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吾輩はサルである [評論]



ある老人の繰り言。
昔々、儂等のことをイエローモンキーと呼ぶ不届きな輩がいたと聞く。
儂等は、人間だとばかり思っていたが、近頃、都では、自分達を「サル」と称して自慢する輩がいるそうな。
永田町界隈に住むお偉い先生方が、自分達をサルだと自慢しているのであれば、人間がサルを選ぶとは思えず、儂等「下々」も、きっと、サルなのであろう。
日々、年々、衰退し続ける儂等の生活を見れば、どうやら、間違いなく、この国はサルの国であるようだ。

今日も、国力衰退について書きます。
「非正規労働者の増加」という言葉に報道価値がなくなって、どのくらいの年月が経ったのでしょうか。
急激な増加傾向は収まりましたが、着実に、今でも、増え続けています。日本の労働人口の約4割が非正規労働者になったのですから、もう既に、これが常態になりました。だから、報道価値が失われたのだと思います。
では、実際に、どのくらいの人が非正規労働者なのか、という数値を見てみましょう。
非正規労働者の多い企業ランキングという数値があります。
上位500社の企業名と非正規労働者数が表になっています。
その1位の会社は、スーパーでお馴染みの(株)イオンです。
社員数、42万人。非正規、26万人。正規、16万人です。非正規労働者率は、63%です。女性社員が多い業種ですから、仕方ないのかもしれません。
非正規労働者率が一番高い企業は、95.9%の東京個別指導学院という学習塾です。
500社中、約200社が、非正規労働者率50%を超えています。
500社中、非正規労働者率が10%未満の企業は、27社しかありません。
今の日本社会では、非正規労働者、当たり前、なのです。
問題は、非正規労働者と正社員の間に、賃金格差があることです。この賃金格差が、国力衰退と国民の貧困化を作り続けています。
労働人口全体の非正規労働者率は、38%です。男性の非正規労働者率が23%で、女性の非正規労働者率は、56%です。男性労働者と女性労働者の間にも賃金格差があります。
この数値は、日本の労働環境が、正社員から非正規労働者へ、男性労働者から女性労働者へと、より安い人件費に流れたことを示しています。企業は、自分の会社を守るために、労働者を犠牲にし、国力を衰退させる原動力として動いたのです。
ほとんどの企業が、開発や新規事業ではなく、「いっせいのーでー」と、賃金削減を選択しました。
これは、明らかに、延命策です。
日本経済が衰退しているのは必然的な結果だと思います。
日本経済は、今、延命の途上にありますが、そろそろ、その延命策にも限界が来ていて、将来展望は見通せません。そもそも、延命は、寿命を延ばしているに過ぎませんので、どこかの時点で寿命は尽きます。延命では、病気の治癒はできません。
3月に春闘の記事を書きましたが、春闘は大企業の正社員の賃金が対象ですから、春闘を話題にすることが間違っていると書きました。
今年の春闘では、これまでにない賃上げが行われたという結果になりましたが、物価上昇のほうが優勢で、実質賃金では、下落トレンドにブレーキはかかりませんでした。非正規労働者の賃金を上げた企業もあったようですが、ごく一部です。
多くの非正規労働者は、物価上昇に苦しんでいます。
つまり、国民の約半数は、更に、生活レベルを落とす必要に迫られたのです。
これが、この国の現状です。

その原因は、皆で「守り」に入ったために起きたものです。
その結果、国力衰退が進み、庶民の生活を圧迫しています。
そして、4月に、五公五民の話を書きました。
その中で、近々、六公四民の社会になると書きました。中には「六公四民」を「六公死民」と呼ぶ人もいますが、六公四民では、まだ、国民は餓死しません。
ただ、かなり、苦しい生活を強いられます。
増税と社会保険料増額の話題が盛んになり、現実になる日が近づいていて、六公四民は、最早、夢ではなくなりつつあります。
六公四民では百姓一揆は起きない、と書きましたが、政権交代の可能性はあります。
では、自民党政治が終われば、この国力衰退は止まるのでしょうか。
いや、逆に、政権交代が起きれば、国力衰退は加速されます。
さて、何人の国民が、その事を理解しているのでしょうか。
六公四民で「ヤケクソ」になった国民は、自民党政治に「ノー」と言うかもしれません。それが、自分の首を絞めることに気付きませんので、「あちゃー」という結果になります。
日本国民は、決して、馬鹿ではありません。
でも、この国の国民の皆さんは、絵に描いたような「無知なる国民」なのです。
どうして、既存の政党しか選択肢がないと思い込んでいるのか、不思議ですが、これも、無知の結果です。
これが、歴史と伝統に培われた国民の皆さんの実態です。
曖昧文化の中では、そのことに、全く、気付けません。
自分達が無知であることに気付かないのは、文化によるものですから、容易に気付くことが出来なくても仕方ないのかもしれません。だからと言って、知らないままであれば、皆さんの生活は、この先、更に壊れます。
古来より、「自分で自分を守る」ことの延長線上に、私達の生活はあります。国が機能していないのであれば、それを機能させるのは、国民の皆さんの責務です。
今は、国も、国民も、責務を果たそうとしていません。
なぜなら、国も、国民も、その事を知らないからです。
この先、国民負担率の増加という現実に直面します。当然、国民は不満を溜め込みます。ただ、その不満を解消するためには行動が必要になりますが、無知な国民には、政権交代という行動くらいしか思いつきません。どの政党に政権を託しても現状を変えることが出来ないにも拘わらず、政権交代したら「何とかなる」と思ってしまうのです。
自分で何かを創造するという習慣はなく、与えられた選択肢の中から「まし」なものを選ぶという習性があります。これは、長年、私達が「下々」だったことからくる習性です。
どうぞ、目先の原因に飛びついて、「ヤケクソ」になって、政権交代に突き進んでください。
地獄への階段を1段ずつ降りるという自民党政治を変え、数段ずつ階段を駆け下りる野党連合政権を実現してみてください。その痛みは、多分、現実に遭遇してみなければ理解できないのだと思います。ただ、どっちにしても壊れるのですから、比較すること自体、意味を持ちませんが。
1段ずつか、数段ずつか、の差はありますが、階段を下っていることには変わりません。
どの政党も、国力衰退を止める処方箋を持っていないのですから、どうすることも出来ません。いや、そうではありません。国民の誰一人、処方箋を持っていないのです。

