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記事紹介 18 [記事紹介]



JBPRESSの10/18付の記事を紹介します。
表題は「備えも訓練も吹き飛ばした判断ミス」
副題は「原子力防災技術者が語る福島原発事故の深層(その2)」
筆者は烏賀陽 弘道氏です。
少し長文です。




原子力防災の元実務技術者である永嶋國雄さん(71)へのインタビューをお届けしている。永嶋さんの名前を教えてくれたのは、『原子力防災』の著者、松野元さんだった。永嶋さんは、松野さん同様、原発事故に備えた防災システムの設計に関わり、危険を警告していた人物で、『原子力防災』の共著者にもなるはずだった。
 政府は巨額の予算を投じて、原子力発電所のシビアアクシデントに対する防災システムを構築していた。しかし、3.11ではそうしたシステムがまったく生かされなかった、という話を前回聞いた。今回は、国が実施していた「原子力総合防災訓練」の欠陥や、事故発生後に官邸と現場で積み重なった判断ミスなどについて話を聞いた。

非難範囲を10キロ圏内に抑え込むべきだった東電の責任

──国は「原子力総合防災訓練」を3年に1回やってるはずなんですよ。2008年には福島第一原発でやってるんです。菅内閣の閣僚だって2010年に浜岡原発を舞台にやってる。訓練をしたのに、なぜ本番ではまったくできなかったのか、不思議なんです。
 「地震の大きさは事前には決められません。が、原発災害は、放射能が出る量を勝手に決めてしまえる。要するに『放射能の出る量はこの程度にしておこう』と想定を決める。それが政府の決めた『防災指針』の『避難範囲10キロメートル』というやつです。『10キロメートルに影響する量でやりましょう』と勝手に決めるんです。ところが、今回は現実が30キロメートルを超える拡散になったから、もう何もできなかった。逆に10キロメートル内だったら、菅(直人)総理も出る幕が全然なかったかもしれない。訓練はみんなそれでやってるから」
──2010年の訓練では「10キロメートル内避難」でした。それは「10キロメートルが避難しなくてはならない事故の規模を想定して訓練をやりましょう」ということですね。逆立ちしたロジックですね。
 「どこに責任があるか。電力会社は10キロメートルだって100キロメートルだっていくらでも出せるんですよ。その時の電力会社の役割としては『事故が起きても避難は10キロメートル以下に抑える』という責任でずっと今までやってきてるんです。これは、世界どこでもそうなんです。電力会社が絶対に10キロメートル以下に抑える。だから国とか県とか全てが、10キロメートルに相当するシナリオで防災体制を組んでるわけですよ」
──実際に「防災指針」のEPZ設定は「8~10キロメートル」と書いてあります。
 「それを東電が守れなかったんですよ。だから国には責任はないと思う」
──言い直しますと、原発敷地内部のコントロールは電力会社がやるというのが前提ですよね。敷地内での事故を、10キロメートル圏内で避難する程度に抑えられなかった電力会社に一義的に責任があるということですか?
 「PBSの予測演算では、ベントもできなかったら、どれぐらいヒートすると思いますか? 避難範囲が100キロメートル超えてたんです。ベントすると30キロメートルぐらいに抑えられた」
──最悪のシナリオでは170キロメートルがありました(注:細野豪志首相補佐官の著書『証言』より)。実際には何キロくらいなんですか?
 「いろんなシナリオがあるんだけど、170キロメートルというのもありますね。原子力委員長・近藤駿介が出した」
──それは、1号機2号機3号機全部が、格納容器が破れてしまった場合のことでしょうか?
 「1つの原子炉で格納容器が破裂すると、1つの原子炉で100キロメートル超えちゃうんですよ。実際はそれでも計算上いろんな現象、正確に演算するとそれくらい。あとは、原子炉にある放射能全部出るって仮定しちゃうと、1000キロメートル超えちゃうんです」
──1000キロメートルっていうと関西よりさらに西も入りますね。
 「それぐらい超えます。原子炉にある放射能を全部出すとそうなっちゃう。でも、実際に格納容器が破裂したって放射性物質の大部分はそこに留まってるんです。 そういうシミュレーションをして計算していくと、100キロメートル超えるくらいに収まる」
──東京~福島第一原発が大体230キロメートルくらいです。100キロメートルというとその半分ですね。
 「その時に、いくらなんだって(原子炉内の放射性物質が)全部出るなんてのはおかしな話です。物質にもよるけど、プルトニウムとかストロンチウムなんかはなかなか出にくい。そういうのを正確に計算していくと、1000キロメートルの10分の1で成り立っている。それでさらに運転方法でそれを抑え込めば、小さくできるんです」
──つまり、最悪の演算をすれば避難範囲は1000キロメートルを超える。が、現実にはそれはほとんどありえなくて、運転や何らかの予防措置によってそれを小さくできる。そういう意味ですね?
 「それで、電力会社はいろんなことを考えて、絶対に10キロメートル以上には広げないというものが電力会社の役割だった。これはずっと昔から、その前提でやってきたんです。だから官邸のところに、なぜ10キロメートル超えたのかと批判が集まった。それで菅総理も頭にきた。東電は役割を何もやってないじゃないかと。しかも東電は『事故を抑えます』と言わなかった。だから菅総理は『バカなやつらだ』『自分が指揮する』ってヘリコプターで現場へ飛んだんでしょう」
──じゃあ「過剰介入」ではないという意味ですか?
 「もちろん最終責任は総理大臣にある。戦争と同じです。最高責任者は総理大臣ですよ。総理大臣が保安院や東電に『どうやって抑えるんだ』と聞いても一向に答えられない。だから『こんなアホなやつらではどうしようもない』と菅総理は『俺が行かなきゃ』と勘違いした」

