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日本再生のステップ [評論]



今日も、記事を紹介します。
大前研一氏の記事です。
最近では、日本の賃金が上昇していないことを多くの方が言うようになりました。
失われた10年という言葉が古くなり、最近は、誰もが、失われた30年と言います。
少しずつ現状認識が広がってきているということだと思います。
今日、大前氏の記事を紹介するのは、彼が「国力衰退」に言及しているからです。
口には出さなくても、多くの方が、漠然と「国力衰退」を認識するようになりました。
しかし、大前氏だけではなく、的確な処方箋を提示している方は、いません。
いや、岸田総理を始めとして、それらしき提案をする方はいますが、とても、処方箋になるような代物ではありません。
日本の病は、軽傷ではありません。生死にかかわるほどの重症です。
その点の認識は、まだ、欠けたままです。
誰もが、改善や改革で何とかなると思っているのです。
成長戦略やイノベーションや表層的な構造改革で何とかなる、と思っているのです。
無理です。
日本の処方箋は、根っ子を変える、文化の革命しかないと思います。
私が、文化とか歴史とか国体のことを書いているのは、根っ子を変えないと、この国は沈んでいくだけだと思うからです。日本が衰退している原因は、民主主義風王政並立封建制度という国体にあると思います。それは、2000年の歴史と対峙しなければならないということです。こんなこと、誰も言いません。国力衰退の原因が曖昧文化だなんて誰も気付きません。でも、原因は、そこにしかないと思います。
実に多くの方が、「何とかしたい」と思って努力してきたと思います。
しかし、トレンドは、全く、変わっていません。
それは、根っ子の原因に気付いていないからだと思います。
文化とか歴史とか国体は、目には見えません。
それは、空気が目に見えない存在であることと一緒です。
ですから、そのことに気付いてくれている人がいません。
「国力衰退」に言及してくれたことは、一歩前進ですが、それは、ほんの一歩に過ぎません。
根っ子に気付くまでには、まだ、長い道程が必要です。
その間、どんどん、この国は衰えていくのです。
でも。
根っ子に気付いたとしても、行動メカニズムを見つけなければ、猫に小判です。
ほんと、気の遠くなるような道程が私達の前にはあるのです。
それでも、一歩ずつでも前進するしかありません。
そういう意味では、貴重な記事だと思います。
「国力衰退」と、その先にある「国家崩壊」を漠然と理解している方は、それなりにいると思います。
しかし、「どうすればいいのか」は誰も見つけていません。
現状認識が出来る人は増えてきましたが、原因の究明が出来ている方はいません。原因を見つけていませんので、対策は作れません。誰もが、結果を、何とか「捻じ曲げよう」とするだけですから、原因を探す努力もしません。
だから、ずるずると、じわじわと、しかし、着実に壊れていっているのです。
日本再生ステップ。
1. 現状の認識。
2. 原因の究明。
3. 対策の立案。
4. 行動メカニズムの発見。
5. 行動。
日本再生までのステップが5つあるとすると、ほんの少数の人達が、1番目の現状認識の一歩目に辿り着いたところです。ステップ2~5は、全くの手付かずです。
日本崩壊との競争ですが、とても、私達に勝算があるようには見えません。


