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他国に蹂躙されない国 [評論]



イスラエルで戦争が始まりました。
パレスチナのガザを実効支配しているハマスの大規模な攻撃が、その始まりでした。
これまで実行してきたハマスの攻撃とは、全く違うものです。
オスロ合意が頓挫したことで、パレスチナは国とは認められていません。ですから、ハマスをテロ集団と呼ぶ人も多くいます。自国を持たない民族が行った軍事行動は、やはり、テロなのでしょうか。もしも、パレスチナ国という国が存在していたら、ハマス軍は国軍だったと思います。私は、そこに違和感を感じました。国と国の戦いだけを戦争と呼ぶのは、少し違うと思います。ただ、戦争でもテロでも嬉しくありません。でも、戦争が無くなることはないと思います。
軍事力には大人と子供の差がありますが、これは、戦争なのだと思います。軍事力の差は経済力の差です。なぜ、これほどの差が生まれたのでしょう。
パレスチナ問題の最大の問題は、パレスチナ自治区と呼ばれる地域とパレスチナ人に、経済的な基盤がないことです。国連や他国の支援なしには住民の生活が成り立たないことが、問題なのだと思います。それは、パレスチナ人が国を持っていないからです。
抑圧され、迫害され、多くの同胞を失ったユダヤ人が、自分の国を持てない苦しみを一番理解している筈ですが、ユダヤ人は、今、かつてのナチスと同じことをやっています。しかし、ユダヤ人を責めても、何も解決しません。残念ながら、これが、人間なのです。イスラエルとパレスチナが逆の立場に立っていたら、今、ユダヤ人がやっていることをアラブ人がやっていたのだと思います。私達が同じ立場に立てば同じことをすると思います。
私達日本人には、自覚がありませんが、国は必要なのです。

今回のハマスの攻撃には、イスラエルはビックリしたと思います。
数千発のミサイルとロケット弾がイスラエル領に降り注ぎました。その量に驚くだけではなく、ハマスはドローン攻撃でイスラエルの防御網を破壊したのです。ハマスが、これほど組織的な攻撃をしたのは初めてです。ハマスは、2年前から準備をしたと言っています。
イランの関与がどの程度のものだったのかはわかっていませんが、ハマスがロシアで訓練を受けていたという情報はあります。
米ソ冷戦後に始まった新たな世界潮流は、ウクライナで、イスラエルで、動き始めているように見えます。
ウクライナ戦争では、イランがドローンをロシアに提供し、北朝鮮が砲弾をロシアに提供し、中国もドローンや半導体をロシアに提供していると言われています。中国とロシアとイランと北朝鮮の軍事的な関係は、日々強化されているように見えます。規模は小さいかもしれませんが、ハマス、ヒズボラ、フーシ等々の組織に、資金や武器が流れていたとしても不思議ではありません。国際関係は多極化の時代だと言われていますが、多極化のままで固定することはなく、二極化に向かうのは、よくあることだと思います。
中東でよく起きる紛争だと思っていると判断を間違う可能性があります。今回の紛争が、世界潮流の支流であっても不思議ではありません。
第三次世界大戦へと一歩一歩近づいていると考える必要があるのかもしれません。
もし、そうであるなら、私達も無関係ではありません。
もちろん、すぐに世界大戦になることはないとしても、ベクトルの方向は意識しておかねばならないと思います。
イランは、物価高とヒジャブ問題で国内が安定していませんので、戦争をする余裕はないと言われていて、今回は、中東全体を巻き込んだ第五次中東戦争に発展する可能性は低いと言われています。イラン政府の発言も、腰が引けているように見えます。
でも、中東ですから、何が起きても不思議ではありません。
中東では、政治的合理性や経済的合理性が通用しません。
それは、民族の誇りと宗教という厄介な問題が大きなウェートを占めるのが中東地域の特徴だからです。中東地域では、政治的合理性や経済的合理性は、誇りと信仰の前では、大きな力を持ちません。人間は、感情と理性のコントロールに苦労するものですが、中東での感情の重さは、他の地域とは別物だと思います。
ですから、誰かの感情を刺激する事態が生まれた時には、合理性は役に立ちません。
専門家であっても、中東地域の予測は難しい、と言います。それは、合理性を基準にして予測を組み立てても、意味がないからです。
国と民族と宗教が複雑にからんだ「こじれた関係」という言葉が、中東地域にピッタリの言葉だと思います。
この「こじれた関係」には、2000年の歴史があります。ローマ帝国の時代以来、今日まで、その関係が正常化することはありませんでした。時間は、その複雑さをより濃くしたのではないでしょうか。
最も大きな原因は、時代時代の大国の横暴、大国の「自分さえよければ」だと思いますが、その原因の1つに、陸続きの国家特有の環境があったのだと思います。私達島国に住む人間には、理解できていないのだと思います。欧州、中東、アフリカから遠く離れた東の果てにある小国、それが日本でした。海は、中国歴代の帝国の侵略も困難にしました。文化と歴史と伝統を信奉する方は「日本は神の国である」と自画自賛します。違います。これまでは、たまたま、地理的に有利な場所に国があっただけです。でも、今は違います。海を数分で越えるミサイルが当たり前になったからです。
イスラエルもパレスチナも、他の中東諸国も、アフリカの国々も、地理的に欧州に近かったことで、欧州各国の「欲」の対象にされ、それが不運を招いてしまいました。彼等の感情の底辺には、ローマ帝国に代表される欧州の国々に対する「恨み」があります。中東の人達は、その「恨み」を代々伝えてきましたが、風化する頃には新しい「恨み」が生まれ、「恨み」は何層にも積み上げられ、絶対悪として存在するようになったのだと思います。多分、私達日本人には、想像すらできないのだと思います。
ですから、中東のことは、私にはわかりません。
ただ、何が起きても不思議ではないのだということはわかります。
今回の紛争が、どんな決着を迎えるのか、決着不能になるのか、それもわかりません。
しかし、世界に、何らかの影響が出ることは予測できます。
いろいろな場所で対立が表面化している時代を迎え、今、世界は、激動の時代が始まっていると感じています。
確率は低いかもしれませんが、第五次中東戦争が起き、その延長線上で第三次世界大戦が始まっても不思議ではないと思います。

