円~7万円の人達です。仮に、年金受給額7万円の人が、50万円の引っ越し費用を支払って、田舎に引っ越しをし、家賃が4万円だとしたら、生活は成り立つのでしょうか。水道光熱費や自治会費等の諸々の費用が1万円だとすると、かなり食費を切り詰めなければなりません。外出着は買わないとしても、下着類は必要です。薬代や医療費も必要です。インスタントラーメンばかり食べていたら体を壊します。歯ブラシだって、同じものを10年は使えません。
だとすると、選択肢は、「とことん、永遠に、死ぬまで、働く」ことと、ポックリと死ぬことだと思います。
たとえ、1万円でも2万円でも、毎月、収入があるのは、何よりも大事です。
いや、貯金が無いのですから、働くしかありません。
働く老人が増えることは明らかです。引っ越した地方に仕事はあるのでしょうか。
もっと、切実な現実があります。
病気になれば働けません。
老人は、自分の体を長いこと使ってきていて、体中いろいろな箇所が賞味期限切れになっていて、病気とは親和性が高いのです。
例えば、認知症を見てみましょう。
認知症患者は、2025年には700万人になり、2050年には1000万人になると予測されています。老人の1/3が認知症患者です。85歳以上の老人は、50%が認知症です。
このデータの対象者は単身世帯の人です。認知症に罹患したら、どうするのでしょう。
30代の人でも、40年後には、70代になります。
50代の人が70代になるまでには、20年しかありません。
20年後、40年後には、認知症の薬が風邪薬程度になっているのでしょうか。
もちろん、認知症だけが病気ではありません。しかも、内臓だけではありません。
身体能力の衰えた老人は、よく転びます。若い時であれば、踏ん張れますが、「あれれ」と思いながらも倒れます。老人は骨が脆くっていますので、簡単に骨折します。骨折をして寝ていると、筋肉が衰えて、骨折が治っても歩けなくなる老人が多くいます。運動ができなくなると、内臓にも影響します。
老人にとっては、医療費は不可欠の生存条件です。老人用の施設に入所する費用も欠かせません。医療にしても、施設にしても、必要になるのがカネです。
しかし、これから老人になる人達は、そのカネがありません。
私が30代40代50代の頃に、老人になった時の自分が想像できていたかというと、全く出来ていなかったと思います。
多分、誰でも、そんなものだろうと思います。
でも、現実は、決して、楽観できるものではありません。
カネが全てだとは言いませんが、老後人生はカネ次第だと思います。
カネがない人は、ともかく、健康が第一です。ピンピンコロリは、冗談ではなく、理想とすべきだと思います。少なくとも、私は、そう思って頑張っています。
病気になって、仕事が出来なくなり、貯金もない。
多くの老人が、絶望の淵に立つのは、不思議なことではありません。
このデータを見ただけでも、お先真っ暗だと思います。
3000万人の老人の全部が、そんな境遇になるわけではありませんが、仮に1割の老人が絶望の淵に立つとしたら、300万人の老人が、そうなるのです。
300万人という人数は半端ではありません。
人間にとって、絶望は、死への扉に手をかけるようなものです。
決して、いいことはありません。
皆さんの将来には、地獄が大きな口を開けて待ち構えているのです。
「何とかなる」のでしょうか。いいえ、「何ともならない」と思います。
「お上」が面倒見てくれるのですか。いいえ、「お上」は「自己責任でお願いします」と言っています。
生活保護制度があるじゃないか、と思っている方もいるでしょう。では、そんな財源、どこにあるのですか。この国は「衰退国家」なのです。この先、税収はどんどん減少するのです。生活保護費に回せる財源なんてありません。
そもそも、生活保護費による生活は、悠々自適の生活ではありません。最低限の生活を保障するのが生活保護費です。しかも、この最低限の基準は、いつでも変更可能です。
この国は、もう経済大国日本ではありません。
「国力衰退」という現実から、目を逸らすべきではないと思います。

文字数が多くなりましたので、2回に分けます。


2022-03-05



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