大前研一氏の記事。
本稿執筆時点で、外国為替市場の円相場は1ドル=113円台後半の円安ドル高で推移している。日経平均株価は3万円を割り込んだままで、日本国債の値下がりも進み、日本は円安・株安・債券安の「トリプル安」に見舞われている。
 その一方で、新型コロナウイルスのワクチン接種が進んで世界的に経済活動が再開したため、原油の需要が急拡大して原油価格が高騰し、欧米ではインフレ傾向が強い。日本も円安が重なってエネルギー価格や原材料などの輸入品価格が上昇し、インフレになる可能性が高まっている。
 周知の通り、日本銀行は2013年1月から2%の物価上昇率目標を実現するために大規模な金融緩和を続けているわけだが、これから怖いのは欧米との相対的な金利差でさらに円安が進み、インフレに歯止めがかからなくなることだ。
 しかも、アメリカのFRB(連邦準備制度理事会)が量的緩和の規模を縮小して2022年からゼロ金利を解除(利上げ)する方針を明らかにした。アメリカの金利上昇は世界的な金利上昇につながるので、日本も利上げに踏み切らざるを得なくなるだろう。
 金利上昇は、過去最高の1992兆円(2021年6月末時点)に膨らんでいる個人金融資産を消費に出動させるためには追い風となる。しかし、世界の資金が米ドルに還流してアメリカのインフレが加速すれば、日本も国内需給とは関係なく、アメリカに誘発されたインフレになる。それがコントロール不能な状況に陥ったら、国債を大量に抱え込んでいる日銀がインプロージョン(内部爆発)を起こしてジ・エンドだ。その時は、公的年金積立金の50%を国内の債券と株式で運用しているGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)も道連れである。
 そもそも安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」とそれに呼応した日銀の黒田東彦総裁による異次元金融緩和の「アベクロバズーカ」は、円安とインフレを誘導するためだった。つまり、円安で輸出産業が潤えば賃金が上がり、景気が良くなるという論理だった。
 しかし、アベノミクスのスタートから9年が経過しても、そうはなっていない。結果的に今は原材料の輸入コスト高による企業の業績悪化、商品の値上がり、家計へのシワ寄せ、消費減退など、円安のメリットよりデメリットのほうが大きい「悪い円安」になっている。
 しかも、日本の賃金は20年以上にわたってほとんど上がっていない。厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」によると、日本の一般労働者の2020年の平均月給は30万7700円で、2001年からわずか1900円増えたにすぎない。
 また、OECD(経済協力開発機構)の調査では、2020年の購買力平価ベースの平均年収は、日本が35か国中22位の3万8515ドル、韓国が19位の4万1960ドル、OECD平均が4万9165ドル、1位のアメリカが6万9392ドルである。日本の平均年収は、韓国より約40万円、OECD平均より約120万円、アメリカより約350万円も低くなってしまったのだ。
 安倍元首相は、在任中にアベノミクスの成果を強調して「今世紀に入って最も高い水準の賃上げを実現している」と繰り返し喧伝していた。それに対して私は本連載で賃金の国際比較を示して何度も反論してきたが、結局、安倍元首相は自らの非を認めていない。岸田文雄首相も基本的にアベノミクスを継承する方針だから、結果は同じだろう。現在の円安は日本の国力が衰えていることの象徴である。


