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新疆ウイグル問題 [評論]



新疆ウイグル自治区の内部文書が大量に流出したというニュースがあります。
ここでは多くを取り上げませんが、ネットには多くの記事があります。
新疆ウイグル自治区でジェノサイドが行われている、という疑惑はこれまでも何回となくニュースになりましたが、中国の強固なガードを破ることはできていません。
今回も、内部文書を手に入れたのが、匿名の第三者によるハッキングだと言われていますので、中国政府は「知らぬ、存ぜぬ」で押し通すことが可能です。
西側諸国は、文書の信頼性は高いと言っていますが、状況証拠に過ぎません。
5月に、国連の人権高等弁務官が新疆ウイグル自治区を視察しました。いや、国連は、「これは、視察ではない」と言っていますので、「訪問した」ということのようです。
人権高等弁務官に対して、習近平自身が乗り出して圧力をかけていますので、中国の警戒感も半端ではありません。当然、裏では、驚くようなやり取りがあったものと思います。もちろん、カネも動いたと思います。
新疆ウイグル自治区訪問の正式な報告書が出てくるまでは、かなりの時間がかかると思います。ただ、訪問後の記者会見のニュースを見ると、密室で、中国政府に改善をお願いしたということのようですから、中国の弁務官対策は有効だったということになります。
弁務官は、チリ出身のミシェル・バチェレ氏という方です。
中国は、中国のシナリオに沿って、バチェレ氏を誘導し、無事に帰っていただいたという結果になりました。大成功だったと思います。
バチェレ氏の訪問は、視察ではなく訪問ですから、記者会見でバチェレ氏はその点を強調していたようですから、「ジェノサイドの証拠を手に入れた」という発表は、そもそも、ありませんし、「ジェノサイドはなかった」という評価も出来ませんので、訪問そのものに何の意味もないということを証明しただけです。
バチェレ氏の発言を見てみましょう。
「新疆への訪問では、対テロ政策として行われている手法がウイグルやその他の少数民族の人権に与える影響について懸念と疑念を中国側に提起した」
「特に対テロ政策などに関する見直しを行い、国際的な人権基準に合わせるように促した」
中国国外に住むウイグル人から「(新疆に残る)家族と連絡が取れない」との訴えが相次いでいる問題についても「中国政府の当局者に対して、こうした家族に関する情報を最優先で提供するように訴えた」
この回答に見られるように、バチェレ氏は、提起し、促し、訴えた、のです。しかも、提起し、促し、訴えた、という確証はありません。
なぜ、バチェレ氏が、国連が、ジェノサイド疑惑のある新疆ウイグル自治区を、調査するのではなく、漫然と訪問したのか、その目的が見えてきません。
もしも、世界世論のガス抜きが目的であったのであれば、悪手だったと思います。日本であれば、こういう手法は、それなりに効果があるものですが、それは世界常識ではありません。国連の機能不全を証明する現象の一つになっただけかもしれません。
