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記事紹介 30 [記事紹介]



2013年3月1日付 英フィナンシャル・タイムズ紙の記事を紹介します。
表題 日本経済、手早い対策は緩やかな停滞より危険か




大方の日本人投資家は、通貨を押し下げ、新たな財政刺激策に乗り出す首相の決意を歓迎した。安倍晋三氏が昨年12月に首相に選ばれてから、TOPIX(東証株価指数)は22%上昇し、円相場は大幅に下落した。
 そして今後、財務省の元キャリア官僚で新たに日銀総裁に指名された黒田東彦氏が、より積極的な量的緩和策を指揮することになる。
 だが、もっと懐疑的な向きもある。構造改革の不足や不利な人口動態、低い生産性、中国、韓国などの近隣諸国からの競争上の脅威を考えると、こうした政策は金利上昇を招く一方、悪影響を相殺する恩恵が見込めないと考えているからだ。
 数十年とは言わないにせよ、もう何年も、日本円と日本国債に対する空売りは、損失が膨れ上がるために墓場トレードとして知られてきた。

「墓場トレード」と呼ばれてきた日本売りに異変

 ところが今、アベノミクスという決して新しくはないが素晴らしい世界のおかげで、円売りは利益を上げており、日本に対する弱気筋は、弱気に基づく賭けの対象を日本企業に広げている。
 こうした投資家のポジションは、政府がやろうとしていることにどれだけ大きな利害が絡んでいるかを物語るとともに、多くの運用担当者やエコノミストが、新政権が日本を今より高く持続的な成長軌道に乗せられる可能性について悲観的な理由を示している。
 なぜなら、政府の政策課題は概ね、過去にうまくいかなかった手っ取り早い対策から成り、長年の低成長ないしマイナス成長を経た今では、従来以上に危険な対策だからだ(そして現在、日本はマイナス成長が3四半期続き、再び景気後退に陥っている)。
 いくつかの面では、安い円は確かに日本の輸出企業の収益に貢献する。だが、そうした効果はある意味で人為的だ。むしろ、より魅力的な製品を作り、価格決定力を持つ方が望ましいだろう。

純粋な恩恵ではない円安

 いずれにせよ、円安は決して純粋な恩恵ではない。何しろ日本は依然、原材料の輸入に依存している。福島の原発事故で原子力発電が大幅に減少したため、現在は輸入エネルギーに対する依存度が高まっている。円安により、貿易収支と経常収支の双方に大きな圧力がかかる。
 そのうえ、もし政府が望んでいるように円安進行が続いたら、外国人投資家は為替サイドのリスクを補うために、高いリターンを求めるようになる。こうした資金は市場に流れ込む投資の一部にすぎないが、変化は常に周縁から始まるものだ。
 金利の上昇は、政府にとっても、過度な借り入れを行っている日本企業にとっても問題になる。後者のような企業が、新政権の政策に納得していない例の投資家の標的だ。
 政府の支出政策も、お粗末な対策に終わる可能性が高い。景気刺激策はこれまで、特に建設業界の既得権益の要求をそのまま反映しており、乗数効果がゼロだった。こうした事業は日本の有名な光景であるコンクリートで舗装された川や山間の小川にかかる立派な橋を生んだ。
 だが実際、そうした政策はこれまでは逆効果だった。消費者は、これらの不要な工事の代金を払うための増税を見越して、従来以上に節約しなければならないと感じたからだ。
 日本の人口高齢化を考えると、道路よりも老人ホームを建設した方がずっと良かった。そうした施設は、発展の遅れた日本のサービス部門を育成するとともに、老後のために貯蓄する動機を減らす助けにもなるはずだ。だが、それには移民が必要となるかもしれない。移民の受け入れは、政策課題に挙がってさえもいない多くの構造改革の1つだ。

「オールドジャパン」銘柄に目を付ける弱気筋

 さらに言えば、たとえアベノミクスが円安の結果としてより高い物価上昇率をもたらすことに成功したとしても、賃金は恐らくインフレに追いつかないだろう。賃金は物価に追いついたことがないからだ。その場合、弱い内需は一段と弱くなる。
 こうした理由から、米国の一部ヘッジファンドの運用担当者は今、まさに安倍政権の政策の恩恵を最も受けるはずの「オールドジャパン」銘柄に対してネガティブなポジションを取っている。
 こうしたファンドは例えばクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)市場で、製紙業界や海運業、鉄鋼業界の多くの企業のプロテクションを買っている。これらの企業がデフォルトすると考えているからではなく、事業衰退のリスクと比べて、CDSの保証料率が安く思えるからだ。
 これらの投資家が考えているように信用スプレッドが拡大すれば、投資家は儲かる。一部の鉄鋼メーカーは、アルセロール・ミタルよりも債務負担が大きく、同社以上に中国に影響されやすい。また、日本人がファクスされた地図の代わりに様々な機器を使うようになり、製紙会社ではついに需要が減少し始めている。

