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ぼく、わかんない [評論]



最初に、ロイターの記事をそのまま参照します。

 日銀の前田栄治・調査統計局長は12日都内の景気討論会に出席し、「国債がリスクフリーでなくなれば、相当な混乱を起こす」と述べ、財政再建と成長戦略が急務と強調した。白川方明総裁も度々「国債に対する市場の見方は非連続的に変わる」として財政再建の重要性を強調してきたが、前田局長は「リスクフリーとされ、各種金融資産のベンチマークである国債がそうでなくなり、担保とみなされなければ相当大きな混乱が生じる」と踏み込んだ。日銀内で金利急騰リスクが従来以上に意識されつつある可能性がある。関係者によると日銀は、昨年末に明らかになった新規国債の発行に占める海外投資家の急増や、「ドイツショック」を受けた国内邦銀の国債離れで、9割の国内保有に支えられた国債市場の現在の安定が急変する可能性を懸念しているもよう。日銀が12月21日公表した2011年7─9月期資金循環統計によると、同時期の国債発行のうち海外勢の買い越しは約7割にあたる8兆9414億円で、国内金融機関の買い越し額の2倍以上。海外勢の投資は短期国債が中心だったが、この時期から長期債への投資が目立ち始めた。海外投資家が欧州ソブリン危機を受けた一時的な逃避先として日本国債を購入していると仮定すれば、何らかの契機に売却を急ぐ可能性も高いため、日銀の一部関係者からは警戒の声も聞かれる。昨年11月末にドイツ国債の入札不調で長期金利が急騰(国債価格は下落)したことで、邦銀の国債投資への姿勢が慎重化した、とされる点についても一部日銀関係者は注視している。さらに、イランに対する米政府の経済制裁強化に伴う原油価格上昇や、国内の消費税政局が混乱した場合に市場参加者の財政に対する信認にも悪影響を与える可能性なども、欧州危機に次ぐリスク要因と一部日銀関係者は挙げており、新春早々視界不良な中での政策運営を迫られつつある。


次に、フィナンシャルタイムズ紙の記事を抜粋します。

日銀が先月公表した統計は、海外の投資家の国債保有残高が9月末時点で過去最高の75兆7000億円となり、1年前の57兆9000億円から3割近く急増したことを示していた。
<中略>
財務省にとって心配の種は、外国人による国債購入の大半が長期国債ではなく、国庫短期証券(満期1年以内の国債)の形になっていることだろう。このような短期国債の購入は、全般的な市場心理が好転した時に簡単に反転する可能性があるため、あまり望ましいものではない。「外国人投資家は今は日本国債に殺到しているが、市場心理が変わり、彼らがより高いリターンを求め始めた時には、利回りが突然上昇するかもしれない」と、三菱UFJモルガン・スタンレー証券のシニア債券ストラテジスト、長谷川治美氏(東京在勤)は言う。
<中略>
ソシエテ・ジェネラルのアジア太平洋金利戦略部門責任者、クリスチャン・カリロ氏(東京在勤)は言う。 カリロ氏の推測によると、海外の投資家は2012年度の日本国債の需要のうち12兆5000億円を占め、銀行(12兆円)や保険会社(9兆円)、日銀(9.5兆円)を上回る見込みだという。
<中略>
JPモルガン証券のチーフエコノミスト、菅野雅明氏は先週、日本は早ければ2015年にも「慢性的な」経常赤字に転落するとの見通しを示した。「日本は資本の輸入国になるだろう」と菅野氏は書いた。「財政赤字は、わずかながら、外国人投資家からの資金によって賄われなければならなくなる」


