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先送り [日記]



ある大学の老教授が、日本は西欧文化から個人主義の導入に失敗したのだと評論を書いていました。児童虐待、老人虐待、死亡手続きをせずに年金を不正受給している等々、現在の日本の問題点を論ずるのが目的です。西欧の個人主義が成り立っているのは宗教の縛りがあるのに対し、日本にはその縛りがないから個人主義が利己主義になったそうです。私は西欧人ではありませんので、宗教の縛りがどれほどのものかは実感がありませんが、それほど西欧人が宗教で自分を律しているようには見えません。確かにイスラム教にはかなりの縛りがあるように思いますが、キリスト教にはそれほど強いものはないように思っています。もっとも、ローマ法王が存在できるのですから、全く縛りがないという訳でもないのでしょう。それでも、なぜ、日本に「自分さえよければ」が蔓延したのかという理由を宗教だけに求めるのは少し無理があるように思えます。私には昔からある栄枯盛衰という言葉の方が説得力を持っているように思えるのですが違うのでしょうか。それでも、勝者の奢りだけに原因を求めることもできません。もっと身近な所に何かがある。その何かの一つに私は「余裕」があるように思います。そして、その余裕の本質は私たちの先送り体質なんだと思います。ニートという存在が許される余裕。年収100万でも餓死しない余裕。不毛な政治に対して暴動を起こさなくても日々が過ぎて行くという余裕。何とかなるだろうという余裕。「自分さえよければ」を黙認する余裕。この余裕と言う言葉を鷹揚という言葉に置き換えれば、許される範疇にあるのかもしれませんが、人間を蝕んでいる事実は曲げようもありません。栄枯盛衰という現象は必ずやってきます。1000年でも、2000年でも、いや、10000年でも人間は同じ事を繰り返します。私が心配しているのは、その浮き沈みではなく、時間の流れ方です。一度沈んでしまうと再浮上が困難になる危険です。1000年という単位で考えれば可能な事でも、100年という時間軸では不可能ということもあります。例えば、日本が崩壊したとしても、500年後には栄えることができると言われて安心する人はいないでしょう。そうであれば、今、知恵を絞って崩壊を防ぐべき時だと思うのです。そのためには、もっともっと議論をするべきなのではないでしょうか。もっと、自分の心の中を見つめる必要があるのではないでしょうか。多分、崩壊の原因は我々の身近に存在しているのです。政治が哲学や思想を持つ事も出来ずに対処療法に終始しているのは何故なのか。何故、国の未来図が描けないのか。それは、現状認識をすることが怖いという潜在意識があるからではないでしょうか。先送りがしたいだけなんではないでしょうか。誰だって既得権益は手放したくありません。親の年金で生計を立てていた子供が、親の死亡を隠ぺいするのも既得権益の死守に過ぎません。長妻大臣を厚労省から追い出したのも、官僚の既得権益を守るためです。ところが、官僚の手先になった菅さんを世論は支持しました。国民は官僚政治を認めたのです。だから長妻さんは大臣を外されたのです。
菅さんが選ばれたわけではなく、小沢さんが否定された代表選挙。小沢さんには政治とカネの問題だけではなく、あの容貌が否定の材料になりました。小沢さんのあの容貌は国民に受け入れられません。特に女性には不人気です。テレビ画面に小沢さんの顔が出ると、「この人キライ」と言った女性がいます。そうなんです、世論は候補者の中身ではないのです。ビジュアルで総理が決まるのなら木村拓也を総理にしませんか。菅さんほど一国の総理に相応しくない人も珍しいと思うのですが、それは私が小沢さんと同じで、ビジュアルに自信がないからだとは思いません。勿論、小沢さんが理想の総理だとは思っていませんが、菅さんよりははるかにましだと思います。
さて、菅政権の正念場は来年の春だと言われています。どの政党もそこに照準を合わせているのでしょう。従って、来年の春までは部分連合という政局もそれなりに機能する可能性があります。ただ、予算関連法案を成立させるのは至難の業になります。そこで、フィクションみたいなシナリオを想定してみました。私は法律の専門家ではありませんので、このシナリオに重大な欠陥があった場合はお許しください。
予算関連法案が参議院で否決されたとします。政府は小さな変更をして、予算関連法案を再提出します。4月になっても予算の執行はできませんが、菅さんは「予算が執行できないのは、全て野党に責任がある」と言って譲りません。憲政の常道というやつを無視した場合に、野党に出来ることはあるのでしょうか。内閣不信任案の可決でも、総理が辞職しなかったらどうなるのでしょう。
最近の事例で言えば、領海を侵犯していても、「間違った対応をしているのは日本であり、強力な対抗措置をとる。全ての責任は日本にある」こんなことを言うのは中国や北朝鮮だけと決まっている訳ではありません。
菅さんが同じようなことをしないと誰が保証してくれるのです。予算の執行ができなければ国民生活に影響が出ます。世論はどう動くのでしょう。日本人ですから、野党が間違っていると言いだすのではないでしょうか。菅さんは世論を盛り上げるだけでいいのです。総選挙になっても野党に勝ち目がないとしたら、野党はどうするのでしょうか。もっとも、このシナリオには民主党の内部にある小沢爆弾が爆発しないという前提は必要です。
一年前に国民が託した希望はどこへ行ってしまうのでしょう。