軍備関連銘柄が買われ始めたら・・・

 さらに、多くの日本人でさえ、安倍氏の右派の国家主義的な見解のために、こうした政策が短命に終わったり効果がなかったりしたらどうなるか心配している。
 一部のバンカーは、ほぼ150年前の明治時代以来、日本は戦争によってしか景気後退から脱したことがないと指摘する(望むらくは、1950年代の朝鮮戦争などの他国の戦争だった)。
 再軍備関連の銘柄が高騰し始めたら、日本の運勢は短期的に上向くかもしれないが、長期的には一段と大きな危険にさらされるだろう。




余談です。
フィナンシャル・タイムズ紙は、当初、アベノミクスには好意的な評論を書いていました。珍しいことだと思っていましたが、ほんの少し時間が過ぎた今、「あれっ」と思ったのかもしれません。
紹介記事の最後の部分で、安倍さんは海外から右翼だと思われている部分がありますが、海外の認識が違うのか、国内の認識が違うのか、私には判別できていません。しかし、世界の論調は、安倍氏=右翼が定番になっています。
私も、この数カ月は、いや、昔からかもしれませんが、比較的戦争を取り上げることが多かったように思います。いろいろな評論やメディアの論説にも、戦争のことが書かれることが増えているようにも感じます。実際に戦争の臭いがしているのは、否定しません。
ただ、私には、日本が戦争に突入するという予感はありません。
戦争に突入したくなるような環境になるとは思いますが、戦争はしないと思いますし、して欲しくないと思っています。戦争をして欲しくないという願望が、予感を封じているのかもしれませんが、正常な感覚からは戦争で解決できるという判断はできないと考えています。もっとも、戦争に突入する時は正常な感覚ではなくなっていると思うので、私の判断は間違っている可能性が高いのかもしれません。石田の日本崩壊論には、戦争の要素は全く含まれていません。勝手に内部崩壊するシナリオになっています。

フィナンシャル・タイムズ紙はアベノミクスの成長戦略が、昔ながらの公共投資に過ぎないと思っているようです。一寸冷静になれば、そう考えることが自然なことだと思いますが、今の日本国内は普通の状態ではないということなのかもしれません。安倍政権の支持率が70%だということは、きっと、そういうことなのでしょう。
笹子トンネルの崩落事故が「国土強靭化計画」にお墨付きを与えてしまったことにも、私は違和感を持っています。時の流れという巨大な力が、多くのことを巻き込んで、更に成長している様子を彷彿させるからです。あの天井板が崩落するのは、5年前でも5年後でもよかったのに、なぜ、このタイミングで崩落したのか。そこに、悪魔の存在を感じるのは異常なことなのでしょうか。民主党政権が誕生したことも、領土問題が顕在化したのも、なぜ、今なのでしょう。阪神淡路大震災も東日本大震災も、この20年間に発生しています。借金が限界まで膨らんでいることも、国民が貧しくなっているのも、なぜ、今なのですか。いじめが原因で、これほど多くの子供達が自分の命を絶つ社会は、当たり前のことなのでしょうか。
もう、はっきりと方向は見えているのではありませんか。
「日本化」という言葉は、いまや、衰退国家の代名詞になっています。世界の国々は「日本化」と呼ばれることを屈辱だと思っています。そして、海外の論調は、日本はもう何をやっても無駄だろうと思っているようです。そう思っていないのは、日本国民だけです。確かに、自分のことは、意外に気が付かないものです。そんな国で、官僚を頂点とする利権集団は、いまだに、利権漁りに余念がありません。衰退国家になったのも、そんな利権集団に原因があるのですが、国民が目を覚ます気配はありません。国民は、ヘラヘラ笑っている場合ではないと思いますが、相変わらずヘラヘラ笑っています。救いようのない愚か者です。
世間は曖昧な空気の中で、「なんか、よさそう、かも」と安倍政権を支持しています。世論を作っているのは、大手メディアです。その大手メディアを制御しているのが官僚です。そのことに、そろそろ、気付かなければなりません。


2013-03-06



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