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円の暴落と輸入価格の暴騰 [評論]



最近、スタグフレーション(stagflation)という言葉が散見されます。
このstagflationという言葉は、stagnation(停滞)とinflation(物価上昇)を合体させた造語だそうです。日本で「石油ショック」と呼ばれた経済変動があった頃に、イギリスで作られたようです。
インフレーションは、経済活動が活発であり、物価も上昇する現象です。
デフレーションは、経済活動が停滞し、物価上昇が起きない現象です。
スタグフレーションは、経済活動が停滞しているのに、物価上昇が起きる現象です。
デフレーションとスタグフレーションは、どちらも経済の停滞状況は同じで、物価が停滞するか、物価が上昇するかの違いです。
庶民にとっては、度を越したインフレーションとスタグフレーションが歓迎できません。それは、物価上昇が家計を圧迫するからです。
一部のエコノミストの方が、このスタグフレーションの危険を指摘しているのです。
コロナの影響もあり、日本経済は停滞状態ですが、いや、この30年間ずっと停滞していますが、この秋には、いろいろな物が値上げされました。電気・ガスは4カ月連続で値上げされています。
もちろん、この先、スタグフレーション状態になるかどうかは、まだ、わかりません。
ただ、今の状況を続ければ、その可能性は高いと思います。なぜなら、経済が活性化する要因は、どこにもないからです。
スタグフレーションが度を越すと、ハイパーインフレになります。今のベネズエラが、日本の将来の姿を見せてくれているのかもしれません。
何か、方法はないのでしょうか。

もちろん、このスタグフレーションは、日本だけで起きるのではありません。
今起きているのは、資源相場の変動であり、これが世界の潮流になれば、非力な日本は翻弄されます。原油の相場は、上がったり下がったりしますので、皆さん、慣れていると思います。ガソリン価格も高値を付けていますが、過去の経験から、「いつか落ち着くだろう」と思っています。食糧の価格も上昇していますが、「いつか落ち着くだろう」と思っています。相場に永遠はありません。ただ、上昇トレンドがいつ終わるのかはわかりません。
ここで、原油や食料が、長期上昇トレンドになった時を想像してください。
上昇トレンドのチャートは、10上昇して3下落し、5上昇して2下落、7上昇して1下落し、10上昇して3下落するという動き方をします。でも、出発点と比較すると、23も上昇していることになります。
もちろん、エネルギー原料価格の上昇も、食糧価格の上昇も、青天井で続くわけではありません。相場の上昇トレンドは、いつか終わります。それでも、その上昇期間中は、耐えなければなりません。耐えるのは、消費者です。
その衝撃は、上昇幅と上昇期間で変わりますが、耐えるしかありません。
エネルギーや食糧以外の、たとえば、航空機の価格が上昇したとしましょう。
航空運賃が上昇しますので、経済への影響は避けられませんが、直ちに、庶民を直撃することはありません。
しかし、エネルギーと食料は、私達の生活に欠かせないものです。
エネルギー原料価格の上昇は、電気代やガス代を直接上昇させ、家計に大きく影響します。物流コストも上昇させますが、それだけではありません。エネルギーは、製造現場でも必要不可欠なものですから、製造コストに影響し、消費者価格を上昇させます。食糧価格の上昇は、食糧だけではなく、家畜の飼料価格上昇に影響しますので、これも、消費者価格に影響します。
もう1つ、とても危険な要素があります。いや、これが一番危険です。
それが、為替相場です。
私達は、エネルギー原料も食料も、輸入に頼っています。
世界から、物品を購入する時は、ドルで買わなければなりません。物品を買う前に、ドルを買う必要があるのです。そのためには、円を売って、ドルを買わねばなりません。その円とドルの交換レートを決めるのが為替相場です。
では、為替相場は、現状維持できるのでしょうか。
これは、誰にも、わかりません。
為替相場の大きな視点は、その通貨の信頼性によります。
通貨の信頼性とは、その通貨を発行している国の信頼性のことです。
もっと、厳密に言えば、その国の経済力に対する信頼性です。
日本のデータは公開されていますので、日本が「衰退国家」であることは、世界が知っています。国際収支という1本の綱で支えられている信頼性ですが、その綱も経年変化で脆くなっていますので、いつまで保てるのかは不明です。
韓国では、1人当たりGDPで日本に勝ったのだから、韓国は日本を追い抜いたと言われています。私も、そう思います。私達は、韓国に抜かれたことを、危機と感じたのでしょうか。明らかに、日本の「国力衰退」が原因だと思いますが、日本国内に、そんな空気はありません。確かに、韓国も、周回遅れで衰退国家の仲間入りをすることになります。それでも、現時点では、韓国のほうが上です。ここは危機感を持つべき局面だと思います。
以前から、言われていたことですが、日銀保有の国債を永久国債にしようという提案が、一部で言われています。この永久国債というのは、借金の棒引きのことです。日本政府と日銀は一体だとして、自分の借金を自分で棒引きにするのです。
理論的には不可能ではないと言われています。
しかし、世界は、そんな国を信用してくれるのでしょうか。
輪転機を回すだけで、資金が自由に捻出できる国の通貨を信用してくれるのでしょうか。
例えば、財源が逼迫した北海道が、北海道内で使える独自通貨「円円」を発行し、輪転機をフル回転させ、「円」と交換してくれと言って、誰か交換してくれますか。
国は、地方自治体の財政破綻を厳しく制限しています。地方自治体の破綻は駄目で、国が良いという基準は何なのでしょう。夕張市の借金を棒引きしていないのは、何故でしょう。
国を鎖国し、世界の為替相場から日本円を外すのであれば、それは、日本の勝手ですから、いくら輪転機を回しても構いません。
しかし、その場合、信任されていない日本円で他国の通貨を買うことは出来ません。
日本の都合だけで、永久国債なんて無茶は、通らないと思います。
そんなことをすれば、円は暴落します。
世界は、今の日本の国力にも、経済力にも、信用を置いていません。
過去の日本の遺産である海外資産で、生き延びているのが日本です。
客観的に見て、世界一の借金大国日本は、いつデフォルトしても不思議ではない国なのです。
今も、円安傾向を心配する方はいます。ここで言う「円の暴落」は数円の円安のことではありません。数百円、数千円の円安であり、為替相場から締め出されるような円安のことです。北朝鮮ウォンではドルが買えませんが、それと同じ状況になります。
円が暴落するということは、輸入価格が暴騰するということです。
100円で買えていたものが、1000円出さないと買えないとすると、その商品の価格は10倍になります。それが、円の下落の影響です。
世界のエネルギー価格や食糧価格の上昇は、日本固有の事情で、何倍にも、何百倍にでもなり得るのです。いや、もしかすると、ベネズエラのように何兆倍になるかもしれません。円の暴落がハイパーインフレの引き金になる可能性だってあります。