少し、中東以外の地域の紛争を見てみます。
中国は、インドと、ベトナムと、フィリピンと、台湾と、日本と、小競合いを続けています。アメリカ軍やカナダ軍とも小競合いをしていて、南シナ海や東シナ海で、武力衝突が起きる可能性は、高まっています。
戦争にはなりませんでしたが、尖閣諸島で、意図的な船舶衝突事件がありました。フィリピンでも中国海警による意図的な衝突事件が起きています。アメリカ軍機に対する中国空軍の威嚇行動も増えていると報道されています。小競合いを続けていれば、不測の事態というのは起きるものです。
同じく、朝鮮半島も、不測の事態が起きる環境になっています。
既に、ウクライナでは、本格的な戦争をやっています。
各地の紛争が収斂し、世界を二分して戦うのが、世界大戦ですが、国際関係は、いい意味でも、悪い意味でも、一筋縄では収まりません。予測では、アメリカ連合軍対中国連合軍の戦いになると予測されていますが、私も、そう予測していますが、厄介な問題があります。
それは、アメリカが連合軍に参加するかどうか、わからないことです。
来年、アメリカの大統領選挙が行われます。
もしも、トランプが再登場したら、世界のいろいろな力関係が変化します。
中国は、それまで自重するかもしれません。
トランプが大統領になれば、「アメリカファースト」の仕上げをすると思います。
「海外を支援するのではなく、自国民を支援しろ」というアメリカ国民の声は大きくなっています。日本でも、総理大臣が海外に出向くと、恒例になっているバラマキをし、日本国内から批判が出ていますので、理解できる人も多いと思います。
アメリカは、800万人を海外に派兵しています。派兵先の国は、それなりの負担金を出していますが、それでも、アメリカの収支は赤字だと思います。共和党は、莫大なウクライナ支援もやめろ、と言っています。
同盟国が、アメリカが負担している費用を肩代わりし、更に、海外派兵でアメリカに利益が出るのであれば、トランプは商売として取り組むのでしょうが、アメリカが費用の持ち出しになるのであれば、海外から軍を引くことになります。
日本や韓国は、アメリカ軍が撤退したら、国の存続が難しくなりますので、アメリカの言い値で費用を負担するかもしれませんが、それ以外の国が費用負担に応じるとは思えませんので、トランプは欧州や中東だけではなく世界から兵を引きます。
第二次世界大戦後の世界秩序を最初に壊したのはロシアと中国ですが、アメリカも続きます。いや、中国やロシアは、世界秩序を壊しているのはアメリカだと言います。確かに、それも否定は出来ません。世界を大きく壊すのは、いつも、大国だということです。
トランプは、世界平和は、世界の警察官役は、アメリカの利益にはならないと思っています。
もちろん、トランプの考えている利益は、短期的な利益に過ぎず、中長期的には、大きな損失になることがわかっている人もいますが、皆が皆、分かっているわけではありません。
トランプも、日本の政治家と同じで、選挙至上主義者に見えます。
一票を入れてくれるのはアメリカの国民であって、他国の国民ではありません。拍手が大好きなトランプは、国民に拍手してもらうことが、一票につながり、利益になると思っています。トランプは、票にならないことは、利益にならないことだと思っているでしょう。
世界が激動期に入っていて、世界大戦が避けられないとすると、貧乏くじを引く国が必ず生まれます。イスラエルは、ずっと祖国を持てませんでした。パレスチナは、今も、祖国を持っていないと言っても過言ではありません。激動期では、大国の利益のために国をなくす民族もいるのです。

