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記事紹介 33 [記事紹介]



3/21付 ダイヤモンドオンラインの記事を抜粋して紹介します。
筆者は 野口悠紀雄氏
表題は 日本のTPP交渉参加を、中国はどう見ているか?



[前略]
最初に注意すべきことは、「TPPはアメリカのアジア戦略の一部だ」ということである。
日本では、「TPPとは貿易自由化協定である」と単純に理解されていることが多い。しかし、これは自由化協定ではなく、「ブロック化協定」である。これは、実質的には日米のFTA(自由貿易協定)であり、その目的は、太平洋経済圏にアメリカ流の経済ルールを確立し、中国の成長をけん制することだ。
日本は、安全保障の面でアメリカに依存せざるをえないという事情があるので、TPPがアメリカの太平洋戦略である以上、それには参加せざるをえない。これは、最初から課されている制約条件である。つまり、「経済的な利害得失を考慮してTPPに参加するか否かを選択する」というオプションは、日本には最初から与えられていないのだ。
ところが、それでは国民を納得させることができない。そこで、TPPに経済的な意味付けを与えようとする努力がなされる。
しかし、純粋に経済的に見れば、TPPにはほとんど意味がないのである。とくに、「日本の輸出を増やす」という観点から見ればそうだ。
政府の試算がそれを明確に示している。TPPはGDP(国内総生産)を0.66%増やすというのだが、これは、「10年後に」ということだ。単純に年率で考えれば、GDPのわずか0.066%ということとなる。これは、「誤差の範囲」と言ってもよいオーダーのものだ。つまり、TPPがGDPを増加させる効果は、ほとんどないのである。
こうした結果になるのは、アメリカの関税率は(トラックなどを除けば)すでにかなり低く、またアメリカ以外の参加国は経済規模が小さいので、日本の輸出に与える影響はきわめて小さいからだ。
もちろん、農産物などの市場開放がなされることは、日本の消費者の立場からすれば望ましいことである。しかし、市場開放が目的であれば、日本が自主的に行なえばよいことである。関税以外の点での日本開国も、TPPによらなくともできる。それらは、日本が自発的に行なえばよいことだ。
[中略]
今回の日米共同声明に至るまでの経緯を見ると、日米両国とも、国内の利害調整に配慮しつつ、形式的にTPP交渉に入ることを最優先してきたことが分かる。
どちらの政権にとっても、それぞれの「お家の事情」がある。すでに述べたように、アメリカは、アジア戦略の一環として、日本を含むTPPを形成したい。しかし、オバマ大統領の再選には、自動車産業が集積するアメリカ北東部の支持が重要な役割を果たした。だから、自動車産業の利益には配慮せざるをえない。乗用車の関税はすでに2.5%と低いが、トラックは25%である。
他方で、安倍政権としては、TPPを安倍経済政策の「3本の矢」の第3番目である「成長戦略」の一環として位置付けたい。しかし、当然のことながら、農産物の市場開放に反対する農業関係者に配慮しなければならない。
だから、日米どちらの政権も、これらの点に配慮して実害を少なくしつつ、政治的な成果と見せることが目的なのだ。
すでに述べたように、TPPはもともと経済的にはあまり意味がないものだ。それに加えて自動車や農業が例外になれば、経済的にはほとんど意味がないものになるだろう。
[中略]
日本では、TPPを貿易自由化協定と見なし、これが製造業の輸出を増やすという経済効果が強調されている。その半面で、これが国際政治的にいかなる意味を持つかが議論されていない。これは、大きな問題だ。
とくに重要なのは、中国の反応である。TPPを中国の立場から見るとどういうことになるのか。これが日本では十分に議論されていない。
第1に、中国は、TPPをアメリカ極東戦略の一部と位置付けている。アジア太平洋地域でのアメリカの戦略の一環であり、軍事戦略と同列のものだというわけだ。
第2に、関税撤廃というよりは、アメリカの取引ルールを押し付けるという面を重視している。そして、その面においては、中国の現在の経済体制では適合できないとの認識がある。
第3に、中国は、日本が対米関係を緊密化することを快しとしない。日中韓FTAを先行すべきだと考えている。
このように、TPPは国際政治がからむ非常に複雑な問題である。
日本でこうした視点が欠けているのは、多分、政府の説明を記事化することが新聞報道の中心になっているからだろう。中国のほうがTPPの性格を客観的に見ている面もある。
日本のニュースを外国のメディアから見るのは重要な視点だ。ところが欧米のメディアは、あまり日本に関心を示さなくなってしまった。他方、中国にとっては、日本は重大関心事だ。だから、今回の交渉参加決定に関しても、多くの報道が行なわれている。
[後略]