原子力安全・保安院は東電より技術がない

── 一義的には10キロメートルに抑える責任が東電にあったとします。とはいえ、原子力安全・保安院も何かすべきだったと、私は思っています。それはどうなんでしょう?
 「保安院は東電より技術力がないんですよ。だからどうしていいか分からない。それが実態なんです」
──電力会社は永嶋さんの研究や警告を知らなかったのでしょうか。
 「読んでいるけど、いかにそれを抑えこもうかと思ったのでしょう。東電は何も言ってこない。が、電事連からはレスポンスがあって、永嶋さんの言うことを参考にさせてもらえませんかってね」
──電事連が反応したんですか? 逆みたいな感じがしますね。
 「電事連は明らかに東電が悪いと分かってたから。専門家は分かってるんです、東電が何をしたか。それで、いま関電が運転再開を自信を持ってやりますと言っている。彼らは自信があるんです。関電は『普通の技術者だったらああいうことしなかった』って思っている。だから関電が運転再開をやるのは、技術的に見るとおかしいことではない」
──関電の方が東電より技術力が高いということですか?
 「技術力は似たようなもんなんだけど、あのようなことはしないと思っているでしょう。何かの事故があれば、すぐ勉強するでしょ?」
──なるほど。福島第一原発事故を研究して「あんなことはしない」と言っているのですね。
 「それともう1つ、プラントの大きな特徴の違いがある。福島第一発電所の『沸騰水型』BWRっていうのは、緊急時に原子炉を冷やす時に、原子炉に直接海水を入れるんです。これだと海水で原子炉系全部やられて廃炉になっちゃう可能性が高い。(関電・大飯原発の)『加圧水型』PWRっていうのは、蒸気発生器の2次側に入れるんです。原子炉には海水を入れなくていいんです。そうすると原子炉をぶっ壊すことにならないから、安心して入れられるんです」
──そうか。海水を放り込んで冷やしても、原子炉は壊れないから躊躇しない。
 「だからもし事故が起きたら、ただちに海水を注水します。そういう練習もしてます」

事故対策の明らかな運転ミス

──要するに「事故が起きたら遠慮なく海水をぶち込めます」「ですから事故は拡大しません」と関電は言える。それでは、永嶋さんのような原子力防災を専門とする技術者から見て、福島第一発電所事故の対応でおかしいのは何でしょう。
 「原子炉を壊さない運転操作を十分できるんです。これが1号機にしろ、2号機3号機にしろ、明らかに運転操作がおかしい。例えば1号機のIC(非常用復水器)の運転ミス。これは事故調でも指摘されてた。国会事故調も政府事故調も素人的な技術屋が評価してるんだけど、彼らですら『いくらなんでも、そんなことはないだろう』と言っている」
──国会事故調の報告には「ICが作動してると勘違いしていた」というくだりがあった。あまりにノイズが多くて、コントロールボードが狂ってしまった。動いてるものだと思っていたら、止まっていた。あるいは、誰かが勘違いしてマニュアルで止めてしまった。そう書いてあった。ありうるのでしょうか。
 「地震が起こった後、すぐにICを動かしている。だけど、ICは制御が非常に難しくて、圧力温度が急激に下がります。下がるためにそれを一旦止めたんです。で、止めた後に津波が来た。大体3時間くらい止めても、原子炉はまだ冷却できるような状態にあって、炉心は露出しないです。炉心が露出すると燃料棒が破損する。その1時間弱後に津波が来たんですね。あと2時間くらい余裕があるので、その間にICを再起動すれば冷却できたんです。一切問題なく抑えられたんです。ところが、津波が来たあとICを再起動させる運転操作をした形跡がないんです。いろいろなデータや事故調の報告を見ても。その時の条件になるには1時間経ってるんだから、あと2時間以内に絶対に、ICを回復するっていうのは最優先でやるべきだったんですよ。どうもそれをしてなかった」
 「だいたい午後4時に津波が来たんですよね。そうすると7時くらいの時点でもう炉心が露出しちゃっていた。それからあと、1時間か2時間で燃料棒が破損します。実際9時頃になると格納容器の線量が上昇した。だから9時頃にはかなり燃料棒が破損しちゃってる」
 「原子炉建屋内、格納容器の中には当然あった。原子炉の建屋内は線量ががーっと上がった。そうすると原子炉建屋に行って、いろんな装置を動かすのが大変になった」
──思い出しました。当時、東電は「冷却装置が作動してる」って発表した。「じゃあ、なんで線量が上がっているんだ」とあの時問題になっていた。東電の会見でも「冷却装置か線量計か、どっちかが間違ってるんじゃないのか」って散々言われてました。

