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真正面から向き合う [評論]



国民の皆さんも、漠然とは感じていることだと思いますが、この国は壊れ始めています。
皆さんも、「なんか、ヤバそう」と思っているのではないでしょうか。
昨年は、「国力低下」とか「国力衰退」という言葉が数多く出てくるようになりました。数年前は、このブログでしか使われない言葉でした。今年も、その傾向は続くと思います。もしかすると、流行語になるのかもしれません。
12月に恒例となった「今年の一文字」があります。その年に起きた、既に、過去に起きた社会風潮を表す一文字だとすると、今年の一文字が「衰」とか「壊」にならないことを願います。昨年は「戦」でした。
実際に壊れていることを目の当たりにしているから、このような言葉が出てくるのです。
その証左を数字で見てみます。

国の債務残高が、GDP比260%になっていることは有名です。
日本は、毎年、借金経営を続けている国なのです。
しかし、「ここまで借金しても破綻しないのだから、この先も、大丈夫だろう」というのが多くの方の認識です。
それは、違います。
破綻してしまった時のダメージが半端ではありません。
財務省の官僚の皆さんが追い詰められるだけではありません。国民生活が、ズタズタに切り裂かれるのです。
後講釈であれば、なんとでも言えます。
破綻してから「やはり、無理だったか」「俺も、心配してたんだ」なんて言ってみても意味ありません。
破綻は、明日かもしれませんし、5年後かもしれませんが、間違いなく、破綻します。
冷静に見れば、誰にでもわかることです。MMT論者や借金経営で恩恵を享受している人は、いろいろと言い訳を述べますが、借金経営を続けることができないことくらい、誰にでもわかることです。皆さんは、薄氷の上に立っているのです。何らかの外力が加わるか、温度変化があるか、誰かが氷上で暴れれば、氷は割れます。今は、奇跡的に、氷が割れていないだけだと思います。

日本人の給料は上がらない、と言われます。
では、対前年比で、賃金上昇率はどう変化しているのか見てみます。
1954年は、前年比104.8%の上昇でした。
1961年に、前年比112.1%になりました。
1974年に、前年比124.1%上昇を記録しました。
1977年に、前年比107.9%になりました。
2001年に、前年比99.0%になりました。
2020年の上昇率は、前年比100.7%です。
上の数字は平均値ですが、中身が変化しています。
2021年の平均年収は、443万円だそうです。
ただ、2極分化が進み、中小企業の社員の給料は減少傾向にあります。勤労者の53%が400万円以下になっているのは、そのためです。日本は、99.7%が中小企業なのですから、仕方ありません。
2000年以降、100%を切ったり越えたりしていますが、安定して、およそ100%です。それは、中小企業の貧乏人がますます貧乏になっているということです。特に、一人親世帯は、大変苦しい生活を強いられています。充分な栄養を摂れない子供達が大勢います。
これって、壊れているのではありませんか。

少子高齢化により、社会保障費の増加が止まりません。
国は、借金経営ですから、ともかく、カネがありません。
国民から搾り取るしか方法がないのです。
企業に定年年齢の延長をお願いし、年金保険料を払ってくれる人を確保しています。
国民年金保険料の納付年限も5年延ばしました。
パートもアルバイトも、厚生年金に加入させ、保険料を納付してくれる人を増やしました。
今は、年金支給開始年齢は選択可能ですが、この先、年金支給開始年齢が変更されます。70歳、75歳に変更されると言われています。
65歳で年金を受給した人が平均寿命(85歳)まで生きると、20年ですが、その受給開始年齢を75歳にすれば、年金支給額は半額で済むという計算のようです。
もう、あの手、この手、で繕わなくてはならない状態です。

防衛予算の増額方針が決まりました。その財源の中に「歳出削減」という項目があり、年間3兆円の歳出削減が盛り込まれています。歳出削減が可能なのであれば、なぜ、今まで削減をしなかったのでしょう。簡単に歳出を削減できるのであれば、3兆円ではなく、43兆円全額を歳出削減で賄えないのでしょうか。
ここからは、私の勝手な憶測に過ぎません。削減対象になった歳出は、どこかで、その費用を賄える目途が立たねばなりません。検討されている方策の1つが、生活保護受給者の医療費(約1.8兆円)を国費で負担するのをやめて、国民健康保険会計から払うという制度変更です。形の上では歳出削減になります。結果、国民の皆さんが支払う保険料が上がり、それで肩代わりするということになります。玉突き方式しかないと思います。歳出増を、税金、保険料、国債という名前に変える、いわゆる玉突き方式で誤魔化すしかないのだと思います。もしも、私の憶測が当たっているとすると、増税(1兆円)よりも多い額が保険料負担で賄われることになります。多分、「社会保障の質の向上」というような謳い文句が生まれるのではないかと思います。私は、これまで、何度となく「生活保護保険」の可能性に言及してきました。医療費は、その第一弾になるのかもしれません。「生活が苦しい人達を皆さんで支えてください」というスローガンは、いつ出てきても不思議ではありません。税金よりも保険料のハードルが低い理由が、よくわかりませんが、国民負担という意味では同じだと思います。
四苦八苦です。弥縫策の連打です。これって、壊れているのではありませんか。

