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じっと、我慢 [評論]



「特例貸し付け」「総合支援資金」というコロナ融資があります。
個人が、200万円まで借金出来る制度で、今のところ、8月まで受け付けているそうです。いつまで、延長されるかは未定です。
しかし、あくまでも、借金ですから、返済しなければなりません。来年1月から返済が始まる人もいます。このコロナ融資の窓口は社会保障協議会がやっています。
まだ、返済は始まっていませんが、返済が始まる前から、社会保障協議会へ自己破産手続きの通知が、毎日、届いているという記事があります。5月の時点で5000人、件数にして1万8千件です。
この制度の利用者は、320万人と言われています。しかし、早々と破産手続きを始めた人が5000人もいるということは、この先、どこまで増えるのかは予断を許しません。この破産手続きは、かなり美味しい法律ですから、仮に、1割の人が破産すれば、30万人です。3割だと約100万人ですから、約2兆円が回収不能になります。
最近、詐欺で有名になった各種のコロナ給付金は、返済の必要がないから詐欺という形が成り立ちましたが、この融資は、返済が必要ですから、詐欺という形では成り立たないのかもしれません。でも、破産という奥の手がありました。
いろいろな思惑で借金をした人がいたと思います。
中には、最初から、破産申請してしまえばいいと考えていて、元々、返済の意志がない人もいたと思います。相手はサラ金や闇金ではなく、国ですから、「あこぎな取り立て」には遭わないという予測もできます。
私は経験がありませんが、自己破産による生活への影響は、それほど大きくないと言われています。換金可能な財産があれば、財産の売却を命じられますが、財産がなければいいのです。デメリットとしては、新たな借金が出来なくなる程度です。官報に掲載されるだけで、周囲の人に知られることもありません。10年我慢すれば、新しい借金も可能です。国からの借金を返済するために闇金からカネを借りるなんて馬鹿なことをする必要はありません。破産法は少年法と同じで、個人の再生更生が目的です。普通の生活をしている人であれば、破産法は利用価値のある法律だと思います。活用を推奨することはないとしても、恐れるようなことではありません。国家財政は痛みますが、個人にとって、影響は大きくありません。
ただ、事業者が抱えたコロナ借金は違います。
金額も大きいし、企業の倒産や廃業は、失業者を生みます。
多分、コロナ借金による倒産・廃業は、かなりのインパクトになると思います。
コロナ融資が始まった頃から、野党は徳政令の話をしていました。
コロナ融資による倒産が、いつから顕著になるのかはわかりませんが、徳政令の要求は必ず議論になります。
どれだけの盛り上がりを見せるかはわかりませんが、政府としては、増税のチャンスになります。国家財政が痛むことは誰の目にも明らかなのですから、「国民の皆さんで負担してください」という理屈は成り立ちます。
恒久税なのか臨時税なのかで議論にはなりますが、野党も増税そのものを拒否することは難しいと思います。政府にとっては、消費税の増税が理想的ですが、コロナ復興税という名目でも受け入れるかもしれません。
増税のチャンスです。「配分、配分」と言っていた岸田政権が、消費税の増税に踏み込めるかどうかはわかりませんが、いろいろな増税が行われると思います。
今の日本のトレンドは、給料の減少と年金の減少という、あらゆる国民の皆さんの収入減少が、基調トレンドです。国が衰退しているのですから、仕方ありません。
そこへ、増税と物価の上昇が加わってきます。その上、失業率の上昇も加わります。
コロナの後始末は困難を極めると思います。
それは、国力衰退が、更に、進行するということです。
しかし、私達の国は、過去に縛られ、まだ、「なあ、なあ」「まあ、まあ」で何とかなると考えています。とても、不思議です。

5月に、企業倒産件数が、前年同期比で増加したというニュースがあります。
ただ、これは、コロナ借金の直接的な影響ではないと思います。