PBSが起動していれば運転ミスもなかった

 「それはPBS動かしていれば全然分かっちゃう」
──えっ! そうなんですか?
 「地震の後、起動させたICを止めた。止めた後、再起動していないことに気づかなくても、PBSで計算してみるとズレが出るでしょ。変だと気づく」
──しかし、現場は当時「ICは動いてる」つもりだったのでは?
 「止めた後、再起動したという話がどうもない。止めておいても大丈夫だっていうふうに、運転側が思ってたようですね」
(烏賀陽注:逆に言えば、PBSの存在が明らかになれば、ICの運転ミスも証明されることになる)

東電は崩壊熱の怖さを知らなかった?

──つまり「見落とし」じゃなくて「止めておいてもいいんだ」と思った。止まってるのを知っていながら放っておいたということになりますね。
 「止まってるのは分かってるけど、どれぐらいの時間まで再起動しなくてもいいかということが、どうも分からなかったということでしょう。事故当時、原子炉設計のベテランから私にメールが来た。『崩壊熱が出てるが、崩壊熱だったらそんなに燃料が溶けることはないんじゃないか』『マスコミが騒いでるのはおかしい』と。原子炉を設計しているベテランですよ。そんな人でさえそう思ってる。東電の運転員はあまり勉強していないのか、そういうことが分からない」
──永嶋さんは著書や講演で「崩壊熱こそ怖い」とおっしゃっていますね。
 「原子炉を止めた後でも、注水がないと、3時間後には燃料が露出して、さらにあと1時間で燃料が溶け出す。崩壊熱です。そういうことがPBSのデータベースに入っている。常識としてデータがあるんですよ」
──PBSを見ればこれからどうなるかが時系列で分かっていたはずだ。そうなれば、2時間もICが止まっているのはやばいんじゃないのかってことが分かる。つまり、PBSは「進行予定表」みたいなものですね。
 「そう。そういうのがデータベースとしてある」

原子力安全・保安院はPBSが動いているのを知っていた

──それぞれの炉についていろいろな条件の下で、スケジュール表を見せてくれるわけですね。
 「これははっきりしてないんだけど、JNES(原子力安全基盤機構)はPBSの計算をしたんですよ。原子力安全・保安院に持っていったんですよ。だけど保安院はそのデータの意味が分からず、無視した。全部東電の情報に頼るんだと。JNESの人は分かっていた」
──えっ! 原子力安全基盤機構はちゃんとPBSを動かしていたんですか?
 「いちばん最初の政府発表での炉心溶融のデータは、PBSのデータなんです。3月11日の夜ぐらいの時点で政府発表があったんですよ。その中にその数値が出てます」
──思い出しました。福山(哲郎)官房副長官の『原発危機~官邸からの証言』(ちくま新書)にも出てきます。
 「あれはPBSに頼ってます」
──分かるんですか?
 「それしか方法がない。JNESが運用してるPBS以外に短時間で計算を出せるものがないんです。別の組織があって、そこでも同じような計算コード使ってるんだけど、それをやるためにはまずプラントのデータを入れないといけない。それには膨大なデータ使いますからね。何週間もかかっちゃう。東電がメルトダウンを発表したのが5月半ばごろでしょう? 同じような計算コードを使って、東電が自ら計算したんです」

