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記事紹介 26 [記事紹介]



2/24付 ダイヤモンドオンラインの記事を紹介します。
筆者は 岸 博幸氏
表題は アベノミクスの評価を一気に下げかねない産業競争力会議の事務局官僚の暴走



アベノミクスの3本目の矢である成長戦略を検討する産業競争力会議の第2回会合が2月18日(月)に開催されました。そこで明らかになったのは、会議の事務局の官僚の暴走がひどいということです。

成長戦略の2つの路線

政府が産業の競争力を強化するためには、どのような政策を講じるべきでしょうか。この点について、例えば産業競争力会議の民間議員の1人である竹中平蔵先生は第1回会合に提出した資料で、①政府が民間に自由を与える、②政府が民間にカネを与える、という2つのアプローチがあると述べています。
単純化して言えば、①は構造改革路線、②は国家資本主義路線とも言えます。もちろん、現実的には政策がそのどちらかのみになるということはあり得ず、①と②のどちらが政策のメインとなるかが重要なのですが、だからこそ、産業競争力会議では両方の路線についてしっかりと議論して、正しい成長戦略を導きだす必要があります。
ところが、第2回会合ではそうした当たり前のことが行われず、むしろ事務局の官僚が②の路線だけを成長戦略に盛り込みたいのであろうことが明らかになりました。この原稿を書いている2月21日(木)の段階ではまだ会議の議事録が公開されていないのですが、公開されている情報からそれを検証してみましょう。

「研究開発予算を増やしたい」だけ? 偏った安倍総理の取りまとめ

まず、第2回会合の議題の1つであったイノベーションです。このテーマについて、民間議員の側からは2種類のペーパーが提出されました。1つは主に政府の研究開発予算を増やすことを求めていますが、これに対してもう1つは政府の予算増額よりも民間の研究開発を促進し、またビジネスモデルなど技術以外のイノベーションを重視すべきと提言しています。
即ち、民間議員の側からは①と②の両方が提示されたのです。しかし、それを受けた安倍総理の取りまとめは、「世界最高水準のイノベーション環境の実現に向けて、総合科学技術会議の司令塔機能を抜本的に強化したいと思います。……省庁縦割り打破を図るため、権限、予算両面においてこれまでにない強力な推進力を発揮できるようにしたいと考えます。」と、明らかに②の立場のみを反映したものになっていました。
それでは、なぜそういう結果になったのでしょうか。
当日、安倍総理は会議に最後の30分だけ出席したので、イノベーションに関して民間議員の間でどういう議論が行われたかは知らなかったと考えられます。そのため、事務局の官僚が用意した総理の取りまとめ発言をそのまま棒読みせざるを得なかったのではないでしょうか。
そして、事務局の官僚は②の政策(政府の研究開発予算を増やしたい)だけに関心があり、かつ事務局の背後にいる経産省は、文科省と内閣府が牛耳って研究開発予算の大宗をコントロールする総合科学技術会議の運営に関与したいという、②の延長であると同時により矮小な霞ヶ関内部のことに執着しているため、総理の取りまとめ発言の内容を意図的に②の方向ばかりにしたと考えざるを得ません。
同じことは、第2回会合のもう1つの議題であった農業でも起きています。農業を産業として強化するための政策についても、民間議員からは2種類のペーパーが提出され、片方は②の路線(公的資金を使った官民ファンドによる六次産業化の支援)を、もう片方は①の路線(規制改革による強化)を強調していました。ちなみに、農水大臣が提出したペーパーも明確に②の路線になっています(規制改革についてはどうでもいい小ダマについてだけ言及)。
つまり、農業についても①と②の両方の意見が出されたのです。それなのに、安倍総理の取りまとめ発言は、「農業の構造改革の加速化、農産品・食料の輸出拡大でありますが、……日本の農業は弱いのではないかという思い込みを変えて行くということが重要ではないかと思います。……農業と流通業、そしてIT、金融業など多様な業種との協力、事業提携が加速していくようにしたいと思います」となっています。
この取りまとめを見ると、例えば“農業の構造改革”という用語は農水大臣ペーパーの表現そのままであり、“農業の規制改革”とは意味が完全に異なります。要は、イノベーションほどではないですが、総理の取りまとめはやはり②に偏っているのです。その原因はイノベーションの場合と同じです。