さすが、大前氏です。的確な現状認識をしていると思います。
「円安は国力衰退の象徴」という見識も間違っていません。
でも、国力の衰退は、結果です。原因ではありません。
国力衰退の原因に言及して欲しかったと思います。
多分、その原因を見つけていれば、彼は書いていたと思います。
大前氏は、本気で、原因究明をしたわけではないと思います。
「国力衰退」に辿り着いて、そこで安心してしまったのかもしれません。
私も、「国力衰退」を見つけた時、「見つけた」と思いましたし、得意気に書きました。
でも、違っていました。国力の衰退は、結果だったのです。失敗です。
「国力衰退」の原因を見つけなければ、全く、意味がない事に気付きました。
ステップ2の、根っ子の原因である文化に辿り着いた時も、同じです。
ステップ3の、対策として「言葉の定義」を提案した時も、そうです。
失敗の連続です。
ステップ5の行動がなければ、何の意味もないのです。
それなのに、私は、まだ、ステップ4の、行動メカニズムを見つけていません。
「お前は、何度、失敗すれば気が済むんだ」と言われても仕方ありません。ほんとに、失敗ばかりです。
これでは、原因も知らず、対策も見つけていない岸田総理と50歩100歩です。
国民が、行動を起こさない限り、何も始まりません。
しかし、これが最大の難関です。
私に、行動メカニズムを見つけることが出来るのでしょうか。
全く、自信がありません。
多分、99%、見つけることは出来ないと思います。
1%の奇跡に賭けるしかありません。
日本は現状を変える必要はなく、再生も必要ないという方は少ないと思います。
変えなければ、変わらなければ、未来はないと思っているから、国民の皆さんは不安なのです。行動メカニズムが見つかれば、国民は行動してくれます。ただ、この国の国民の皆さんは、「奥ゆかしい人」ばかりですから、率先して動くことはしません。「奥ゆかしい人」を、「いい人」を、演じている国民の皆さんが、どうすれば変ってくれるのでしょう。ドツボにはまらないと、変われないのでしょうか。
多分、そうなのでしょう。
ただ、それだと、余りにも犠牲が大きすぎます。
100年も200年も、ドツボの世界で生きていたら、ドツボこそが自分の居場所だと思ってしまうかもしれません。
そうなれば、ドツボから這い上がることだって出来ないかもしれません。
ドツボにはまる前に、行動を起こすべきだと思います。
ステップ5まで進めて、初めて、日本は再生のスタート地点に立てるのです。
と言うことは、途中で挫折すれば、日本再生はあり得ないことになります。私も、途中で挫折することになりそうです。

私が若い頃は、この国は、右肩上がりの国でした。
社会に出たばかりの、しかも事務職だった私が、生産性向上の製造部品を提案し、現場で採用され、生産性が上がったこともありました。これは、老人の昔話や自慢話ではありません。当時は、それが珍しいことではなかったのです。
それは、周りの空気が、そういう空気だったからです。些細なものが集まって、右肩上がりを実現していたのだと思います。
70年前の日本人は、焦土と化した国土を目にして、意志とか、熱意という目に見えないもので、この国を復興させたのだと思います。「何とかなる」と思ったのではなく「何とかしたい」と思う熱意が、奇跡を生んだのだと思います。
敗戦で一時的に統治システムが機能しなくなったことも、国民が熱意を持てる時代を生み出したのかもしれません。日本人は、一時的に「下々」意識を失っていたのです。
環境が、いろいろなものが、絶妙なバランスで、奇跡という結果を生んだのだと思います。一つでも欠けていれば、奇跡は起きていなかったと思います。
今の日本にあるのは、澱んだ空気だと思います。無いのは、「何とかしたい」という意志と熱意とそれらの絶妙なバランスだと思います。だとすると、この国を変えることが出来るのは「文化」くらいしか思いつきません。
もちろん、戦後復興という奇跡を再現できる可能性は残っていますが、「柳の下に二匹目の泥鰌はいない」という諺があるように、同じ奇跡は起きないと思います。それは、過去と同じ環境は、二度と生まれないからです。私達の経験は、何の役にも立たないと思います。
私達は、いつも、何かを創造し続けなくてはならないのだと思います。
これは、簡単なことではありません。
必要なのは、多分、熱量だと思います。
そして、その熱量は、多くの国民の小さな熱量が集まって、国を変えるような熱量になるのではないかと思います。
目に見えない力を、それも二番煎じの力ではなく、新しい力を生み出し、その力を借りないと出来ないことなのかもしれません。
多分、それが、新しい文化の創造なのだと思います。
2000年の歴史で、初めてのことですし、確信はありませんが、個人的な提案に過ぎませんが、「曖昧文化」の対極にある「定義する文化」を生み出すことではないかと思っています。
少なくとも、小手先のスローガンや政策で何とかなるようなものではないと思います。
国力が衰退しているということは、国民が、国力を繁栄させようという意志を思っていないということだと思います。
そんな意志も熱意も感じないのは私だけなのでしょうか。
皆さん、「俺には関係ねぇ」と思っているように見えます。
だから、この国は衰退しているのです。


2022-01-03



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