私達は、祖国があることが当たり前だと思っていますが、私達だって祖国を失う可能性はあるのです。この国が「中国領日本自治区」になる可能性は、決して低くはありません。私達だって、東アジアのパレスチナになる可能性があるのです。
そういう前提に立てば、国力の衰退を「見て見ぬふり」をしているのは、大きな間違いだと思います。
他国に蹂躙されない国になるためには、私達が力を持たねばなりません。力というのは、軍事力だけではありません。それ以上に、経済力が必要なのです。
台湾は独立国としては認められていませんが、香港のように中国に蹂躙されていません。台湾の軍事力は、中国の軍事力と比べるとお粗末なものですが、経済力があるから「中国領台湾自治区」になっていないのです。
国なんて「あって当たり前」と高を括っていると痛い目に遭います。
祖国を失った民族がいることは、現実なのです。
「軍事も経済も、万全の体制を持った国」になるのは不可能なのでしょうが、それでも、その努力はしなければならないと思います。
そう考えると、国力衰退を放置している現状は、大変、危険だと思います。
国が破綻し、国民生活が江戸時代の生活に戻ったとしても、まだ、国が国であれば再起の可能性は残されますが、富を失い、食を失い、国を失えば、再起はできません。今のパレスチナは、経済基盤が乏しい難民キャンプと呼んでもいいと思います。国連の支援がなければ生きていくことも難しいのです。
私達は、パレスチナになってはいけないと言うことです。
ウクライナも中東も、日本から遠く離れた場所での紛争ですが、他人事で片付けていいとは思えません。
近い将来、東アジアも、紛争地域になる蓋然性は低くないのです。
そんな時に、国家破綻などしていたら、私達だって国を失う危険はあるのです。
国を失うと、2000年、いや、永遠に取り戻せない可能性があります。
確かに、確率は低いかもしれません。
でも、国力衰退を阻止する理由の1つにはなると思うのです。
国力衰退をして、いいことなど1つもありません。
ウクライナやパレスチナを語る人は多くいますが、欠けている視点があるように感じます。ウクライナもパレスチナも、私達に直接の影響はありませんが、私達がウクライナやパレスチナになる可能性はあります。そのような分析が必要であり、その対策も必要になる。そんな視点が欲しいです。


2023-11-05



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