尖閣諸島の衝突事件は一連のシナリオの一つに過ぎず、まだまだ続きます。日本のマスコミは中国国内のデモの様子を流し続けていますが、利用されているだけではないでしょうか。既に中国のペースで進んでいるように見えます。あれだけ中国人が怒っているのだから船長を釈放してあげれば、と思う人が現実に存在するのです。日本人は実に心優しき民なのです。
真偽のほどは不明ですが、あの海域には中国漁船が常時、しかも大量に操業しているという話です。今回は漁船と巡視船の衝突でしたが、中国海軍相手でも海上保安庁は同じ事ができるのでしょうか。日本が主張していることが事実だとして、漁船ではなく中国海軍の軍艦が自国の漁船を守るためと称して巡視船に衝突してきたら巡視船はどのような対応をとるのでしょう。
領土問題は複雑怪奇ですが、とっておきの方法があります。それが実効支配という手法です。それを利用しているのは中国だけではありません。北方四島も竹島も、既に日本の領土とは言えません。それは、実効支配している国がロシアであり韓国であるからです。次は尖閣諸島が中国に実効支配されて、日本の領土ではなくなります。タカ派と言われている前原大臣でも、あの衝突は偶発的事故だったと言い始めました。この事件は偶発などではなく、中国海軍の長期計画に基づいた、仕組まれた事件なのですが、国内の犯罪事件とは違って捜査権がありませんので証明が非常に難しい事案になります。中国があの海域にトロール船を出し始めたのは、かなり前からだそうです。日本の巡視船がなかなか罠にかからないので中国も困っていたのでしょう。次第に船数を増やして、挑発するしかありませんでした。あの事件のあった日は160隻の漁船が操業していたそうです。海上保安庁も目に余る行為だということで、取り締まりに乗り出しました。本当は、罠だと言う事に気付かなければいけなかったのですが、日本人にとっては思いもつかない罠だったのでしょう。そして、あの漁船の船長は見事に任務をはたしました。彼は多分中国海軍の軍人だと思います。シナリオがあるのですから船長が自白することはありません。それでも日本は裁判にできるのでしょうか。あの事件以降の中国の対応は余りにも早すぎます。シナリオ通りに動く訳ですから、実にスムーズです。前原さんは、中国の意図を知っていてあのような発言で幅を持たせようとしたのでしょうが、中国相手に紳士的な振る舞いをしても役に立たないということを知らない人ではないと思うのに、どうしたのでしょうか。でも、たとえ中国海軍があの海域に投入されたとしても、日本政府には海上自衛隊を派遣する勇気はないでしょう。領土領海を守るための自衛隊ですが、最高司令官である総理大臣の命令がなければ何もできません。私が中国海軍の参謀なら、中国人民が乗っている漁船を守るためという理由で、堂々と軍の艦船を派遣します。日本の巡視船は警告を発するだけで実力行使をしないことを知っているからです。中国海軍は日本の巡視船と漁船の間に自軍の艦船を配置するだけでいいのです。もしも、日本の巡視船が発砲してくれたら中国としては大成功ですが、日本政府は巡視船にも発砲許可は出せないでしょう。遠巻きにして監視する体制をとるのが日本政府にできる限界です。中国の漁船も中国海軍も当然のようにしてその海域に居座ることになります。つまり、実効支配の幕開けです。中国は既にベトナム沖で同じような行動をとっていますので目新しいことではありません。その状態で数年が過ぎれば、尖閣諸島に船着き場を作り、建造物を建て、最終的には軍を常駐させます。現在の竹島がその状態です。韓国に出来た事が中国に出来ないという理由は見つけることができません。そして、中国は新しい中間線を引き、自国の領海だと主張します。中国にとっては、沖縄の米軍基地に対する抑止力にもなりますし、太平洋に続く海路を確保することにもなります。長期計画の第二列島線を手中にするためには、中国にとって尖閣諸島は重要な場所になります。更に、ガス田の権益も自分だけの物になるのです。一石三鳥なんですから、中国にとってこれほど美味しい話はありません。それも、ただ単に脅しをかければ済むとしたら、やらない訳にはいかないでしょう。台湾を併合するより簡単だと思っていることと思います。日本に対しては恫喝外交をしておけばいいのですから楽なものです。世界は日本が恫喝外交には対抗できない国だと知っていますから。
今日と言う日は、本来なら戦争前夜に当たると思いますが、緊張のない普通の時間が日本には流れています。ドンパチはやっていませんが、既に戦争が始まっているのだと認識しなければなりません。中国はいつでも宣戦布告をする用意があると思います。できれば、日本側に発砲してもらいたいと思っているでしょう。そのための、挑発はしてきます。国を栄えさせるためなら、人命などいくらでも投入します。中国は人命なら掃いて捨てるほど持っていますから。
