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長期金利次第で [評論]



今月は、他人様の記事紹介ばかりになってしまいましたが、決して、手を抜いているわけではありません。この国の将来を危惧する方が増えているという現実があります。そういう記事を紹介して、現状認識をすることは、必要だと思っています。
私のような素人が、「日本は、ヤバイことになりますよ」なんて書いても、ヨタ話にしか聞こえませんが、専門家が書き始めたということは、ヤバイ事態が始まるということです。警鐘を鳴らす専門家は、まだ少数ですが、この数が増えると、ほんとに、ヤバイ現実が目に見えるようになるということです。これで、マスコミが騒ぎ始めると、ヤバイ事態は最盛期を迎えているということになります。私の予測は、いつも、まだ煙も見えていないのに「燃えてるぞ」という予測ばかりです。素人の予測は、データもなく、学問的な背景もなく、そこにあるのは直感だけですから、信用されなくても致し方ありません。ただ、私は、この直感が中々の優れものだと思っています。
今日は、経済学者の池田信夫氏の記事を紹介します。
池田氏は、経済学のプロですから、現状分析と将来予測については、的確な見解を示してくれます。ただ、原因究明や対策立案は苦手なようで、「なんとかなるのだろう」「なるようにしかならない」という結論を使いたがる人のようです。
もちろん、誰からも愛されるような人ではないようで、いろいろな批判もあります。日本人には珍しく、あまり「いい人」ではないのかもしれません。ただ、素人の私から見れば、洞察力はあると思います。


池田 信夫氏の記事。
 世界的にインフレ懸念が強まっている。アメリカの10月の消費者物価上昇率は31年ぶりに6.2%になり、FRB(連邦準備制度理事会)は政策金利の引き上げを検討している。日本でも企業物価上昇率は40年ぶりに8.0%になった。
 今回のインフレの原因は一時的なサプライチェーンの混乱だという見方もあったが、12月になってFRBは「インフレは一時的な現象ではない」と見解を改めた。しかし日本の消費者物価上昇率は、11月の速報値でも0.1%である。何が起こっているのだろうか。
「狂乱物価」の原因は過剰流動性だった
 世界的なインフレの直接の原因は、10月の当コラム「脱炭素化で『新型スタグフレーション』がやってくる」でも指摘したように、ヨーロッパを中心とする脱炭素化の動きで化石燃料への投資が減り、資源価格が上昇したことだ。
 しかし原因は、それだけではない。ハーバード大学のケネス・ロゴフは、今回のインフレが1970年代に似ているという。これは一般には「石油ショック」だと思われているが、原油価格の上昇はきっかけに過ぎない。
 本質的な問題は財政赤字による過剰流動性だった。アメリカ政府はベトナム戦争で大きな赤字を抱え、インフレになっていた。そこに1973年10月のOPEC(石油輸出国機構)の原油輸出禁止で原油価格が一挙に4倍になり、世界のサプライチェーンは大混乱になった。
 当時のケインズ政策では、不況のときは財政赤字を増やして需要不足を補い、インフレになったら金利を上げて需要を抑制するのが常識だったが、英米では失業率とインフレ率が同時に10%を超えるスタグフレーションになったので、財政支出を増やした。中央銀行の独立性がなかったので、不況の最中に金利を上げることはできなかった。
 このため企業が資源の買い占めに走り、労働組合が賃上げを要求し、それがコスト上昇を招いてインフレを加速するインフレ・スパイラルが起こったのだ。
 日本でも物価が1年に20%以上も上がる「狂乱物価」が起こったが、その主犯は日銀だった。1973年5月から10%を超えるインフレになっていた。
日銀が1972年からマネタリーベースを40%以上も増やしたのは、1971年の「ニクソン・ショック」後の円高を抑えるための調整インフレだった。OPECは、充満した過剰流動性に火をつけただけだ。