企業物価が10%も増加しているのですから、それを価格転嫁できていませんから、企業の収支は悪化しています。もちろん、どこの企業も目一杯借金をしていますから、追加の借金ができないという理由もあるでしょう。
世界規模で、資源価格、商品価格、が上昇しています。
コロナもあれば、ウクライナ戦争もあれば、気候変動もあれば、サプライチェーンの不具合もあれば、世界の分断もあるでしょう。
世界規模で、インフレになっているのです。
日本では、日銀総裁が「家計は、値上げを受け入れている」と言って大問題になりました。岸田総理も「日本のインフレは、他国に比べて低く抑えられている」と自慢しています。
私達の国は、金融のトップと政治のトップが、「トンチンカン」な発言をしている国なのです。それでも、多くの国民が、「じっと、我慢」しています。
ほんとに、「いい人」ばかりです。
コロナ借金による、コロナ関連倒産は、まだ始まっていません。
政府資金を直接借りた場合は、返済猶予期間がありますから、まだ、返済期限は来ていません。ただし、民間資金を借りた場合は、返済が始まっている借金もあります。
コロナ倒産は、今後、徐々に増え、そのピークは3年先になるかもしれません。
コロナ倒産は、コロナが原因とは限りません。日本には、数十万社のゾンビ企業が存在していると言われています。その多くが、コロナ融資で、倒産・廃業を先送りしました。それらのゾンビ企業の倒産も、コロナ倒産に含まれます。
まだ体力のある企業でも、これまで以上に、原価削減、特に、人員削減、人件費削減に邁進することになります。環境は、賃金の上昇という掛け声とは逆の動きになります。
倒産・廃業による失業者は、貧困層へと落とされますが、失業しなくても、収入は減少します。それでも、物価はどんどん上昇します。
失業が増えれば、高齢者の職場も減少し、年金受給時期を早める人も出てきます。
いつものように、「不幸が不幸を呼ぶ」現象が出てくるのです。
国民は、生活防衛のために、更に、節約し、物が売れなくなります。
そうなれば、販売不振で倒産する企業も出てきます。
もちろん、大企業も四苦八苦することになります。
経済全体が落ち込むということは、税収が減るということです。
そうなれば、政府は輪転機を回して、借金を増やします。
問題は、円安です。
「政府の借金は、子会社の日銀が買っているのだから、何の心配もない」と言ってバッシングされた元総理がいますが、円安という嵐は、MMT理論を吹き飛ばす力を持っています。
日本国内だけを見ていれば、そして、長期金利を無視すれば、政府債務は、日本の首を絞めるような危険なものには見えないかもしれません。ただ、日本は鎖国をしているわけではありませんし、日銀による長期金利のコントロールも難しくなってきています。日本政府よりも、日銀よりも、世界潮流のほうがはるかに強大です。世界経済という枠組みの中で生きている日本が、自国の都合だけでコントロールするなんてことできません。
問題点を見つけるために、極端なケースを想定してみます。
日本政府が、500兆円を借金して、先端技術産業を育成するために、日本先端技術株式会社という国策企業を立ち上げたとします。一部に、そのような提案をしている人もいます。
では、この日本先端技術株式会社の競争相手は誰でしょう。世界の先端企業です。
彼等は、黙って見ているのでしょうか。
カネに糸目は付けないのですから、日本先端技術株式会社は、どんな研究も、どんな製品開発も、資金には困りません。
世界は、束になって、日本先端技術株式会社を潰しにかかります。
公費で運営されている会社は「フェアではない」という大義は、世界で共有されます。
どこの国でも国債を発行しています。しかし、どこの国も、自国の国債がデフォルトしないように、懸命な努力をしています。当然、節約もしますし、経済成長で賄おうとします。しかし、日本だけは、借金のし放題だとしたら、納得できません。そんな国の製品に、自国の製品が負けるのは認められません。ズルをする国を認めることはできません。
何が起きるか。
日本円の大暴落です。
1ドル150円とか200円という円安ではありません。
1ドル1000円とか1万円という円安です。円安だけで、日本は崩壊します。