中国政府が、「私達は、ジェノサイドをしました」と言わない限り、水掛け論が続くだけです。中国政府が、そんな発言をすることはありません。特に、この案件は、習近平マターです。習近平が責任を取らされる案件で、「すみません。私がやりました」なんてことを言うと思っている方はいないと思います。
そんな案件の調査に、なぜ、国連は乗り出したのでしょう。
世界にとっては、このことのほうが問題だと思います。
これも、世界秩序崩壊の一局面だと思います。
もちろん、国連は世界秩序を破壊したいとは思っていないでしょう。「よかれ」と思ってやることが裏目に出ることはよくあることです。
新疆ウイグル自治区にあったとされる数百か所の施設。
西側諸国が強制収容所と呼ぶ施設を、中国政府は「職業技能教育訓練センター」と呼んでいます。そして、今は、まさに、そのような施設になっていると言われています。ただ、西側が強制収容所と呼ぶ施設は、既に中国各地に分散させられていて、その数、数千ケ所と言われていますが、新疆ウイグル自治区を視察しても、所謂「強制収容所」なるものは、既に、新疆ウイグル自治区には存在しません。
新疆ウイグル自治区に溢れていた監視カメラの一時撤去も終了したそうです。住人に対しては緘口令が敷かれていると言われています。
高等弁務官は、中国政府の案内人の指示に従わなければ動けません。
国連は、一体、何を期待しているのでしょう。
国連は、正義の味方を演じているだけ、にしか見えません。
それとも、人権高等弁務官事務所も、既に、中国政府の管轄下にあるのでしょうか。
どんな報告書が出てきても、意味のあるものにはならないと思います。
ジェノサイドという言葉は、ドイツが国として行った、ナチスドイツのユダヤ人虐殺から生まれた言葉だと言われています。
もしも、ドイツが戦争に負けずに、今も健在であれば、ユダヤ人虐殺は証明出来ていたのでしょうか。
あり得ないことです。
ドイツは戦争に負けて、ナチス政府は壊滅しました。
今、中国は、共産党政権は、健在です。
そんな国の国家犯罪を証明することは不可能です。そんなことは、中国政府は百も承知です。そう考えると、国連の意図が、わかりません。
国連にできることは、理想の実現に協力をお願いすることだけです。
西側諸国は「ジェノサイドだ」と言うことしかできません。言うのは自由です。しかし、そんなもの、屁のツッパリにもなりません。
「ならず者国家」は、何をやってもいいというのが、今の、これからの世界です。秩序が壊れるということは、そういうことです。ウクライナ戦争も、その一例です。
WTOもWHOも壊れています。人権高等弁務官事務所が壊れていても不思議ではありません。そもそも、国連の最高意思決定機関である安全保障理事会が壊れているのです。
これは、世界が、世界の秩序が、既に、壊れているということです。
ですから、この先は、人類数万年の実績が示すように、力での解決が始まるのです。
人類は、これまで、力でしか問題解決ができませんでした。
今回も、同じ帰結を迎えるしかありません。
理想とか正義なんて、現実の前では何の役にも立ちません。最後は、力です。
ほんとに、残念で、悲しいことですが、それが現実です。