余談です。
野口悠紀雄氏は中国語にハマっていて、少し読み辛いことがありますので、中国語の部分は外しました。野口氏はかなりの年齢だと思いますが、中国語に挑戦される熱意には敬意を表するものであります。
石田の意見とは違いますが、野口氏の意見も国内で流布されている官制意見とは違いますので、ここに取り挙げました。私には、官制報道より野口氏の意見の方が納得できます。
記事の中の文章に、私なりの解釈をしてみます。

「TPPがGDPを増加させる効果は、ほとんどないのである」
石田は、政府発表の数字を疑問視しただけでしたが、野口氏は効果がゼロだと書いています。プラス効果が期待できないとすると、この先、マイナス効果が国民の前に突きつけられることになり、結果的には、多くの国民が落胆することになるでしょう。安倍氏が、目的を捻じ曲げて華々しく上げた花火ですから、その反動はやってきます。最初から、これが「みかじめ料」だということを発表しておけば、問題は軽減されると思うのですが、それは庶民の浅はかな思慮に過ぎないのでしょうか。
安倍政権を汽車に例えると、これまでの問題を引っ張っているだけではなく、機関車役の安倍氏が新たな問題を積み込んでいるように見えます。時間が経過すれば重いと感じる荷になると思われます。デフレ脱却も金融緩和も財政出動もTPPも、いつか、動きのとれないほどの重さになって、安倍号にとってはブレーキとなります。

「日本では、TPPを貿易自由化協定と見なし、これが製造業の輸出を増やすという経済効果が強調されている。その半面で、これが国際政治的にいかなる意味を持つかが議論されていない」
これは、官僚による言論統制の結果です。官僚達は、既に、どこに、どんな利権が生まれるかを調査済みだと思います。その利権を獲得するために、どのような世論操作がベストなのかも調べてあるでしょう。TPPを国際政治上の産物だとすると不都合があり、政治家の利害とも一致したものと思います。

「日本でこうした視点が欠けているのは、多分、政府の説明を記事化することが新聞報道の中心になっているからだろう」
日本の新聞は「お上」の広報宣伝用の新聞だ、という評価はネット上では常識になっていますが、一般的には、まだ新聞を信用している人が数多くいるのが現状です。ここは、日本ですから、仕方ありません。いくつもの新聞社がありますが、赤旗を除いては、どこも同じようなものです。
世論調査の数字も信頼できないと何度も書きましたが、現実に新聞報道や世論調査の結果を信じている人は多いと思います。いつも書きますが、メディアの罪は大変重いと思います。

「日本のニュースを外国のメディアから見るのは重要な視点だ。ところが欧米のメディアは、あまり日本に関心を示さなくなってしまった」
世界では、日本の問題は記事になりません。このことは、野口氏の記事だけではなく、いろいろな方の意見として聞くことがあります。世界は、衰退国家日本には関心がないのです。今は、反面教師としての価値しかありません。「日本化」と言われることを世界は嫌います。


アメリカとFTAを結んだカナダ、メキシコ、韓国が、マイナス効果に苦しんでいることは世界の多くの国が知っています。
TPPは、アメリカンルールの押し付けなのですから、この際、交渉の席上でアメリカ合衆国の日本州にしてくれという条件を提示してみてはどうでしょう。そうすれば、全ての規制を外すことができます。社員の首切りも簡単ですし、保険も問題解決です。軍事施設も自由に設置できます。
ただし、アメリカは承知しないと思いますので、強力な武器になると思います。それくらい腹を据えて交渉する覚悟が求められますが、日本政府にその覚悟はあるのでしょうか。そんな交渉力はありませんよね。
TPPは、アメリカの利益になり、日本は貧乏籤を引くだけです。そして、最終的には日本を切り捨てるという日本カードが切られます。それが、13年後だとすると、これも財政破綻や巨大地震と時期が重なります。
どうしましょう。


2013-03-24



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