シビアアクシデントの予行演習は数百回やった

──そうだったんだ。あれは東電が一からやり直したんだ。だからメルトダウンを認めるのに時間がかかったんだ。
 「そのくらい時間食うんですよ。だからPBSはそういうことを事前にやってある。いちばん重要なことですが、2000年ぐらいの時点で、そういうシミュレーションをしょっちゅうやってあるんですよ」
──え? 誰がですか?
 「NUPEC(原子力発電技術機構)の職員です。松野(元)さんや私が、です。その時に、こういうときにどういう操作したらいいかっていうのを、皆でトレーニングしてたんですよ。だから松野さんと私だったら『こういうふうにしたらいいっ』てのがすぐ分かるんです。その時やった経験があるから」
──何回くらいそういうシミュレーションをやったんですか?
 「回数からすると、まぁ仕事やりながらヒマな時にやってるんで、週に2~3回ぐらいやってました。それを何年間かやってました。だから数は何百ですよ」
──え! 週に2~3回を何年もやってらっしゃるんですか? 全国の54基の原子炉に関してですか?
 「そうです。だからそこにいた人だったら、だいたいすぐ分かってしまうんです」
──そうか。松野さんも永嶋さんもお話が自信に満ちているのは、そういうのを繰り返しやってらっしゃるからなんですね。
 「だから事故調査委員会報告を読むと、どれがおかしいかってのはすぐ分かるんです。これは、嘘ついてる、これは隠してるなって」
──シミュレーションを何度もくり返していらっしゃったというのは、報告書か何かをまとめようとしていらっしゃったんですか?
 「そういう緊急事態になったときに、本来は我々が国をちゃんとサポートして、それをちゃんとやらなきゃいけない、JNESとして。それがJNESの役目なんです。そのためには訓練をやってなかったらできないんです。1~2時間の余裕で結果を出していかないと、うまい操作ができない」
──なるほど、万一の事故のときに備えている。
 「それをできるように、いろんなシナリオについて訓練してるわけです」
──どこで何が起きても「ああ、あれならやったことがある」でなきゃダメってことですね。
 「まぁ、54基全てやるってのは大変だから、あとは類型化します。同じ出力、同じ原子炉の型だったら同じ特性だから。54基全部やってたわけじゃなくて、代表するとなると20基以下ぐらいなんです」
──つまりその20基をシミューレーションしておけば「福島第一発電所の3号機はこうだからこう」というふうに決まってくるわけですね。
 「福島第一発電所だったら2、3、4号機はまったく同じです。1号機は出力が小さい。違ったものだけについて全部やってた」
──本当に備えは十分にしてあったんですね。
(つづく)




