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階級 [評論]



例年、春闘の話題で賑わう季節ですが、変人の私には、空騒ぎにしか見えません。
政府もメディアも、話題にするのは、僅か数パーセントの大企業の中の、ごく一部の優良企業の、賃金上昇率です。
日本の課題は、「そこですか」と聞きたいです。
勝ち組と言われている人達の現状維持を図っても、この国は蘇りません。もっとも、「大企業の中のごく一部の優良企業の賃金上昇」が実現しないと、公務員の給料は上げられませんので、力が入るのは仕方ないのかもしれません。しかし、圧倒的大多数の国民は「春闘なんて、俺には関係ねぇ」と思っています。
「誰のための国家運営なのか」を問うのは国民の仕事です。
国民の皆さんが、自分の責務を知らないのですから、このまま、ずるずると、この国は朽ち果てる運命にあります。もちろん、この国を繁栄させるか崩壊させるかは、国民次第です。しかし、国民の皆さんは、その責務も知りません。「そんなもん、俺には関係ねぇ、お上の仕事だろう」と思い込んでいます。

ここで、大雑把な平均年収を見てみます。
国家公務員   680万円
地方公務員   660万円
国民      440万円
中小企業    380万円
この数字を見ただけでも、歴史と伝統に培われた階級が存在しています。
参考までに、「大企業の中のごく一部の優良企業」の年収も見てみましょう。今、流行りのM&A企業は外しました。
キーエンス   2111万円
三菱ケミカル  1738
三菱商事    1608
野村      1384
ファナック   1364
東京海上    1338
三井住友    1304
三井不動産   1263
ソフトバンク  1253
電通      1169
エーザイ    1099
ソニー     1051
日本軽金属   1044
・・・・・・
ユニクロ     959
トヨタ      857

さて。
ユニクロやトヨタの平均年収が、1000万円に、2000万円になったら、この国の課題は解消されるのでしょうか。
いいえ。
最大の課題は、国民の平均年収の440万円と中小企業の平均年収の380万円です。
全国の中小企業が、あり得ないと思いますが、5%の賃上げをしたとしても、平均年収は400万円にしかなりません。中小企業で働く皆さんは、5%でも給料が増えれば喜んでくれるでしょうが、でも、課題は解消されません。まさに、焼け石に水です。
この国に必要な賃金上昇は、100%とか200%の賃上げだと思います。それでも、仮に、中小企業の平均年収が、100%の賃上げが実現したとしても、760万円ですから、中小企業の平均年収は、現在のトヨタの857万円を追い越せません。
桁が2桁違うのです。
実際には、5%の賃上げを実現できる中小企業は、とても、少ないと思います。
自民党は、今でも、トリクルダウンという仮説に執着しています。
もう、時代は、トリクルダウンの時代ではありません。
どうして、そのことに気付かないのでしょう。
それは、この国が、全体として、ずるずると、衰退しているからです。
衰退国家では、「自分が一番」ですから、トリクルダウンなんて起きません。
国力衰退を止めて、反転させ、国力発展を実現しなければ、課題は悪化するだけです。
国民の年収が減少するという環境の中、公務員の年収は減少しません。賃金を上げるために、企業の場合は、売り上げと利益の増加が必須ですが、国には、借金という強い味方があります。「賃金の上昇というトレンドを作るために」という理由で、今年も公務員給与の賃上げをすると岸田さんが言っています。
現状認識も原因究明も対策立案も、どれも、的を外しています。
いつからか、多分、50年前くらいから、「結果を捻じ曲げること」が対策になると勘違いしているようです。
最近の対策では、「デフレ脱却」と「賃金上昇要請」が、それにあたります。
デフレも、賃金水準も結果です。
しかも、掛け声だけです。
ざっくりとした、曖昧な対策ですから、結果がどうなっても構いません。
〇〇を、〇〇までに、〇〇にします、という対策ではありませんので口先だけで済みます。
その上、対策が実現しなかった時に、誰も責任を取りません。
こんなこと、いつまで、続けるのですか。
なぜ、こんな馬鹿な国家運営をやっているのでしょう。
現状から逃げる。
原因を見つけない。
対策は、口先で済ましてしまう。
これでは、状況が変わることはありません。
では、なぜ、こんな馬鹿な国家運営を許しているのでしょう。
「下々」は「お上」に「物を言ってはいけない」という伝統があるからです。
未だに、日本国民は、日光東照宮の猿のままなのです。
「下々」は、たとえ、自分が苦しい生活を強いられても、ただ、ただ、我慢することが「下々」のあるべき姿だと信じています。
今の時代、「愚かな」という表現が、とてもお似合いな国民だと思います。

国民が納めた税金を財源として支払われているのが公務員の給料です。
しかし、公務員は、統計資料によると、国民の収入の約1.6倍の収入を得ています。
この数字を見ただけでも、明らかに、「お上」と「下々」という階級は存在しているのです。
しかし、「下々」は文句を言いません。
それは、この国が、民主国家ではないからです。
「もっと酷い国はいくらでもあるだろう」と言う方もいるでしょう。
その通りです。
だからと言って、これでいいわけではありません。
しかも、国は衰退し続けていて、どこかで崩壊することが約束されているのです。
「俺には関係ねぇ」と言っている場合ではないと思います。
「お上」に「好き放題を言わせている」のも、勝ち組に「やりたい放題をさせている」のも、国民の皆さんなのです。
国民が「ノー」と言えば、こんな馬鹿なことは続けられません。
それが民主主義なのだと思います。
国の責務は、国民生活を守ることです。
ここで言う「国民」とは、「僅か数パーセントの大企業の中の、ごく一部の優良企業」の皆さんだけではなく、公務員だけではなく、中小企業で働く皆さん、自営業の皆さん、農林水産業で働く皆さん、も含むのです。
中小企業で働く皆さん、自営業の皆さん、農林水産業で働く皆さんのほうが、圧倒的多数の国民なのです。これらの国民の生活を守るのが、国の責務です。
国も責務を果たしていませんし、国民も責務を果たしていません。
これでは、潰れても仕方ないと思います。

では、なぜ、こんなことになってしまったのでしょう。
答えは、簡単なものです。
国民の皆さんの「下々」意識が強く、今でも「三匹の猿」を真似ているからです。
人間は「欲」の塊です。
「お上」や「勝ち組」が「利」を追求するのは当たり前です。
それを許しているのが、国民の皆さんです。
「お上」も「勝ち組」も「三匹の猿」も、自分の責務を知りません。
この「無知」がこの国を衰退させているのです。
誰も、好き好んで、破滅したいとは思いません。しかし、明らかに、破滅へと向かっています。どうしたらいいのか、誰にもわかりません。ほんとに、わかっていないのです。ですから、意図しているわけではありませんが、歴史と伝統に従い、皆で、「なあ、なあ」「まあ、まあ」「ふむ、ふむ」と言いながら、一致協力して、崩壊への道を歩いているのです。いや、そのことに気付いている人もいません。まるで、夢遊病です。これは、ほんとに、恐ろしいことだと思います。

どうすればいいのでしょう。
今日は、くどくど、と書きませんが、「言葉の定義」をしてください。
時間はかかりますが、希望の光は見えてくると思います。


2023-03-01



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