GDP比で2倍以上の借金をしている国の通貨が100円とか130円だという、今の状態が奇跡なのです。もしも、機械的に為替相場が決まるのであれば、日本円は300円でも不思議ではないのです。
確かに、日本は、世界一の債権国だと言われています。貿易赤字は定着しましたが、国際収支は、まだ黒字です。
では、いつまで、世界一の債権国の状態を続けられるのでしょう。
世界大戦が始まれば、債券は紙屑になります。実際の戦争にならなくても、中国・ロシア等々の国からは、資産を引き上げることになるかもしれません。
たとえ、戦争が始まらなくても、止むにやまれず、経済的な理由で海外資産の売却を迫られる企業もあるでしょうし、時間経過による資産の自然減という現象も起きます。国力の低下は、国内だけで起きるわけではありません。全体が衰退するのです。
国力衰退というトレンドだけではなく、円安もトレンドになる日が来ます。いや、もう、始まっているのかもしれません。
つまり、この国は、悪い方へ、悪い方へと向かっているのです。
希望の光は、どこにもありません。
経済成長しない、賃金上がらない、夢も持てない、しかし、物価は上がり、貧しい人が増え、戦争の危険まで感じている国に、コロナ倒産という予定外の惨事までやってきたら、もしかすると、コロナ倒産が、この国を「ドツボ」に落とす号砲になる可能性もあります。
これは、大ピンチだと思います。
もしかすると、建国以来最大のピンチかもしれません。
私は、極度の悲観論者です。話半分だとしても、それでもピンチです。
国民は、何もしなくていいのでしょうか。
多分、皆さんは、何もしません。
これまでの歴史にあるように、皆さんは、「じっと、我慢」をすることになるのでしょう。
ただ、今度の「我慢」は、かなりキツイ「我慢」になります。
何がキツイかと言うと、食糧です。
この国には、1億2千万人に配るだけの食糧がありません。
農業は衰退し、土地は痩せたままです。農業人口だって、簡単には増えません。
それは、すぐに、食糧増産はできないということです。
「飢え」と「餓死」が日常になるのです。アフリカには、この「飢え」と「餓死」に苦しんでいる人が大勢います。私達は、彼等の仲間になるのです。
地球規模で、気候変動の時代に入っています。気候変動は、農業にとっても最悪です。
国家機能が失われますから、災害に対しても脆弱になります。水害、河川の氾濫も農業の大敵です。
しかも、東南海地震や首都直下地震が目前に迫っている時期でもあります。
火山噴火で田畑や作物が被害を受ける可能性もあります。
悲観論者の視点からは、何一つ、いいことはありません。
それでも、皆さんは「じっと、我慢」をするのでしょう。それが、伝統ですから。
でも、それでいいのでしょうか。
「古き、良き、日本」「歴史と伝統」という「ぬるま湯」に浸かっていては、皆さんが困るだけではなく、子供達の未来も失います。
日本は、変わらなくてはなりません。
この30年間、色々な提案があり、色々な試みがありましたが、国力の衰退は止まる気配もありません。それは、常識的な対応では、「何ともならない」国になっているのだと思います。この先、「新しい資本主義」や「ばら撒き」をやっても、国力衰退は止まりません。ぜひ、そのことに気付いて欲しいと思います。現実を見てください。この国は、もう、充分、貧しい国になりましたが、この先は、もっと貧しくなります。国民の皆さんの不安は、皆さんの直感が、その事を知っているから生まれているのです。
これまで、「根っ子を変える」ような提案は出て来ましたか。
いいえ、弥縫策ばかりです。
弥縫策でも、数で何とかなるのであればいいのですが、これは、数の問題ではありません。弥縫策では、どうにもならないほどに、この国は衰えているのです。
でも、対応策がないわけではありません。それも、簡単な対応策があります。
「根っ子を変える」ために、言葉の定義をして、責務と目的を明確にして、国民総出で対応すれば、もしかすると、希望があるかもしれないということに気付いて欲しいと思います。
毎回、毎回、諄くて、ほんとに、済みません。でも、他に方法がありません。


2022-08-05



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