世界的に心配されているスタグフレーションとか、日本独自の円の暴落とか、輸入価格の暴騰は、私達の生活に、どんな意味を持っているのでしょう。
言葉だけを見れば、私達の生活には関係のないことのように見えます。
でも、そうではありません。
私達の生活を直撃するのです。
それは、何故なのでしょう。
国力が衰退しているからです。衰退国家では環境の変化に対応できません。
資源価格が高騰したのは、今回が初めてではありません。過去にも、何度も、同じような時代がありました。特に、影響が大きかったのが、石油ショックと呼ばれた時代です。
トイレットペーパーの買い占めはありましたが、物価上昇率は25%にもなったそうですが、何とか、凌ぐことができました。それは、50年前の日本は、今ほど、国力が衰退していなかったからです。今の日本が25%のスタグフレーションになったら、生活できない人が続出し、社会不安は大きくなります。月々、10万円で生活している人が何人いるのかは知りませんが、数百万人ではなく、数千万人いると思います。25%の物価上昇に耐えられるとは思えません。
まだ、公式には認めていませんが、明らかに、日本は衰退しているのです。
こんな時に、スタグフレーションとか、円の暴落とか、輸入価格の暴騰があれば、日本は耐えることができません。それは、国民生活が破壊されるということです。
どうすればいいのでしょう。
先ずは、「国力衰退」を止めなくてはなりません。
では、「国力とは」何でしょう。
仮に、国力とは富を稼ぐ力だとすると、稼ぐのは、誰でしょう。
政治家ですか、それとも、官僚ですか。
違いますよね。
国力とは、富を稼ぐ、国民の力です。
その力が衰えているということは、国民が衰えているということです。
では、どうして、国民の力が衰えているのでしょう。
それは、国民が「俺には関係ねぇ」と言っているからです。
「なんだ、精神論か」と言う方もいるかもしれませんが、精神論なしに国は成り立ちません。「塵も積もれば山となる」という例えがあるように、国民の小さな努力を積み重ねることが国力になるのです。
では、なぜ、国民は「俺には関係ねぇ」と言っているのでしょう。
それは、国民が、自分の目的も責務も知らないからです。
スタグフレーションとか、円の暴落とか、輸入価格の暴騰があれば、国が破綻する可能性がとても高くなります。もし、その原因が「国力衰退」だとすると、国民生活を破綻させてしまうのは、頑張っていない国民だということになります。
だとすると、国民生活の破綻は、国民が責任を取らねばなりません。
当たり前のことです。
つまり、このまま、「なるようになる」のを待っていれば、貧困や飢餓や生命喪失は、国民が甘んじて受けるしかないということです。
国民が責務を果たさずに国を壊すのですから、その責任を国民が取る。
何の不思議もありません。
分析は間違っていないと思いますが、何か、変です。
それは、国民生活が破綻して、喜ぶ国民は1人もいないからです。
何が、変なのでしょう。
国家運営は、「お上」の仕事だと思い込んでいるのが、変です。
目的がない事を、変だと思わないことが、変です。
それは、国民が、自分の責務を知らないことが、原因です。
では、なぜ、国民は、自分の責務を知らないのでしょう。
それは、自分達が「下々」に過ぎないと信じて疑わない国民が、今までも、今も、自分達が「国民」であることを、知ろうとしなかったからです。
もっとも、「お上」も知って欲しくないと思っていたことも影響しています。国民が、自分の責務を知るということは、その過程で、国の責務も知ってしまうからです。
国にとっても、国民にとっても、「なあ、なあ」「まあ、まあ」が最適な答だったのです。
誰も負うべき責務を知らないのですから、「自分さえよければ」「今さえよければ」が容認されました。これが、誰にとっても一番楽だったのです。
皆で、好き勝手をやっていたのですから、国が壊れても不思議ではありません。