冒頭で老人の繰り言を書きましたが、それは、私達に原因があるように思えます。
国会議員の醜態は、私達の姿を鏡に映したものなのです。よく、「国民にも」責任があるという言い方がされますが、この認識は間違っています。国民がサルであれば、そこから選出される政治家がサルであるのは当然であり、その責任は「国民にしか」ないと思います。
つまり、国民の皆さんが、「無知」という名のサルの集まりなのです。なぜ無知なのでしょう。耳を塞ぎ、目を覆い、口を塞いでいる日光東照宮の三匹のサルが、私達の姿そのものです。そうです。私達は、今も、江戸時代を生きているのです。
だとすると、国民の皆さんが変わるしか、この苦境を脱することはできないのではありませんか。
どうか、そのことに気付いてください。
皆さんは、馬鹿ではありません。ただ、ただ、知らないだけなのです。
国の責務は、国民生活を守ることです。
では、国民生活は、守られていますか。
いいえ、少なくとも、非正規労働者の皆さんは貧困に苦しんでいます。
それだけではありません。
五公五民でも生活は苦しいのに、六公四民へと移行する現実が目前に迫っているのに、それでも、皆さんの生活は、国に守られているという実感を持てますか。
賃金の低い非正規労働者がこれほど増えて、皆さんは、なぜ、黙っているのですか。
皆さんは、国の責務が国民生活を守ることだということを、何となく、漠然と、曖昧なまま、知っていると思っているかもしれません。でも、知っているつもりになっているだけでは、知っていることになりません。皆さんは、行動に移せるほどの明確な責務を知らないのです。これが、無知です。
皆さんの生活が苦しい原因は、国力が衰退しているからです。
その原因の原因は、皆さんが無知だからです。
そして、その原因の原因の原因は、皆さんが曖昧文化の中に安住しているからです。
無知ほど怖いものはありません。

責務は国にあるだけではありませんので、別の責務も見てみます。
電力会社やガス会社を一例として見てみましょう。
今の物価上昇の大きな部分を占めているのが、光熱費の高騰です。個人個人の電気料金やガス代が高くなっているだけではありません。電気やガスを使って物を作っているのですから、私達の食糧や日用品も上昇しています。
しかし、電力会社やガス会社は殿様商売を続けています。
電気料金やガス代が、どんなふうに決まっているか、知っていますか。
あらゆる経費を積算し、利益を上乗せして、販売価格が決まります。
この「あらゆる経費」の「あらゆる」に、電力会社やガス会社の旨味があります。
電力会社やガス会社は、絶対に倒産することはありません。必ず、利益が出る仕組みになっているからです。
電力会社が独禁法に違反して、課徴金として1000億円を徴収されます。
でも、電力会社にとっては、何も問題はありません。それらしい経費を計上すれば、電気料金として消費者から回収できるからです。
公共インフラと呼ばれる事業を運営している企業は、潰れません。
潰れたら、国民が困るからです。
では、公共インフラと呼ばれる事業を運営している企業の責務は、他の一般的な企業と同じ責務しかないのでしょうか。
違うと思います。
電力会社やガス会社は、国民生活を守るために、安価で、安全で、安定した電力やガスを、持続可能なシステムで、供給する責務があると思います。
だとすると、海外の原料に頼るのではなく、人体に危害を与えるような危険なシステムではなく、日本独自のシステムを構築しておく責務があったのではないでしょうか。
公共インフラの「公共」とは、そういう意味があるものと思います。
言葉の定義が曖昧なために、欲が優先し、いいとこ取りをしてきたのが、今の公共インフラなのだと思います。全ての人ではないと思いますが、電力会社やガス会社の社員は、総じて偉そうに振舞います。自分達は選ばれし者なのだという自負があるのかもしれません。「俺様は、〇〇電力の社員様だぞ」という態度の人が多いと聞きます。国会議員の先生様と通じるものがあります。責務も果たしていないのに、どうして勘違いできるのか不思議ですが、これが、日本の歴史と伝統なのだと思います。
国会議員の先生様も、電力会社やガス会社の社員様も、先ず、責務を果たしてください。
もちろん、完璧にとは言いません。
しかし、完璧を目指した努力はあったのでしょうか。
言葉の定義がなく、明確な責務がなく、私達は「なあ、なあ」「まあ、まあ」でやってきたのです。
確かに、「なあ、なあ」「まあ、まあ」は優秀な手法だと思います。
しかし、この「なあ、なあ」「まあ、まあ」にも、限界があったのです。
そのことに気付く必要があります。

公共インフラ企業だけではなく、多くの企業が、いや、そこで働く多くの日本人が、「自分さえよければ」「俺には関係ねぇ」という道を選びました。国としての「目的」がなく、皆が「守り」に徹したことも影響しました。その結果が国力衰退です。
従来の仕組みの延長線上には、日本の豊かな未来はありません。
それが、今、徐々に、形になって出てきているのです。
それが、国力衰退です。
国力衰退を止め、反転させるのは容易なことではありません。でも、それを実現しなければ、私達の未来はありません。
原因の原因の原因を見つけ、それを克服するしか道はないと思います。


2023-05-01



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