私は「無力」という物語を書きましたが、相手が北朝鮮ではなく中国になり、シチュエーションも違っていますが、同じような展開になるような気がしています。物語の中での総理大臣も菅さん(作中ではたしか菅野直太になっています)なので、少し引いてしまいます。
日米安保があるだろう。とんでもない。何故、アメリカ軍が日本の領土の中で、自衛隊がやろうとしない武力行使をしなければならないのです。アメリカは日本に対して、自分の領土なのだから自分で対処しろと言うだけです。日本の領土領海内に退去警告に従わない他国の軍艦が居座っているのです。日本国憲法でも自衛権は放棄していません。武力で排除する以外に方法はありませんが、日本政府にできるのでしょうか。
日本の外務省がアメリカ国務省に、日米安保は尖閣諸島に及ぶのかと確認したそうですが、アメリカ国務省の担当者は天を仰いで嘆息したことでしょう。アメリカ軍は日本の傭兵ではありません。別の意味でもアメリカは積極的に関与しないと思います。平和ボケの日本人が現実を認識し、自分の足で立つまでは見守るだけになるでしょう。いろんな国が我慢比べのチキンレースを始めることになります。
今こそ、日本の外交手腕が問われる時です。たとえ中国の罠にかかって軍事衝突を起こしても、中国は国交断絶ぐらい平気でやります。中国にある日本企業の資産は中国政府に没収され、日本人は国外退去を命じられます。貿易もできません。これで、日本が成り立つとは思えません。多くの企業が巨額の欠損金を計上する事になり、税収は激減してしまいます。中国はそんなことを百も承知でやるのです。それが嫌なら、俺の言うことに従え、というのが彼等のメッセージなのです。では、世界が日本を救ってくれるのか。残念ながら、中国という巨大な市場を棒に振ってでも日本を救ってくれるような愚かな国は存在していません。
日本が最も苦手とする外交の分野で、突然、手腕を発揮する・・・それは、ありえないでしょう。
世界は紳士の仮面を被ったゴロツキの集まりなのです。正義が勝つ訳ではありません。人間という動物が作っている集団なのですから、大前提は弱肉強食なのです。日本人同士だと平気でゴロツキになれるのに、対外的には紳士たろうとする日本人は実に不思議な民族だと思います。
蛇足になるのかもしれませんが、この事態は民主党の責任ではありません。かつての自民党の国家統治に問題があったのです。対処療法に終始し、あらゆることを先延ばしにしてきた自民党と私たち国民に責任があります。
国の在り方を曖昧にしてきたのですから仕方のない事です。既に日本には開戦という選択肢も残されていません。窮地に追いつめられて痛い目に合った過去の教訓が生かされているとも思えません。じわじわとやってくる中国の浸食に耐えることが、我々に残されている道なのです。
では、私たち日本人はどう対応するのでしょう。非常に実現性の高い対応を想像してみましょう。
嵐が過ぎ去るのを待ちます。とりあえず、先送りしましょう。いつか、中国にも栄枯盛衰の法則はやってきます。それが何百年後になるのかは不明ですが、永遠ということはありません。ですから、「ごめんなさい」と中国に謝ります。尖閣諸島の領有権も放棄して、沖縄も差し上げましょう。沖縄が日本領土でなくなれば、米軍基地もなくなり普天間の問題もなくなります。我々は中国の属国になる覚悟があります。日本は二度と武力を行使しないと誓ったのですから、戦争はしません。軍備も放棄しますから、どうか日本を守ってください。
これが、日本政府首脳の思考だとすれば、国民には何の選択肢もありません。先送りさえしていれば、いつかいい時代がやってくるという、この強い信念はどこから沸き出てくるのでしょうか。
でも、そこから本物の地獄が始まります。そして、500年ほど辛抱することになります。
ただし、一つだけお願いがあります。中国に献上するおもいやり予算という名の上納金の上限だけは決めておいてください。是非、これだけは先送りしないでください。
少し長い目で見れば、風前の灯状態にある我が国の現状が見えるのですが、誰もそのことに驚いていない。ひょっとして、日本人は太っ腹なのかな。

今回の衝突事件が紛争に発展しなかったとしても、中国は次から次へと手を打ってきます。中国海軍の目標は太平洋の半分を自分の庭にすることだからです。滑稽だと思いますか。いいえ、彼等は真剣なんです。公開されている中国の軍事戦略を見ただけでも、彼等の真剣度を測ることができます。
一方、日本には何の準備もありません。準備には少なくても30年は必要ですが、先送りしてきた30年を取り戻すことはできません。



2010-9-23



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