参照する記事や抜粋する記事は、そのまま転記していますので、読みにくい部分がありますが、どうかご理解ください。また、これらの記事が100%正しいと言うつもりもありません。しかし、火のない所の煙は、不自然だと思っています。
さて、両記事で海外投資機関が保有する期日の長さ(長期か短期か)に若干の差異がありますが、長期国債が大幅に増えた訳ではなく、その傾向があると捉える程度の差異だと思われます。圧倒的に多いのは短期国債です。
いわゆる専門家の間では、日本国債の危険度について、その認識に差はないように見えます。日本の専門家も、目立たないようにしていますが同じ認識のようです。その認識とは、今日は危険ではないが、明日は危険が現実になる可能性があるという認識です。
この二つの記事を読んで、専門家は、やはり専門家だなと思いました。
一方、私よりはるかに知識もあり、知性や常識をわきまえてはいるが、専門家ではない方は、国債に関する理解という意味では専門家とは違う解釈をしています。財政や長期金利という分野は、馴染みがない分野という一面があるのでしょう。日本国債は大丈夫だと考えている方が多いように感じます。
特に大多数の庶民と呼ばれる人達には、別世界の話のようです。
「財政破綻。なんじゃ、それ」
「わしらには、関係ない」
「よく、わかりませんが、私にも何か関係があるんですか」
街に出て100人の方にインタビューしても、きっと、このような返事が返ってくるのでしょう。財政問題や債務危機や財政破綻という言葉が増えていますが、では、そうなったら、何が、どうなるのか、ということに関しては語られることがありません。もちろん、専門家の皆さんの頭の中にはありますが、職業上、社会不安を煽るようなことは言えないと、口を噤みます。だから、庶民には実感がないのです。でも、専門家の方々は責任というものを履き違えています。権力者の立場を慮って、自己規制することが責任ではありません。正しい現実を伝えることが責任なのではありませんか。海外メディアの記事はそのことを教えてくれています。
白川日銀総裁が「国債に対する市場の見方は非連続的に変わる」という言い方をしたことについては以前にも書きましたが、実に回りくどい言い方だと思います。「国債の暴落があり得る」と言えばいいだけの話です。非連続的変化というのは、そういう意味です。彼は、奥歯に物を挟まなければいけない立場にいるのです。
危険だ、危険だ、という雰囲気の中で、訳のわからないまま増税を持ち出されても庶民には理解できませんので、枕詞に社会保障という言葉をつけて、出来るだけ衝撃をやわらげていますが、今、危険なのは社会保障ではなく、財政破綻なのです。
日本政府は、財政破綻を国民に説明する勇気を持っていません。真実を告げれば、日本は間違いなくパニックになります。個人的には、たとえパニックになってでも、国民に真実を告げて再出発する勇気を持たねばならない時期だと思いますが、既得権益を失う方は容認できないのでしょう。