出産育児一時金という制度があります。少子高齢化対策としては必要な施策です。しかし、財源がありません。そこで、75歳以上の後期高齢者にも負担してもらうことになりました。もう、形振りは構っていられないと言っているようなものです。
子供手当の財源もなく、施策が宙に浮いています。

そんな中、庶民の生活を苦しめているのが、物価高です。
光熱費の高騰が顕著ですが、生活に必要な多くの商品が値上げされています。
値上げされた品目は、作年は、約2万品目でした。今年の春には、第2波の値上げラッシュがやってくると言われています。光熱費は継続して値上げされます。
世界的な資源価格の高騰を受けて、電力自由化で誕生した新電力という会社が立ち往生しています。約20%の企業が、倒産や廃業、電力事業の契約停止や撤退に追い込まれました。
ギシギシという音がしているようです。
秩序が失われているように見えます。これも、壊れている証左です。

まだ、数字にはなっていませんが、今年から、廃業・倒産の第1波が始まると予測されています。それは、一部で、コロナ借金の返済が始まるからです。そんな時期に、日銀が長期金利のイールドカーブを変更しました。世界は、金融緩和政策の変更と捉え、円相場も変動しました。ただ、今年は、日銀総裁が交代する時期です。もし、短期金利政策が変更されたら、20万社と言われるゾンビ企業は資金繰りが難しくなります。資金繰りが出来ないということは、倒産するということです。倒産よりも廃業を選ぶ企業もあると思います。ゾンビ企業だけではなく、大企業でも倒産する会社が出てくると思います。
この先、もっと、一般国民の目にも「壊れる様子が見える」ようになるのです。
これが、国力衰退の実態なのだと思います。

1つ1つの事象を見ていると、「まあ、こんなことも、あるよな」で終わってしまうのかもしれませんが、視線を引いて全体を見ると、「ヤバイ」ように見えます。ここに挙げたこと以外にも、衰退の兆候は数多くあると思います。
これ、放置しておいて、いいのでしょうか。
国が発展途上にある時にも、問題は数多くありますが、発展が打ち消してくれます。
いつの時代でも、課題はあるものです。しかし、今は、問題が深刻に見えます。
それは、国が衰退途上にあるからだと思います。
ですから、この国力衰退問題は放置しておいてはいけないのだと思います。
しかし、衰退の原因に迫る本物の対策が講じられていません。
弥縫策に忙しくて手が回らないのだとすると、衰退は進むだけです。
衰退の先に、何か希望はあるのでしょうか。
いいえ、衰退の先にあるのは、間違いなく、滅亡だと思います。
だとしたら。
私達は、この国力衰退問題の原因に真正面から向き合うしかないと思います。
どうか、一日も早く、気付いて欲しいです。
ただ、この国力衰退という問題は、余りにも大きく、余りにも根深い問題ですから、簡単には対処できません。
金融政策でも景気政策でも労働政策でも社会政策でも、役に立ちません。
構造改革でも、生産性向上でも、追いつけません。
もう、これまでのような「なあ、なあ」「まあ、まあ」では、無理なのです。
文化を変えないと、真正面から向き合えない問題なのだと思います。
政策や手法や制度では、方が付かないものがあります。国力衰退も、その1つです。
最後は、人間力に頼るしか道はないと思います。それも、1億2千万人の人間力を結集することでしか解決しない問題なのだと思います。それを実現したのが戦後復興です。何度でも再現することは奇跡とは呼びません。ですから、戦後復興の奇跡は二度と起きることはないのでしょう。でも、今、この国に必要なのは、その奇跡だと思います。
数千年をかけて築き上げた文化を変える国なんて存在しないと思いますが、でも、もしも、それができれば、それも奇跡なのだと思います。
そのことに気付いている人がいません。ゼロです。
国家運営に携わっている政治家や官僚だけではなく、学者や有識者と呼ばれる人達も気付いていません。最も致命的なことは、国民の皆さんが、「俺には関係ねぇ」と思っていることです。これでは、希望の欠片もありません。ゼロなのです。
私は、諄いほど「文化を変えましょう」と書いていますが、誰も、取り合ってくれません。「お前、なに、寝言、言ってるの」としか思われていないのだと思います。ほんと、不思議なくらい、気付いてくれる人がいません。
しかし、時間は、どんどん、進みます。衰退も進みます。
誰も気付かないのですから、希望は、全く、ありません。
行き着く先は、ドツボです。
皆さんがドツボに落ちるのを見ているしかないのです。
ほんとに、悲しいことです。


2023-01-04



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