問題は「インフレ予想」の暴走だ
 このとき重要だったのは、インフレ予想が形成されたことだ。たとえば予想インフレ率が5%だったら、労働組合は3%の賃上げに5%上乗せして8%の賃上げを要求し、それが価格に転嫁されるとインフレが加速する。
 1973年の第1次石油危機では日本も大インフレに見舞われたが、1979年の第2次石油危機では、それほど大きなインフレは起こらなかった。このとき日本銀行が、公定歩合を引き上げたためだ。
 それまでの常識では、不況のとき金利を上げることは考えられなかったが、日銀の前川総裁は公定歩合を9%に上げてインフレを抑え込んだ。当時は日本の財政赤字は少なかったので不況はそれほど深刻にはならず、日本は先進国の中でいち早く経済が回復した。
 アメリカでもFRBのボルカー議長は利上げに踏み切り、イギリスでもサッチャー首相が金利を上げた。これは英米では失業率の上昇をもたらしたが、結果的にはインフレが止まり、それによって不況も収まった。
 この経験から考えると、スタグフレーションを防ぐために政府・日銀がやるべきなのは政策金利を上げる出口戦略だが、これは困難である。
 今の日本でインフレ予想が起こっていないのは、日銀が2%のインフレ目標を掲げても、債券市場が信じていないためだが、本当にインフレが起こると市場が予想すると、
 名目金利=実質金利+予想インフレ率
なので、長期金利が上昇する。予想インフレ率を示すブレークイーブンインフレ率(BEI)は今年後半からゆるやかに上がっており、直近では0.4%である。これは債券市場がインフレを織り込み始めたことを示している。
日本の政府債務は70年代の100倍
 今後のインフレ局面で最大のリスクは、ロゴフも指摘するように、物価上昇ではなく金利上昇である。政府債務は、1970年代とは比較にならないほど大きく積み上がっている。日本の国債残高は1971年には9.5兆円だったが、今はその100倍の1000兆円を超えた。
 その半分を日銀が保有しているので「統合政府でみれば心配ない」とMMT(現代貨幣理論)は言うが、これは誤りである。日銀は政府の一部なので、国債を日銀が買うのは親会社の社債を子会社が買うようなものだから、統合政府の債務は同じである。
 国債という長期債務が日銀当座預金という超短期債務に置き換わっただけで、金利リスクは大きくなった。538兆円にのぼる日銀当座預金の金利(今はマイナス0.1%)が2%上がると、年間10兆円以上の金利負担が発生し、自己資本6兆円の日銀は債務超過になる。
 さらに問題なのは、民間の金融機関が保有している500兆円近い国債である。金利が上がると、既発債に評価損が発生する。もしインフレ目標が実現して、1000兆円の国債の金利が2%上がると、約100兆円の評価損が出る。
 日銀の保有資産は取得原価で評価されているが、民間の金融機関の資産は時価評価なので、自己資本の小さい地方銀行は、債務超過になるリスクが大きい。これによって1998年のような金融危機(取り付け)が起こるおそれがある。
 しかし日本では今のところ、消費者物価上昇率は0.1%である。これは20年以上にわたってデフレ基調が続いたため、企業がコストを小売り価格に転嫁しないで賃金を抑制してきたことが原因だろうが、それも限界に近づいている。来年(2022年)の初めにはインフレが始まり、金利も上がるおそれが強い。
 今回は資源価格も脱炭素化が進められる限り、上がり続けるので、インフレ予想が形成されやすい。長期金利は日銀がイールドカーブ・コントロールで抑制できるが、そうすると70年代のようにインフレが暴走する。金利を上げると、金融危機が起こる。
 このジレンマは70年代にはなかったので誰も予想していないが、市場がインフレ予想を信じると、長期金利が2%になることは十分ありうる。そのとき積み上がった1000兆円の国債は、日本経済を破壊する時限爆弾になるのだ。