・海外の投資家が、日本国債を買っているのは避難行動だと捉えてみると、いつの日か、日本国債を売って、より利息の高い投資先に資金を移動することは当然の事です。海外保有の75兆円の半分が、日本から流出した時、一時的にではあっても、長期金利は上昇します。日本の金融機関は我慢できるのでしょうか。もしも、何か別の要因が働いて、日本の金融機関が「逃げ」に走った時、日本国債は史上空前とも言える「暴落」状態になります。
・以前に、格付けのことも書きましたが、社内規定で現在の格付けが投資の限度とされている金融機関があるそうです。その金融機関がどこなのかは知りませんが、今度日本が格下げされた場合、その金融機関は日本国債を購入することが出来ません。1/13に欧州各国の格付けが引き下げられました。いつもは格付け会社を批判するフランスも、おとなしく受け入れました。織り込み済みだという解説もありますが、ユーロ安は止まりません。たかが格付け、されど格付けです。舐めてかかってはいけません。欧州の格下げに対して、日本政府は「だから、どうしても、増税が必要だ」と言います。全体像を示すことなく、増税にだけ焦点を当てるやり方は卑怯だと思います。 [財政再建]=[増税]という刷り込みには、腹立たしさをおぼえます。国の形を変えなければならないほどの借金をしてしまったのです。増税などで問題は解決しません。
・国際収支の赤字転落は、予想より早いという印象があります。国際収支が赤字になるということは企業の内部留保が減少することであり、それは、企業の預金残高の減少となります。前回も書きましたが、国債購入に充てられていた余剰資金の減少となります。
・団塊の世代の退職時期に合わせたように、国民貯蓄率は低下傾向に転じています。年金だけで生活出来る人がどれだけいるのか疑問があります。個人の預貯金は、この先も、当然、取り崩されるものと考えなければなりません。これも、余剰資金の減少となります。
では、誰が日本国債を買ってくれるのでしょう。買ってくれる人がいなければ、売るのを止めればいいと思われますが、それが出来ません。日本は毎年、赤字国債を売ることで生計を立てているのです。国債が売れなければ国家運営の費用がないのです。毎年、国家予算の数倍もの国債を発行しなければ、日本は生き延びることができません。つまり、無理をしてでも国債は売らねばならない。その時に起きるのが長期金利の上昇です。何度も同じ事を書いて申し訳ないのですが、長期金利の上昇は金融機関の破綻を呼び、日本は崩壊へと向かうのです。本年度の国債発行額を200兆円としますと、10%の金利で20兆円の利子負担が発生します。毎年、20兆円もの利払いが追加されても、生き延びれるものなのでしょうか。日本の税収が40兆円ですから、利息支払い能力が無くなることは火を見るより明らかです。日本の場合、国債がデフォルトすれば、国民は無一文になるのですが、国民はそのことを知りません。なぜ、これほど国民生活に直結している大問題が放置されているのか不思議でなりません。「なんとかなる」ような問題ではないのです。
・では、経済成長で税収が増やせるでしょうか。震災復興予算を除けば、日本経済の先行きは大変暗いものです。
世界一の借金大国の日本が生き延びるためには、多くの条件が成り立つことが必要とされています。その状態で、初めて、いや、かろうじて、生きているのです。
ところが、多くの条件は盤石のものではなく、非常に微妙なバランスの上にあります。
あれもこれも、私には、多くの現象が、同じ方向を向いているように見えるのですが、これは錯覚なのでしょうか。それとも、石田の得意な妄想なのでしょうか。

「そこの、お父さん、お姉さん、そして、坊ちゃん。財政破綻になれば、食べる物にも苦労する時代が来るのですよ」
「まさか」とお父さん。
「そんなこと、誰も言ってないじゃない」とお姉さん。
「ぼく、わかんない」と言う坊ちゃん。
多分、坊ちゃんの答えが一番庶民感覚に近いのではないでしょうか。
でも、このことは「ぼく、わかんない」で済む問題ではないのです。
日記「まさか」の内容は極端だと思われた方がいると思います。でも、たとえ、半値八掛けだとしても、地獄になることは避けられません。
確かに、財政が破綻するまでには、まだ時間があります。でも、財政破綻を回避する方策があったとしても、即効性はありませんので回避のためにも時間が必要です。どちらが先か、という時に、モジモジとしていていいのですか。手遅れになってしまいますよ。
私は、広島と長崎の原爆は戦禍ではなく、人災だと思っています。原爆投下以前に戦争を終結するチャンスはありました。福島原発事故も人災です。次に来る日本崩壊を人災にするかどうか、私達はすぐにでも決断しなくてはならない場所に立っています。同じ轍を踏んではいけないのです。
財政破綻および財政破綻後の国民の暮らしというシミュレーションは、ネットメディアでもまだ見たことがありません。ネットで具体的な予想図が出て、一般メディアに波及した時に、庶民は吃驚するのです。その時期は、多分、崩壊寸前になると思いますので、対策を講じる時間は残されていません。そして、もう少し時間があればと後悔することになるのです。
国家運営といえども、人間がやることです。だから、必ず、間違いを起こします。
そのことに目くじらを立ててみても意味がありません。
いかに早く間違いに気付くか、どうすれば、その間違いを是正することができるか。
それが、人間の知恵なのです。
医療の世界で、早期発見・早期治療が推奨されていますが、国家運営でも同じです。
今は、欲ボケしている時ではないと思いますが、無理なんでしょうか。
今ほどメディアの力が必要とされている時はないのですが、駄目でしょうか。


2012-01-16



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