個人の意見なんて何の役にも立ちませんが、新疆ウイグル自治区で人権弾圧が行われているのは事実だと思います。
でも、私達にできることはありません。
私達にできることは、中国領日本自治区になることを阻止することだと思います。
新疆ウイグル自治区の現状は、明日の私達の姿です。

いつもの罵詈雑言は聞き流して、中国政府の自信の表れとしての発言を見てみます。
「国連人権高等弁務官の訪中における中国の立場は一貫しており、連続している。われわれはバチェレ氏の訪問を歓迎するだけでなく、各国各界の人々が新疆ウイグル自治区を訪れ、真実の新疆を肌で感じ、理解することを歓迎する」
つまり、証拠隠滅作業は完成しているので、「いつでも、いらっしゃい」と言っているのです。この証拠隠滅作業は簡単なことではありません。しかし、中国は、国家事業として隠滅作業が出来る国です。習近平の威信を守るためであれば、経済的な損失を承知の上で上海をロックダウン出来る国、それが中国です。
確かに、いつもの品格のない発言ですが、それでも、自信があるように見えます。

今回の情報流出では、膨大な資料が出てきました。
ウイグル人の弾圧は、国家事業として行われましたので、習近平主導で行われたことは言うまでもありません。随所に習近平の文字が出てきます。
私達には、資料の全貌はわかりませんが、いろいろなニュースが出ています。
中でも、新疆ウイグル自治区を統括する高官の発言録に驚きました。
「4つの打破」をパーフェクトに行えたと言っています。「4つの打破」とは、ウイグル人の根源を打破し、血統を打破し、関係を打破し、起源を打破する、という意味だそうです。
このウイグル人という文字を日本人という文字に置き変えてみてください。
中国領日本自治区で行われるジェノサイドは、日本人を日本人でなくすることです。
今回のニュースに関心を持った日本人は、何人いたのでしょう。
1%でしょうか、2%でしょうか。
そんな調査すら行われないと思います。
チベット、ウイグル、香港の次が台湾であり、台湾の次が日本です。
中国領日本自治区が実現するのは、100年後ではないと思います。
もちろん、100年後であれば実現してもいいという意味ではありません。現在生きている日本人にとっての危機だということを認識してもらいたいと思うのです。
中国にとって、「能ある鷹は爪を隠す」時代は終わり、「爪を誇示する」時代も終わろうとしています。次は、「爪で獲物をしとめる」時代になるのです。
一部の人達の間で、「習近平はウクライナ戦争から何を学んだのか」が話題になっています。
経済制裁には力がないことを学んだという人もいます。
核の恫喝は有効な戦術であることを学んだという人もいます。
中華四千年の夢である世界征服の機は熟して来ていると考えても不思議ではありません。
中国自身も核弾頭の製造には全力で当たっていますが、ロシアを傘下に置けば、アメリカの戦略核に対抗できます。
後は、習近平が、いつ、腹を括るのかにかかっていると思います。
それは、第三次世界大戦は習近平の決断にかかっているということです。
その始まりは、台湾侵攻です。
習近平が懸念するのは中国経済と権力闘争という国内要因だと思います。
不動産バブルの影響、コロナによるロックダウンの影響、民間金融機関の預金凍結騒動、等々、国内問題が山積みです。中国人民の不満も高まってきています。
習近平にとっての今の中国経済は順風満帆ではありません。
ただ、順風満帆ではないからこそ、賭けに出るという条件が整っているとも言えます。
どんな決断でも、あり得るということだと思います。

この新疆ウイグル問題は、中国対西側諸国の争いの象徴的な争点だと思います。
それは、「倫理」対「カネ」の闘いでもあると思います。
これは、人間であれば、胸に手を当てて自分に問うてみれば、明らかに、「カネ」のほうが優勢であることは認めるしかありません。「倫理」では「カネ」に太刀打ちできません。
地球上の多くの国家が、中国の「カネ」の前にひれ伏しています。国の数であれば、「倫理」を持ち出す国より、口を噤む国のほうが多数です。日本も、その国の一つです。
品のない罵詈雑言を平然と口にする中国の前で、多くの国が「見て見ぬふり」をするのは、仕方のないことです。だって、誰も「カネ」には勝てません。それが人間です。
その通りですが、だからと言って、中国の属国になってもいいということではありません。せめて、軍事的に中国に侵略されないようにすることは、国の責務です。何度も指摘しますが、そのためには経済力が不可欠です。
中国領日本自治区という言葉を、勝手に作って、勝手に心配している私は、「こいつ、馬鹿じゃねぇ」と思われているのではないでしょうか。
私も、そんなことにはならないことを、心から願います。
でも、ほんとに、大丈夫なのですか。
その根拠は、どこにあるのですか。
この先、日本の国力衰退が顕著になった時、それほど遠い未来の話ではないと思いますが、アメリカは、日本との同盟関係を維持するのでしょうか。利用価値の無くなった日本を守る必要はなくなるのではないでしょうか。
その場合、日本は、地政学的に、中国に呑み込まれることになります。
国民の皆さんは、そんな想像はしないのでしょうか。
私は、中国の拝金主義を否定しているのではありません。彼等は、ただ、現実に向き合っているだけだと思います。
「カネ」が最強であることは、人間社会で当たり前のことです。
「カネ」は唾棄すべきものではありません。
私達に必要なのは、「カネ」よりも「品格」なのでしょうか。
そうではないと思います。
「カネ」を崇拝する必要はありませんが、それでも「カネ」は必要です。「カネ」は勝手に湧き出てくるものではありません。自分達の手で作り出すものです。


2022-06-06



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