守旧派の事務局の暴走でアベノミクスの効果も減退か

ついでに言えば、産業競争力会議の事務局の官僚は、当初は会合に提出される民間議員ペーパーを1つだけにして②の観点のみを強調したかったようにも見受けられます。そう考えると、事務局の官僚が用意していた総理取りまとめが②の観点ばかりになっていたのは、ある意味で確信犯だったとも言えます。
さらに言えば、第2回会合では電力システム改革も議論されたのですが、そこで事務局と経産省は、経産大臣のペーパーで原発の早期再稼働の必要性をさりげなく主張し、わずか十数分の議論だけで産業競争力会議全体として原発再稼働に賛成という結果にしようとしていたようにも見受けられます。
こうした様々な事実を考えると、産業競争力の事務局とその背後にいる経産省は改革路線とはほど遠い守旧派路線で暴走しようとしているとしか思えません。しかし、それがベースとなって成長戦略が作られたら、民主党政権時代に毎年作られた“官僚による官僚のための成長戦略”と同じような内容となり、アベノミクスの政策効果のみならず、アベノミクスに対する現状での金融市場や海外の高い評価を一気に下げかねないのではないでしょうか。
日銀の新総裁が決まった後は、成長戦略の中身がどうなるかが安倍政権の経済政策の正念場になりそうです。




余談です。
前回、安倍政権の成長戦略について書きました。乱暴な計算ですが、800兆円の成長戦略が必要になるという試算もしました。仮に、アベノミクスが成功するとしたら、その成否は成長戦略にかかっています。一気に800兆円が無理だとしても、1年後に200兆円、2年後に400兆円、3年後に800兆円の経済成長が必要になります。しかし、政府の成長目標は2.5%だと決まったようです。10兆円です。それも、大部分が物価の上昇によるもののようです。つまり、最初からやる気はないのです。
政府にやる気がないのですから、会議を開いても成長戦略が生まれる筈はありません。そこは、官僚利権の漁場になっているのです。
成長戦略神話は、今や言葉遊びにすぎません。
現実的には、成長戦略がないという前提に立つことです。神話に頼っている限り、現状を打破する方法は見つからないのです。
それでも、官僚は官僚組織のために神話を利用します。
さあ、ここからは、官僚の腕の見せ所です。いつものように、作文と、数字の組み合わせによる利権獲得に真剣に取り組んでいる彼等の姿が、ここ奈良からでも見えそうです。
どっちみち、結果は数年後にしか出てきませんから、何の問題もありませんし、そのことで責任を取らされた官僚はいません。この数年間で、いくら、官僚達の懐に入ってくるかが問題なのです。こういう書き方をすると、まるで国家予算がそのまま官僚個人の収入になるように誤解されるかもしれませんが、日本の官僚はそんな幼稚なことはしません。彼等は、官僚組織全体の利権のパイを大きくすることが、自分の利益になることを知っています。もちろん、部分的には直接懐に入るものもありますが、それは国家予算の規模から言えば少ないものです。官僚組織の構成員が、生涯に受け取れる金額が増えればいいのです。外郭団体が大切なのはそのためです。民間の天下り先も大切です。回り回って、最終的に官僚の懐に入りさえすればいいのです。その為には、現状維持は最低条件であり、少しでもそのパイを大きくしておくことが官僚の仕事なのです。その構造が維持できなければ、先輩達だけがいい目をするだけですから、後輩達が頑張ることができません。先輩のため、自分のため、後輩のために全員が頑張れる組織、それが官僚組織なのです。ですから、本来の目的よりも、国の利益よりも、国民の利益よりも、省益の方が優先するのです。日本の最高頭脳と言われる人達が、その仕事に邁進しているのですから、日本最強の組織になったのです。官僚は現状維持と利権の拡大のために、国民には見えない場所で日夜努力を続けています。官僚のその頑張りのおかげで、この国は滅びようとしています。国民が貧しくなっているのも、官僚達の「自分さえよければ」という努力によるものです。それは、官僚による官僚のための制度を維持するために、彼等は日夜努力を重ねているからです。仮に、私が官僚の一員であったら、彼等の努力を誇りに感じると思います。
どこに官僚利権が隠されているのか、その全容解明はできません。捜査権を持っている公権力従事者は、全員、公務員ですから身内の捜査はしません。国民は、手も足も出せません。官僚を罷免する権限も国民にはありません。
官僚独裁の最大の弊害は、世論操作です。彼等は、自分達の利権を守るためなら何でもやります。国の衰退よりも、官僚利権が優先します。
今年の6月頃に、具体的な成長戦略への道筋が発表されることになっていますが、多分、その時には「よいしょ」をする人達が大勢いるものと思います。官僚達は、その根回しも始めているでしょう。全体像を議論すれば、成長戦略の貧弱さが目立ちますので、視野狭窄を誘導するような論調も増えると思います。世論統制に関しては、実績がありますし、彼等は絶大な自信を持っているものと思います。
この国の全体像を俯瞰してみると、やはり、日本国民はマゾヒストであることが明白だと思われます。権力者に騙され、痛めつけられ、それでも、権力者を求めている私達は、正真正銘のマゾヒストだと思います。私は、自分がド・エムだと思っていますが、日本国民の皆さんには敵いません。脱帽です。


2013-03-02



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