余談です。
原子力専門家の永嶋國雄さんへのインタビュー記事です。一回目の記事を紹介したかどうかを憶えていませんが、JBPRESSで探せば一回目の記事も読めると思います。
こんな話は、新聞でもテレビでも伝えてくれません。
ただし、永嶋國雄氏の想定する事態に対処できれば、それで安全だとは、私には思えないのです。先ず、その対策は有効に機能するのでしょうか。また、想定外の事態は起きないのでしょうか。想定外のことまで心配すれば何も出来なくなると言われると思いますが、とても心配です。
なぜ、こんな心配をするのか。
それは、事故が起きた時のダメージが大きいことによる心配です。例えば、尼崎のJR事故も悲惨な事故でした。犠牲になられた方々は戻ってきませんが、鉄道は復旧しJRの電車は昔のように走っています。それに反し、福島はこの先100年は住むこともできない場所を抱えることになりました。事故の質が全く違うのです。
最悪の場合、原子炉が完全に爆発したら、放射性物質は1000Kmも飛散すると専門家の方も言っているのですから、日本国土の半分は汚染されることになります。危機管理は、最悪の事態を想定するものですから、この1000Kmは視野に入れざるをえません。
ここで、たった一発のミサイルという少し無理のある設定を考えてみましょう。
原子力発電所の危機対策に、戦争やテロは想定されていると聞いています。でも、その対策が行われているとは考えられません。それは、原子力発電所の構造や施設の配置を見ても明らかです。イランや北朝鮮が核施設を地下深くに設置しているのは、攻撃を防ぐためです。日本では、原子力発電所にパトリオットが装備されている訳でもありません。
世界情勢は、いつ、どのように変化しても不思議ではありません。日本の外交は劣悪ですし、日本の常識は世界の非常識ですし、日本の自虐姿勢がすぐに変わるとも思えません。日中間も日朝間も日韓間も日ロ間も良好な関係とは言えません。中国も北朝鮮も韓国もロシアも、日本は脅しをかければ、尻尾を巻くと考えていますし、現実にそのような関係にあります。日本国土は、その四カ国のミサイルの射程圏内にあります。脅しのつもりのミサイルが、計器故障で日本に飛んで来ることはあり得ない話なのでしょうか。ミサイルの心臓部は電子機器です。そして、電子機器にはトラブルが起きるものなのです。
運悪く、原子力発電所の制御棟にミサイルが直撃した時でも、原子炉は制御可能なのでしょうか。あの福島の免震重要棟を見る限り、それは期待できないと思います。「まさか、制御室にミサイルが直撃するなんて。想定外です」と言っても後の祭りです。一発のミサイルによる被害は、核弾頭でなければ、そして落下地点が山の中であれば人的被害はないかもしれません。でも、原子力発電所に、たまたまであっても落下した場合には、その二次被害が核兵器以上の被害になる可能性もあるのです。日本では、国際紛争など起きないと断言できる方がいるのでしょうか。平和ボケしているこの国に、原子力発電所は分不相応な施設なのではないかと思っています。
そんな危険と二人連れで、この先何十年も生活を共にする必要があるのでしょうか。いや、私達にその事故を受け入れる覚悟はあるのでしょうか。体験者の福島の人達は、どう答えるのでしょうか。
関西電力は事故の被害を押さえこむ自信があるように書かれていますが、それがどれほど頼りになるものなのでしょうか。東京電力のように失敗する可能性は絶対にないのでしょうか。関西電力の社員は超人なのでしょうか。私には、そうは思えません。東京電力の社員は他の電力会社の社員より優秀だと思っていたでしょうし、まだその確信はあると思います。緊急事態に遭遇した時の人間の力は、事前に想定しているものとは違うものです。そう考えると、東京電力の失敗の方が現実的に見えるのですが、違うのでしょうか。
「失敗しました」の一言で終った時に、誰か責任の取れる方がいるのでしょうか。いや、どうやって、責任を取るのですか。最悪の場合だとしても、国土の半分が汚染された時、それはもう責任云々という問題ではないように思います。
確かに、この一発のミサイルという設定は確率的には低いものです。でも、1000年に一度の津波だって確率的には低いものだったのではありませんか。一発のミサイルや1000年に一度の津波を排除して、危機管理が成り立つのでしょうか。
この永嶋國雄氏の話は、政府発表や原子力村の学者達の話より遥かに現実的な内容ですが、これを読んでも原子力依存は国民にとって望ましい選択肢ではないように思います。彼の話からは、いろいろな対策が立案されてきたことはわかります。でも、現実にそれが何の役にも立たなかったということは、対策に無理があったと考えなければなりません。結果的に実行できなかった対策を立てているような技術は、使ってはいけないという事です。
念のためにお断りしておきますが、私が反原発の意見を書くのは、原発が余りにも危険で、余りにも高額な発電手法だからです。このことは、私も含めて国民は知らなかったのです。気付いた上で、それでも、尚、原発に頼るということは、確信犯になるということです。もしも、次の事故が起きた時、国民には受け入れる以外の選択肢はありません。これは、社民党や共産党のように、自己利益のためのお題目とは全く違います。自然災害の多発地帯にあり、国際環境も流動的であり、平和ボケしている国のあり方に安住し、利権優先の社会風潮にあるこの国で、原子力発電は手を出してはいけない分野だと思います。
原子力発電から撤退するデメリットは決して小さくはありません。でも、今、この国は身の丈に合わせた国にならなければ存続さえ危ぶまれる状態なのです。原子力発電からの撤退も、この国を象徴する出来事だとは考えられないでしょうか。
これは、原子力発電の問題だけではなく、私達はこれまでの価値観を問い直す時代に生きているのではないかと思えるのです。過去の延長線上で何とか辻褄を合せようとするのは、悪あがきに過ぎないように思えるのです。この国の政治も経済も社会も、文化でさえも限界を超えているように見えます。

私事ですが、私には助言してくれる専門家集団もいませんし、諮問機関もありません。その辺に転がっているただの庶民です。従って、私が得られる情報は決して多くはありません。また、専門の職業評論家ではありませんので、評論という作業に生活の大半の時間を当てているわけでもありません。
更に、得られた情報が正しい情報なのかどうかの検証もできません。
そういう意味では、私には紹介記事の信憑性を請け負うこともできません。
勿論、私の評論が全て正しいと言う積りもありません。
しかし、今は、石田の問題提起が世間の論調から外れているように見えるかもしれませんが、いずれ、このような議論をしなければならない時期は来るものと思っています。
この国は、どこを見ても、ヘロヘロで、ボロボロなんです。上っ面の議論で何とかなる状態ではありません。
出来るだけ早く、出来るだけ大勢の方がこの国の本当の姿に気付いてくれることを、心より願っています。時間は残されていません。


2012-10-23



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