ただ、国民は、知っていて、国民生活を壊そうとしているわけではありません。
まさか、自分で自分の首を絞めているとは思っていません。
国民は、ただただ、知らないのです。無知蒙昧の民と呼んでもいいと思います。これは、教育のレベルの問題ではなく、意識の問題です。国民は、知ろうとしていないのです。
無知は、ほんとに、怖いです。
国民生活が壊れて、喜ぶ国民なんて一人もいませんが、そこは、都合よく、責任転嫁をします。「お上のせいで、壊れたのだから、俺には関係ねぇ」と思っています。いやいや、実際に責任を取るのは、あなたですから。
国民に責務があるなんて、想像もしていなかったと思います。
悪いのは、全部、「お上」のせいだと思っています。
国民の皆さんは、寛永とか享保の時代を生きているのかもしれません。皆さんは、「見ざる、言わざる、聞かざる」を律儀に守っています。「従順」と「服従」が自分の責務だと思っています。これでは、言葉の定義なんて思いつくこともありません。この国の責任者は国民の皆さんなのに、皆さんは、自分に責任があるなんて微塵も思っていません。
確かに、政治家も問題あります。官僚も問題あります。
でも、一番問題なのは国民です。
近い将来、間違いなく、国民の皆さんの生活は。一人の例外なく壊れます。
それなのに、国民は「ふむ、ふむ」と頷き、「へらへら」と笑い、「俺には関係ねぇ」と言っているのです。救いようがありません。
皆さんの生活が壊れるのです。
壊れてから「あちゃー」と言っても遅いのです。
国民の皆さんが、目を醒まし、自分がすべきことをするしかないのです。
でも、この国のどこを探しても、そんな空気はありません。
政治家をぼろ糞に言う人はいますが、昭和・平成・令和の国民は政治家以下なのに、「国民に問題がある」なんてことを言っている人を知りません。
「お前のブログは、マイナーだから、言えるんだ」と言われれば、その通りかもしれません。


2021-11-04



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