アメリカのFRBが、3月までに現在の緩和政策を終了し、年内に、3回の利上げを予定していると報じられています。アメリカが動けば、世界は、利上げ方向へ一気に動き出します。利上げに動いている国は、既に、数十カ国あります。
世界潮流が利上げへと動き出せば、日本は窮地に立たされます。
「前門の虎と後門の狼」という言葉があります。前門の虎が金利上昇による金利負担の上昇だとすると、後門の狼は円安よる物価高騰です。どちらも、日本経済を壊します。日本は、前にも後ろにも行けないのです。
日本の国債残高について、MMT論者ではない多くの経済学者が、これまでは「今のところ、問題ない」と答えてきました。誰も「問題ない」とは言っていません。「今のところ」という枕詞が曲者なのです。FRBの発表は、この「今のところ」という枕詞が崩壊する可能性が高くなったことを意味します。
日本国内では、FRBの発表を大事件だと捉えていません。しかし、池田氏は「おい、事件だぞ」と言っています。この点でも優れた洞察力だと思います。
皆さんは、この記事を読んで、どう思いましたか。
MMT理論では「インフレにならないこと」が大前提になっていますので、既に、アメリカではMMT理論は成り立たなくなっています。
MMT理論の壮大な実験場になっている日本が、インフレになれば、池田氏が心配しているように「日本経済を破壊する時限爆弾」が爆発します。
MMT理論では、インフレになれば、貨幣供給の蛇口を絞め、市中から貨幣を回収し、金利を上げなければならないと言っています。アメリカは、それをやろうとしています。
でも、日本は、日銀保有の国債だけでも500兆円もの貨幣供給をやっています。こんな大金、とても、回収はできません。無理に回収すれば、経済が壊れます。
では、金利を上げられるのか、と言えば、金利を上げれば自分の首を絞めてしまいます。
インフレに襲われても、日本には、インフレを抑制する手段がないのです。
ところが、その日本に、インフレの臭いがし始めています。
企業物価と消費者物価の乖離がそのことを示唆しています。
多くの企業が、コストの上昇に苦慮しています。A社だけが値上げをするのは危険です。B社とC社と協議し、カルテルに見えない工夫をしながら、値上げをしなければ、業界の衰退を招くのは止められません。競合会社は、水面下での調整を加速させていると思います。
経済成長をしている国であれば、個人所得が増えますので、インフレとの競争が可能ですが、そうではない日本の国民生活は、一方的にインフレに苦しめられることになります。そういう時代は、既に、目の前にあるのかもしれません。いや、今年がその1年目なのかもしれません。去年から、値上げのニュースは度々報じられています。
もしも、世界潮流がインフレになれば、日本だけが別世界を享受できるわけではありません。それは、原油価格の上昇が日本にも影響を与えたことを見れば歴然としています。
しかし、日本は、インフレになっても、指を咥えて見ている事しか出来ません。
しかも、インフレは、事実上の青天井です。
インフレで何が始まるのか。
長期金利が上昇します。
池田氏も指摘していますが、民間に500兆円もの国債が存在しているのです。
金利が上がるということは、評価損が発生するということです。民間企業は、その評価損を黙って受け入れるようなことはしません。いや、社内規制があって、出来ません。国際規制に合わせるために国内規制があり、国内規制に合わせるために社内規制があります。国際規制を変えない限り社内規制は変えられません。企業は評価損を受け入れられないようになっています。
「1998年のような金融危機(取り付け)が起こるおそれがある」と書いていますが、その前に、民間企業は、国債を手放します。でも、買い手はいません。民間企業は、売り抜けるためにプレミアム金利をつけて、売ることになります。これは、市中から長期金利の上昇が始まるということです。もちろん、クズのような債権でも買ってくれるファンドは海外にはあります。誰が最後にババを引くかというゲームが始まります。このゲームは、日銀も国も止める手立てを持っていません。長期金利は、民間主導で、勝手に上昇するのです。
「国債の金利が2%上がると、約100兆円の評価損が出る」と書かれていますが、金利上昇は2%で収まるという保障はありません。ギリシャが経済危機になった時には、20%以上の金利上昇が起きました。
更に、長期金利は、国債にだけ適用されているわけではありません。地方自治体の地方債にも、民間の社債にも、個人の借金にも影響します。
何が起きるのか、容易に想像できると思います。
そうです。日本経済の、日本の金融システムの崩壊です。
海底火山が噴火して、突如、島ができるように、不良債権の山が、突如として隆起するのです。その身近な例を見てみましょう。
仮に、3000万円の住宅ローンを組んで家を買った人がいたとしましょう。
そして、金利は、0.5%だとしましょう。
長期金利が、10%とか20%になったら、年間で、300万円とか、600万円の利息を支払わなければなりません。ローンの返済が、月額25万円から50万円も増えるのです。多分、この利息を支払える人はいないと思います。住宅ローンを持っている人のほぼ100%に近い人が、破産手続きをしなければなりません。
では、その資金は誰が融資しているのでしょう。
住宅ローンは、金融機関の大きな柱になっています。金融機関は、今ある住宅ローン融資残高分に相当する不良債権を、突如、抱えることになります。
この不良債権に耐えられる金融機関が、何社あるのでしょう。
もちろん、国には財源がありませんから、金融機関に国費を投入することはできません。
金融機関の選択肢は、倒産しかありません。
金融機関が倒産するということは、金融システムが機能しなくなるということであり、経済全体が麻痺することになり、次々と企業が倒産します。路頭に迷う人達が大量に生まれます。大恐慌の出現です。
では、住宅ローンで破産した国民は、家を失った人達は、どこに住むのでしょう。
当然、需給バランスが壊れ、賃貸のアパートやマンションの賃料は急騰します。
車の中で、一家が生活するのですか。
しかも、職を失う人が大量に出るのです。
生活保護を申請しても、国にカネはありません。
このシミュレーションが正しいのかどうかはわかりません。
いや、もっと悲惨な状況になるのではないかと思います。
以前にも書きましたが、長期金利次第で、この国は簡単に破綻するのです。
私が言っている、世界一の貧困国が実現することになるのかもしれません。
インフレ、円の暴落、長期金利の上昇、国力衰退、中国の巨大化とアメリカの衰退。
この国は、四面楚歌の状況にあります。
一番、蓋然性が高いのは、国家破綻だと思います。振り返って見れば、日本は、これまでも、今も、破綻に向けて邁進してきたのです。突然、偶然、破綻するのではありません。日本の破綻は必然なのです。


2022-01-04



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